[東京 7日 ロイター] – 東芝は7日、昨年11月に示した会社の3分割案を2分割に変更すると発表した。大株主の一部が反対する中、3カ月で計画を修正した。半導体を含むデバイス事業は従来通り分離して上場を目指すが、インフラ事業を本体に残すことで、3分割より法令順守などへの取り組みを強化しやすい体制が作れるなどとしている。株主還元を従来計画の3倍に増やす方針も明らかにした。 

発表を受けて東芝株は急反発。今後は、分割計画に異を唱えていた一部株主の反応が焦点となる。

<「改良であり改善」>

会見した綱川智社長は、3分割案の発表後に「数々の、本当に多くの株主と話した」ことを明らかにした。デバイス事業の分割上場までの期間が長いこと、持分法対象の半導体大手キオクシアホールディングスの株式を売却した後の東芝本体の役割が明確ではないこと、3社の企業統治を同時に強化することが難しいことなどに対して、多くの指摘を受けたという。

綱川社長は「なるほどと思うところを取り入れた。色々な株主から色々な意見があった。色々な利害関係者が納得できる姿に改良できた」と自賛し、発表からわずか3カ月で内容を大きく変更したのは「改良であり改善」だと主張した。

ただ、分割に反対している第2位株主であるシンガポールの資産運用会社3Dインベストメント・パートナーズが、先月提出した要求には未回答のまま。「きょう以降、多くの投資家と話をしたい。(3Dの提案には)見解が決まり次第、来週にも知らせる」とした。3Dは、会社分割の実現に株主の3分の2の承認が実質必要になる定款変更を求めている。

格付投資情報センター(R&I)は東芝の発表後、「短期間で再編案の修正を余儀なくされ、新しい案についても株主の承認を得られるか不透明」とのコメントを出した。

<株主還元2年で3000億円>

東芝は、今後2年間で最大3000億円の株主還元を行う方針も発表した。従来は1000億円程度としていたが、空調やエレベーターなど複数の事業を「非注力事業」として売却する方針を決めたことで、売却益を追加計上していく。

空調子会社の東芝キヤリアは株式の55%を、共同出資する米キヤリア社へ1000億円で譲渡する。残り5%は引き続き保有し、インフラ関連の列車空調事業を継続する。照明事業は年内に、エレベーター事業は速やかに、売却手続きに入る。同社は子会社に照明の東芝ライテック、東芝エレベーターなどを抱えている。

議決権の40%を保有するキオクシアに対しても、可能な限り早期の上場を書面で正式に要請した。現金化した資金は株主還元に当てる。

<中核事業に1.5兆円を投資>

中核事業には積極的に投資する。25年度までの設備投資と研究開発費の合計は、分割するデバイス事業が6000億円、本体とインフラ事業が9140億円。過去5年間の両部門への投資額を4000億円超上回る。

両事業は「一般論としてM&Aを含めて成長を目指す」(畠澤守副社長)。25年度の営業利益計画をデバイス事業で800億円、本体とインフラ事業で同1200億円としている。

デバイス事業は、政府の産業競争力強化法を活用する。税の軽減措置や融資の優遇などが期待できることに加えて「政府が(認定を)出すということで、信用性も高まるので取りたい」(綱川社長)という。同法が適用されれば、株主総会を経なくても取締役の決議で事業の分離が可能となるが、「それでは株主の意向を反映しない」(同)として、分割決議は株主総会に諮るとしている。

<非上場化、外資ファンドの傘下入りに課題>

東芝を巡っては、昨年11月に分割計画を発表して以降も一部株主が非上場化や外部からの出資受け入れを検討するよう求めている。綱川社長はこの日の会見で、具体的で実現可能な提案があれば、検討することはやぶさかでないとする従来の主張を繰り返した。

さらに綱川社長は、非上場化することの懸念にも言及。外資系ファンドの傘下に入ると原子力や防衛、自治体の関連事業の受注が減少する恐れがあること、外為法など経済安全保障の規制に対応が必要となること、人材が流出したり採用に悪影響が出る可能性を課題に挙げた。