【独自】菅グループ結成へ加速 麻生派幹部ら派閥退会で勢力図に変化

自民党の佐藤勉前総務会長が、所属する党内の第2派閥、麻生派(志公会・53人)から近く退会する方向で最終調整していることがわかった。佐藤氏は8日、国会内で菅前首相と会談し、退会について報告したものとみられる。佐藤氏に近い複数の所属議員も、ともに退会する可能性も出ている。

佐藤氏らが退会すると麻生派は党内第3派閥に転落、岸田首相を支える自民党の勢力図に変化が起きる可能性がある。

岸田首相のコロナ対策に党内から批判の声

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佐藤氏は前政権で総務会長を務めた菅氏の最側近。昨年、総裁選に出馬表明した岸田首相が党役員の任期を「1期1年連続3期まで」などとする党改革案を打ち出した際には、「いかがなものか」と牽制し、菅氏を支えた。岸田首相を支える麻生派では会長代理を務めるが、退会し袂を分かつこととなる。

目下、党内では、岸田政権の新型コロナ対策の対応の遅れが指摘される中、感染者を激減させた菅氏の手腕や力を再評価する動きが出始めている。

7日、岸田首相がワクチンの三回目接種について、「一日100万回」の目標を表明した際は、党内から「判断が遅すぎる」「菅前首相は去年、実現済みだ」(自民党閣僚経験者)との声が上がった。さらに8日には、新型コロナ対策を通じて菅氏との信頼関係を深める小池都知事が、現政権の対応について「オミクロン株の感染のスピードが速いだけに、スピード感の違いが非常にストレスフル」と批判。小池氏は翌9日、官邸を訪れ、岸田首相に政府の方針を明確化するよう直談判した。

会談に臨む岸田首相と小池知事(9日)

また菅氏のお膝元、神奈川県では、県内選出の国会議員が、菅氏と近い小泉前環境相を県連会長に擁立する方針を決めるなど、動きを活発化させている。

菅グループ結成へ動きが加速

菅氏をめぐるこれらの動きに先立ち、佐藤氏は、菅政権を支えた森山総務会長代行、二階派幹部の林前幹事長代理の他、石破元幹事長に近い議員らと会談を重ね、意見交換してきた。菅氏は、これまで脱炭素社会の実現などに向けて、「縦割り打破」を旗印に勢力を結集する考えを示していて、佐藤氏は今後、菅氏を中心とするグループの結成に向けて、動きを加速化させるものとみられる。グループが結成されれば菅氏の党内での存在感が高まることとなりそうだ。

「菅グループ」結成へ動きが加速している

佐藤氏らが退会すれば、岸田首相を支える党内の勢力の構図が変化する。これまで、茂木派(平成研究会・53人)と並んで第2派閥だった麻生派が第3派閥に転落。幹事長・派閥領袖への就任を機に急進する茂木派は単独で第2派閥となる。茂木派、麻生派は、谷垣グループ(有隣会)とともに政権の安定に寄与している。

菅氏と安倍元首相の接近は 変わる勢力図

この蜜月関係とは対照的に、最大派閥の安倍派(清和政策研究会・94人)の孤立化がささやかれている。佐渡金山の世界文化遺産推薦をめぐっては、推薦見送りの方向で調整を進めていた政権に対し、安倍元首相が「間違っている」と指摘し、岸田首相が判断に影響を与え、一転させた。安倍氏が影響力維持を狙う中、菅グループ結成の動きが進めば、安倍氏が菅氏にさらに接近し、岸田首相に対抗する可能性もある。夏の参院選に向けて、自民党内の力関係の変化に注目が集まる。