(ANAの訂正により、第5段落の最大航行距離を約240キロメートルに修正して再送します)
[東京 15日 ロイター] – ANAホールディングスは15日、「空飛ぶ車」と呼ばれる電動式の垂直離着陸機を開発する米新興企業ジョビー・アビエーションと業務提携すると発表した。両社は日本における「空飛ぶタクシー」の運航事業展開に向けて検討する。ジョビーにはトヨタ自動車が出資しており、トヨタは乗降場所までの地上送迎サービスを担う。
ANAは空飛ぶタクシーの運航事業への参入を表明済みで、2025年の国際博覧会(大阪・関西万博)でのサービス実現を目指す方針も示している。ジョビーとの提携により事業化に向けた取り組みを前進させる。ジョビーは24年に米国で空飛ぶ車の運航事業を展開する計画で、海外展開を図るため日本でのパートナーを探していた。
両社は今後、国内大都市圏を中心とした旅客輸送サービスの実現に向け、運航システムの開発やパイロットの訓練、航空管制や離着陸ポートといった地上インフラ整備などを共同で進める。
「空飛ぶ車」は垂直に離着陸し、ヘリコプターやドローン、小型飛行機の要素を併せ持つ電動の機体(eVTOL=イーブイトール)。運用・メンテナンスのコストを抑えつつ、安全性・環境性・静粛性などに優れ、道路渋滞や過疎地の輸送など、さまざまな交通課題を解決できる新たな移動サービスとして注目されている。
ジョビーが開発しているのは、最高速度が時速約320キロ、最大航行距離が約240キロメートル(訂正)の5人乗りの空飛ぶ車。この機体を使えば、現在は自動車で1時間ほどかかっている大阪駅(大阪市)から関西国際空港(大阪府泉佐野市)までの所要時間を15分以内に短縮できるという。
ジョビーは2009年に設立し、米カリフォルニア州に本社を構える。トヨタは18年に傘下のベンチャーキャピタルを通じてジョビーに資本参加し、20年には3億9400万ドル(発表当時の円換算は約430億円)を出資した。「トヨタ生産方式」のノウハウを提供し、設計・素材・電動化の技術開発に関わり、品質とコストを両立させる機体の量産化を推し進めている。
空飛ぶ車を巡っては、米ボーイング系企業が参入の意向を示しているほか、欧州エアバスや中国などの新興企業も開発に力を入れており、新たな空の移動手段を巡る競争が激しくなりつつある。ホンダも2030年代の実用化を視野に機体開発を進めている。