[ワシントン 16日 ロイター] – ウクライナのゼレンスキー大統領は16日、米議会に対しオンライン演説し、死と破壊をもたらし避難民の流出につながっているロシアの侵攻と空爆に対抗するため、一段の軍事支援や武器供給を要請した。
ゼレンスキー大統領は「ロシアはウクライナの空を死の源に変えた」とし、「われわれはウクライナの上空を守る必要がある」と強調。その上で、ウクライナ上空に飛行禁止区域を設定し、戦闘機や防空システムを供給するよう改めて求めた。
「人々を救うためにウクライナ上空に飛行禁止区域を作ること、これが果たして無理な要求だろうか?やりすぎだろうか?」と問いただし、「私はあきらめてはいない」と強調した。
北大西洋条約機構(NATO)と同様、バイデン氏や米議会の多くの議員らは、核武装したロシアとの紛争をエスカレートさせるという懸念から飛行禁止区域の設定に反対。また、ロシア製戦闘機「ミグ29」をウクライナに移送する案についても、議会で一定の支持は得られているものの、政府は難色を示している。
ゼレンスキー氏は米国の歴史を引き合いに出し、1941年の日本軍による真珠湾攻撃や2001年の武装組織アルカイダによる米国への攻撃に言及。また、公民権運動の指導者キング牧師が1963年にワシントンで行った演説「私には夢がある」を想起するよう議員らに求めた。
「私には夢がある。この言葉は今日、皆さん一人ひとりが知っている。私はこう言いたい。私には必要なものがある。私には空を守る必要がある」と語った。
また、ウクライナ侵攻を支援する全てのロシア政府当局者を標的とした制裁の発動など、さらなる行動を取るよう米議会に促したほか、米企業に対してはロシアから撤退するよう要請した。
ゼレンスキー氏は、ウクライナが米国の圧倒的な支援と、バイデン氏の「個人的な関与、ウクライナと世界中の民主主義の防衛への誠実なコミットメント」に感謝しているとし、「我が国にとって、そして欧州全体にとって最も暗い時期であるからこそ、私はあなた方にもっと多くのことをしてほしいのだ」と訴えた。
最後にバイデン大統領に対し、英語で「私はあなたが世界のリーダーになることを望む。世界のリーダーであることは平和のリーダーでもある」と呼び掛け、演説を締めくくった。
ペロシ下院議長は「ウクライナに栄光あれ」という言葉をウクライナ語で述べ、ゼレンスキー氏を紹介。ゼレンスキー氏は演説の前後にスタンディングオベーションを受けた。演説の最後にはビデオ映像越しに手を振り、胸に手を当てて感謝の意を表した。
バイデン大統領は15日、136億ドル規模のウクライナ緊急支援を含む歳出法案に署名。ホワイトハウス当局者によると、16日にはウクライナに対する8億ドルの追加安全保障支援を発表する見通し。