[ブチャ(ウクライナ) 4日 ロイター] – ロシア軍がウクライナ北部を占領していた間に多数の民間人を虐殺した疑いが浮上したことで、4日はロシアの「戦争犯罪」を非難する声が高まった。こうした中、ロシア軍はウクライナ北部から軍を撤退させ、他の地域に再配置するとみられている。
<和平交渉、一段と困難>
ウクライナの検察当局は前日、首都キーウ(キエフ)近郊のブチャを含む複数の地域で計410人の遺体を発見したと表明。ブチャの市長は、ロシア軍の支配下で住民300人が殺害されたと明らかにした。
キーウの北西約40キロにある町のタラス・シャプラフスキー副市長は、ロシア軍の撤退後、法的手続きを経ない処刑の犠牲者約50人の遺体が発見されたと明らかにした。ロイターの記者は、両手を後ろに縛られ頭部に銃で撃たれた跡がある男性が道端に倒れているのを目撃。教会のそばに掘られた集団墓地では、犠牲者の手や足が赤土の間から突き出ていた。
ウクライナのゼレンスキー大統領はこの日、護衛官と共にブチャを訪れ、ロシア軍の残虐行為が明らかになったことでロシアとの和平交渉が一段と困難になったと指摘。国営テレビに対し「これは戦争犯罪であり、世界でジェノサイド(集団殺害)として認識されるだろう」とし、「ロシア軍がここで行ったことを見ると、対話を行うのは極めて難しい。ロシアが対話プロセスを引き延ばせば引き延ばすほど、ロシア、およびこの戦争の状況は悪化する」と述べた。
ウクライナのクレバ外相は英国のトラス外相との共同記者会見で、ロシア軍がブチャで行った民間人殺害は「氷山の一角」にすぎないとし、ロシアに対する一段と厳しい制裁措置が必要との考えを表明。「制裁措置に疑問があるなら、まずブチャに行き、惨状を目にしてほしい」と述べた。
米国務省のプライス報道官は、ウクライナの要請を受けて残虐行為の証拠収集と分析のためにウクライナに派遣される国際検察官の多国籍チームを支援すると明らかにした。
<プーチン氏は「戦犯」>
米国のバイデン大統領はロシアのプーチン大統領を「戦争犯罪者」と呼び、戦犯裁判を求めると言明。ホワイトハウスで記者団に対し「ブチャで何が行われたか、誰もが知るところとなった。(プーチン大統領が)戦犯に当たることを示している」と述べた。
トラス英外相も、ロシア軍によるウクライナでの戦争犯罪は「極めて明白」との認識を表明。「ブチャにおける映像に誰もががくぜんとしている。戦争犯罪が起きたことは非常に明白」とした上で、「ジェノサイド(集団殺害)に関する問題については、裁判所の決定に委ねられている」と述べた。
<ロシア軍再配置>
米国防総省当局者はロシア軍がこれまでにキーウ周辺から約3分の2の軍部隊を再配置したと明らかにした。
当局者は、再配置された兵士のは多くはベラルーシで統合されているほか、確認はされていないものの、ウクライナ東部に再派遣される公算が大きいと指摘。「再装備と人員補給が行われ、ウクライナの別の場所での戦闘に配備される可能性がある」と述べた。
ウクライナ北部の複数の当局者はこの日、ロシア軍がほぼ撤退、もしくは大幅に配備を縮小したと報告。キーウ西方のジトーミル州のブネチコ知事は、ロシア軍が完全に撤退したと明らかにしたほか、キーウ北東のチェルニヒウ州の当局者は、一部のロシア軍はなお残留しているものの、州都チェルニヒウ市周辺からは撤退したと明らかにした。