ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交などウクライナ情勢をめぐる8日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

駅への攻撃 国際社会から非難の声

8日、ウクライナの首都キーウを訪問する予定のEU=ヨーロッパ連合のフォンデアライエン委員長はツイッターに「市民の避難に使われる駅への攻撃は卑劣な行為だ。市民の命が奪われたことにがく然としている」と投稿し、攻撃を非難しました。そのうえで「私たちの思いは亡くなった人たちの家族とともにある」として哀悼の意を表しました。

また、イギリスのトラス外相も8日、ツイッターに「市民を狙った攻撃は戦争犯罪だ。われわれはロシアとプーチン大統領の責任を問う」と投稿し、ロシアを非難しました。

ロシア中銀 政策金利を20%から17%へ引き下げ

ロシア中央銀行は軍事侵攻のあとのことし2月末、通貨ルーブルの急落に対応するため政策金利を9.5%からほぼ2倍にあたる20%へと大幅に引き上げていました。

今回の利下げの背景については、「ロシア経済の外部環境は依然として厳しく、経済活動にかなりの制約があるものの、資本の流出規制措置が効果を発揮している」などと説明しています。

軍事侵攻後、欧米の経済制裁の強化を受けて一時、急落したルーブルは、最近は値を戻していて、通貨防衛の必要性が弱まったとの判断もあったとみられます。ロシア中央銀行は、今後の会合で、金利をさらに引き下げる可能性があるとしています。

岸田首相 ロシアへの追加制裁措置を明らかに

岸田総理大臣は8日夜記者会見し、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアに対する追加の制裁措置を発表しました。

G7=主要7か国が発表した首脳声明を踏まえ、日本として5つの柱からなる追加制裁を科す方針を表明しました。
具体的には以下のとおりです。

◇ロシアからの石炭の輸入を禁止する
◇機械類や一部の木材、ウォッカなどの輸入禁止措置を来週から導入する
◇ロシアへの新規投資の禁止
◇ロシア最大の金融機関「ズベルバンク」や国内4位で民間最大の金融機関である「アルファバンク」の資産凍結
◇プーチン大統領らに行っている資産凍結の対象に、ロシア軍関係者や議員など400人近くと、国有企業を含むおよそ20の軍事関連団体を新たに加える。

ゼレンスキー大統領「避難を待つ多くの市民 知りながら攻撃」

ウクライナ東部ドネツク州のクラマトルスクの駅が攻撃され、30人以上が死亡したことについてウクライナのゼレンスキー大統領はSNSで、ロシア側の攻撃だとしたうえで「数千人ものウクライナの人たちが避難できるのを待っていた駅が攻撃された。侵略者たちは戦場でウクライナ軍に対抗する勇気がなく、市民を攻撃している。際限のないこの悪を罰しないかぎり、彼らの行為は止まらない」と強く非難しました。

また、ウクライナのクレバ外相もSNSで「ロシア側は、クラマトルスクの駅に避難を待つ多くの市民がいたことを知りながら攻撃を行って人々を殺害した。これは意図的な虐殺であり、私たちはこれらの戦争犯罪人の責任を追及する」と非難しました。

ロシア軍 東部の駅を攻撃か

ウクライナ国営の鉄道会社は8日、SNSの「テレグラム」などに、東部ドネツク州のクラマトルスクにある駅がロシア軍によるロケット弾の攻撃を受け、30人以上が死亡し、100人以上がけがをしたと投稿しました。

ウクライナの国防省が、攻撃を受けたあとの駅周辺だとして公開した映像には、何人もの人が血を流して倒れている様子がとらえられています。倒れている人たちのそばには大型の旅行かばんなどが置かれています。

これについて、ロシア国防省や大統領府は、「ロシア軍は攻撃していない」と関与を否定しています。

ロシア軍 東部や南部の拠点をミサイル攻撃 欧米が兵器支援へ

ロシア軍はウクライナの東部や南部の拠点をミサイルで攻撃するなど攻勢を強めています。欧米側は今後、大規模な戦闘が行われる可能性があると警戒していて、ウクライナ軍へのさらなる軍事支援に向け調整を進めています。

アメリカ軍の制服組トップのミリー統合参謀本部議長は7日、議会上院の公聴会で、「ロシア軍は南東部に戦力を集めており、大規模な戦闘はこれからだ」と述べたうえで、戦闘が長期化する可能性があるという見方を示しました。

NATO=北大西洋条約機構も7日、外相会合を開き、兵器の追加供与など、ウクライナに対する軍事支援の強化で一致しています。

一方、ロシアは、アメリカなどのこうした動きを強く警戒していてロシア大統領府のペスコフ報道官は7日、「ウクライナに様々な形式の兵器を提供することは、ロシアとウクライナの交渉の成功につながらない。非常に悪い結果になることは間違いない」と述べて、ウクライナとの停戦交渉に影響が及ぶとけん制しています。

日本駐在のロシア外交官ら8人追放 外務省

外務省は、日本に駐在するロシア大使館の外交官ら8人を追放する措置を発表しました。これは小野 外務報道官が、臨時に記者会見して発表しました。

それによりますと外務省の森 事務次官が8日、ロシアのガルージン駐日大使を呼び、「多数のむこの民間人殺害は重大な国際人道法違反であり、戦争犯罪で断じて許されず、厳しく非難する」と述べ、即刻全てのロシア軍部隊の撤収を求めました。
そのうえで森 事務次官は、日本に駐在するロシア大使館の外交官とロシア通商代表部職員、合わせて8人を国外に追放する措置をとることを伝えました。

これに対し、ロシア外務省のザハロワ報道官は国営通信に「ロシアは適切な対応をとる」と述べました。ヨーロッパ各国もこれまでに駐在するロシアの外交官を追放する措置を相次いで発表していて、ロシア側はこうした動きについて報復措置をとる考えを示しています。

ノーベル平和賞のムラートフ氏 ペンキかけられる

ロシアの独立系新聞「ノーバヤ・ガゼータ」紙は、去年ノーベル平和賞を受賞したムラートフ編集長が、寝台列車の中で何者かにペンキとみられる液体をかけられたと、7日、SNSに投稿しました。
投稿された写真には、頭や胸が真っ赤に染まったムラートフ氏の姿がうつっています。また、別の写真では、寝台列車のテーブルや窓、それに枕元などに赤い液体が飛び散り、ムラートフ氏の身を案じるコメントが複数書き込まれています。列車は首都モスクワから南東のサマラへ向かっていたということで、ムラートフ氏は「油性のペンキをかけられた。目がひどく痛い。車内が油くさい」とコメントしています。

ロシア報道官「損失は甚大」と認める

ロシア大統領府のペスコフ報道官は7日、イギリスのテレビ局の英語でのインタビューに応じ、ウクライナへの軍事侵攻を続けているロシア軍について「損失は甚大で、われわれにとって大きな悲劇だ」と述べ、ロシア軍が痛手を受けていることを認めました。
また、ウクライナとの停戦交渉をめぐって、ロシアが「軍事作戦を大幅に縮小する」としていたウクライナの首都キーウ周辺と北部のチェルニヒウについては「緊張緩和のため善意の行動として部隊が撤退した」と強調しました。

マリウポリにある大学の教授「科学と人道上の最大の惨事」

激しい戦闘が続くマリウポリにあるプリアゾフスキー国立工科大学のヴェスリー・エフレメンコ教授は、学術交流協定を結ぶ室蘭工業大学の清水一道教授と共同研究を続けています。
マリウポリがロシア軍に包囲され激しい攻撃を受ける中、6日、別の町に避難しているエフレメンコ教授から清水教授に3分50秒の英語のビデオメッセージが届きました。
この中で教授は、ロシア軍のミサイルが大学の建物に直撃したと証言し、「マリウポリではもう科学の研究はできない。授業もないし学生もいない。通りには廃虚と市民の遺体があるだけだ。私たちは家を失い、仕事を失い、避難民になった。これは第2次世界大戦以降のヨーロッパで科学と人道上の最大の惨事だ」と現地の状況を伝えています。

米IT大手メタ「サイバー攻撃が増加」

フェイスブックから社名を変更したアメリカのIT大手、メタは7日、インターネット上の脅威についてまとめた最新の報告書を公表し、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けて偽情報が拡散されるなど、サイバー攻撃が増加したと明らかにしました。

具体的には、ベラルーシ政府とのつながりが指摘されている組織がウクライナ軍の複数の関係者のアカウントを乗っ取り、ウクライナ軍が戦わずに降伏し国家のリーダーが国外に逃亡したという偽情報の投稿を英語やポーランド語で行っていたということです。
また、軍事侵攻に便乗し利用者の興味を引く動画から広告付きのウェブサイトに誘導するなど、詐欺を行っていた数万件のアカウントを削除したとしています。

米議会 ロシアとベラルーシに「最恵国待遇」取り消す法案可決

アメリカ議会の上下両院は7日、ロシアとベラルーシに対する経済制裁として、「最恵国待遇」と呼ばれる貿易上の優遇措置を取り消すための法案を可決しました。バイデン大統領の署名を経て成立し、北朝鮮やキューバと同じように、ロシアやベラルーシからの輸入品に平均で30%の高い関税がかかる見通しです。また、議会はロシア産の原油などのエネルギーの輸入を禁止するための法案も可決しました。

ゼレンスキー大統領 “ボロジャンカはブチャより深刻”

ウクライナのゼレンスキー大統領は7日公開したビデオメッセージで、ロシア軍が撤退した首都キーウ近郊のブチャで多くの市民が殺害されているのが見つかったことについて「ロシアが、自由や人間の安全保障、人権にとって、地球上で最大の脅威になっていることがブチャで明らかになった」と述べました。そのうえで、キーウから北西におよそ50キロ離れたボロジャンカの状況に触れ「ボロジャンカはもっとひどい状況だ」と述べ、ブチャよりも深刻な被害が出ていると訴えました。

米オースティン国防長官 “ロシア側と意思疎通できず”

アメリカのオースティン国防長官は7日、議会上院の公聴会で、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐり「プーチン大統領は首都キーウを速やかに制圧できると考えていたが、間違いだった。いまはおそらく首都の制圧に見切りをつけ、南部と東部に集中している」と指摘しました。

また、ロシアの国防相と連絡をとろうとしているものの、ロシア側が応じず、意思疎通ができていない現状を明らかにしました。オースティン国防長官はロシア側との対話を維持するため2月中旬以降、ロシアのショイグ国防相と頻繁に連絡をとろうとしているものの「ロシア側が反応せず、あまりうまくいっていない」と述べました。そのうえで「ロシア側への働きかけをやめるわけではない。われわれは指導部と対話する能力を持たなければならない」と述べ、国防相への呼びかけを続ける考えを示しました。

ウクライナ 東部の市民に避難呼びかけ

ロシア国防省は7日、ウクライナ東部のハルキウや南部のミコライウ、それに南東部のザポリージャなどにあるウクライナ軍の燃料施設をミサイルで破壊したと発表しました。ロシア軍がインフラを攻撃する理由について、イギリス国防省は7日、ウクライナ軍の補給能力を弱め、ウクライナ政府への圧力を強めるねらいがあると指摘しています。また、アメリカのシンクタンク、「戦争研究所」は6日、ロシア軍が近く、東部のルハンシク州とドネツク州で大規模な攻撃を行う準備をしている可能性があるという見方を示しました。
ウクライナのベレシチュク副首相は6日、東部のルハンシク州やドネツク州などの市民に対し「攻撃にさらされ、助けられなくなる」としてすみやかに避難するよう呼びかけました。またルハンシク州の知事も7日「この数日間が避難の最後のチャンスだ。敵は移動経路を断とうとしている」と強い危機感を示しました。

国連人権理事会 ロシアの理事国資格停止の決議を採択

ニューヨークの国連本部で7日、国連総会の緊急特別会合が開かれ、ウクライナの首都近郊のブチャなどで多くの市民の遺体が見つかったことを受けて、アメリカなどが提出した決議案の採決が行われました。
決議案は「ロシアによる重大かつ組織的な人権侵害に強い懸念を表明する」としていて、ロシアの国連人権理事会の理事国としての資格を停止するよう求めています。
採決の結果、欧米や日本などあわせて93か国が賛成し、ロシアのほか中国や北朝鮮など24か国が反対、インドやブラジル、メキシコなど58か国が棄権し、棄権と無投票を除いた国の3分の2以上の賛成で、決議が採択されました。

政府 ロシアへの追加制裁措置を検討

G7の外相会合に出席した林外務大臣は、記者団に対し「ロシアに対して制裁を通じて圧力を強化していく必要性について一致した。日本として着実に制裁を実施していく考えを表明した」と述べました。
政府はG7の首脳声明を踏まえ、ロシアに対する追加の制裁措置をとる方針で、プーチン大統領らに行っている資産凍結の対象拡大や、輸出禁止の対象の拡大、それにロシアへの新規投資の禁止などを行う案が出ています。

欧米企業 多額の損失見通しを相次いで発表

ロシアによるウクライナへの侵攻を受けてロシア事業からの撤退などを決めた欧米の企業の間では、関連して多額の損失が出るとの見通しを発表する動きが相次いでいます。
イギリスの石油大手シェルは、ロシア事業からの撤退に伴う損失が、先月までの3か月間で最大50億ドル、日本円で6200億円近くに上るとの見通しを明らかにしました。
シェルはロシアからの原油や天然ガスなどの調達を段階的に終了させ、ロシア事業から完全に撤退する方針で、関連資産の評価上の損失などが膨らむ見込みです。
また、アメリカの石油大手エクソンモービルは、ロシア極東のサハリン沖で進めてきた石油・天然ガス開発事業「サハリン1」からの撤退で、最大40億ドル、日本円で5000億円近くの損失が出る可能性があるとしています。
さらにアメリカの金融大手JPモルガン・チェースは、ロシア関連でおよそ10億ドル、日本円で1200億円余りの損失が出る可能性があるとしているほか、オランダのビール大手ハイネケンも、ロシアで展開するビールや飲料水などの事業の売却に伴って、4億ユーロ、日本円で540億円近くの損失が出る見込みだとしています。
金融市場では、こうしたロシア関連の損失によって企業業績が悪化することへの警戒も出ています。

米がロシアの航空3社に罰則

アメリカのバイデン政権は7日、ロシアの航空会社3社がことし2月下旬に発動した輸出規制に違反したとして、罰則を科すと発表しました。
具体的には、最大手のアエロフロートのほか、アズール・エア、UTエアの3社が、輸出規制の対象となっているボーイング製の航空機などを使ってロシアの都市と中国、インド、トルコなどの都市を結ぶ便を運航したとしています。
アメリカ商務省は、罰則としてこの3社がアメリカ企業の製品やサービスを一切受けられないようにするほか、ほかの国の企業にも同様の協力を求め、運航を難しくするねらいです。

少なくとも1611人の市民が死亡 国連人権高等弁務官事務所

国連人権高等弁務官事務所は、ロシアによる軍事侵攻が始まったことし2月24日から今月6日までに、ウクライナで少なくとも1611人の市民が死亡したと発表しました。
このうち131人は子どもだということです。
死亡した人のうち、1119人はキーウ州や東部のハルキウ州、北部のチェルニヒウ州、南部のヘルソン州などで、492人は東部のドネツク州とルハンシク州で確認されています。
また、けがをした人は2227人にのぼるということです。
多くの人たちは砲撃やミサイル、空爆などによって命を落としたり、負傷したりしたということです。
今回の発表には、ロシア軍の激しい攻撃を受けている東部マリウポリなどで確認がとれていない犠牲者の数は含まれておらず、国連人権高等弁務官事務所は実際の数はこれよりはるかに多いとしています。

431万人余が国外に避難 国連難民高等弁務官事務所

UNHCR=国連難民高等弁務官事務所のまとめによりますと、ロシア軍の侵攻を受けてウクライナから国外に避難した人の数は、6日の時点で431万人余りとなっています。
主な避難先は、ポーランドがおよそ251万人、ルーマニアがおよそ66万人、ハンガリーとモルドバがおよそ40万人などとなっています。
また、ロシアに避難した人は、先月29日の時点でおよそ35万人となっています。