ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交などウクライナ情勢をめぐる11日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)
駐日ロシア大使 “外交官らの追放は日ロ関係に逆行”
ウクライナ情勢をめぐり、外務省が今月8日、日本に駐在するロシア大使館の外交官ら8人を追放する措置を発表したことについて、ロシアのガルージン駐日大使は11日、国営のロシアテレビのオンラインでのインタビューで、「日ロ関係に逆行する決定だ」と批判しました。
そして「この非友好的な行動を決して見過ごすことはできない」と述べ、ロシア側としても対抗措置をとる可能性を明らかにしました。
一方、ロシア外務省が先月、日本との平和条約交渉を中断する意向を表明したことについてガルージン大使は「日本がロシアに対して行った一連の非友好的な措置に対応したものだ」と述べ、一方的な決定を正当化しました。
ウクライナ 国外避難民454万人余に(10日時点)UNHCRまとめ
UNHCR=国連難民高等弁務官事務所のまとめによりますと、
ロシア軍の侵攻を受けてウクライナから国外に避難した人の数は、10日の時点で454万人余りとなっています。
主な避難先は
▽ポーランドがおよそ262万人、
▽ルーマニアがおよそ69万人、
▽ハンガリーがおよそ42万人、
▽モルドバがおよそ41万人などとなっています。
また、
▽ロシアに避難した人は、およそ40万人となっています。
キーウ近郊 殺害された飼い主の帰宅を待ち続ける 秋田犬
ロシア軍が撤退したウクライナの首都キーウ近郊のマカリウでは、兵士に連れ去られて殺害された、飼い主の女性の帰宅を秋田犬がおよそ1か月待ち続けていて、地元メディアは亡くなった飼い主の帰りを東京 渋谷の駅前で待ち続けた「忠犬ハチ公」になぞらえて伝えています。
ウクライナの政府高官のSNSなどによりますと、ロシア軍が撤退したウクライナの首都キーウの西、およそ50キロに位置するマカリウでは、3月中旬、女性が兵士によって連れ去られ、性暴力をうけたあと、殺害されたということです。
女性は、「リーニ」という名前の秋田犬を飼っていて、飼い主が亡くなってからおよそ1か月がたった今も、女性の帰宅を玄関で待ち続けているということです。
ボランティアが犬の保護を試みているものの、連れて行かれることに抵抗し続けているということで、地元メディアは亡くなった飼い主の帰りを東京 渋谷の駅前で待ち続けた「忠犬ハチ公」になぞらえて「マカリウのハチ公」と伝えています。
マカリウでは132人の住民が射殺され、遺体が見つかったとウクライナの複数のメディアが伝えています。
首都キーウ ミサイル攻撃を受けたショッピングセンターは
先月20日、ロシア軍によるミサイルの攻撃を受け少なくとも8人が死亡したキーウ市内のショッピングセンターでは今もがれきが散乱し、中の商店や飲食店は激しく破壊されていました。また併設するオフィスビルが骨組みだけとなっているほか、周囲のマンションなどの窓ガラスも広い範囲で割れていて爆発の威力を物語っていました。
ロシア国防省は、このショッピングセンターが「ウクライナ軍の基地として使われていた」として攻撃を正当化しましたが、現場では軍との関連を示すものは見当たりませんでした。
首都キーウ ミサイル攻撃を受けた高層アパートでは…
キーウでは2月26日の午前8時ごろ、中心部の27階建ての高層アパートがロシア軍によるミサイルの攻撃を受け20階付近を中心に激しく壊れました。10日に取材に応じた22階の住人のオレクシ・モロゾフさん(45)は前日の夜から隣の学校にあるシェルターに家族とともに避難していたため無事でしたが、3人いる子どもの部屋が完全に壊れ壁や窓などが吹き飛んだということです。また下の階の住人、少なくとも数人がけがをしたということです。モロゾフさんは、その後、すぐにウクライナ西部に家族とともに避難したということです。
荷物を取りに一時的にアパートに戻ったモロゾフさんは「大惨事としかいえず、もはやこのアパートに住むことはできません。完全に民間人の建物で標的にされる理由はありません。シェルターに避難していなければ子どもたちは死んでいたでしょう」と話していました。
EU外相会議始まる 支援や追加制裁議論
EUは11日午前、日本時間の11日夕方からルクセンブルクで外相会議を開いています。会議に先立って、今月8日にウクライナの首都キーウやその近郊を訪れたEUの外相に当たるボレル上級代表は記者団に対し「侵攻したロシア軍が市民にどれほどひどいことをしているのか目の当たりにしてきた。これからどうすればウクライナの人々をさらに支援できるか、そして捜査に当たる国際刑事裁判所をどう支援できるかを話し合う」と述べました。
ボレル上級代表はキーウ訪問の際ウクライナのゼレンスキー大統領に近く、軍事支援を強化する見通しを示していたことから、今回の外相会議ではこの内容について議論が行われる可能性があります。
また会議ではロシアに対する追加の制裁についても意見が交わされる予定です。EUは今月8日にロシアからの石炭の輸入禁止などの制裁を正式に決めましたが、今後もさらに制裁の範囲を拡大してロシアへの圧力を強めていくとしています。
ウクライナ検察当局「183人の子どもが死亡」
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻で犠牲になる子どもが増え続けていて、ウクライナの検察当局は11日の時点で183人の子どもが死亡し、少なくとも342人がけがをしたと発表しました。▽被害を受けた子どもが最も多いのは東部のドネツク州で110人、次いで▽キーウ州で98人▽東部のハルキウ州で76人▽北部のチェルニヒウ州で54人などとなっています。
また爆撃や砲撃で被害を受けた学校などの教育施設は938に上り、このうち87の施設は完全に破壊されたということです。
英国防省「民間人犠牲のリスク 格段に高まる」
イギリス国防省は11日、戦況の分析を公表し、ロシア軍は人体に深刻な被害が出る白リン弾を「東部のドネツク州で使用したことがある」としたうえでドネツク州の「マリウポリでも使用される可能性がある」と分析しています。また分析によりますと、ロシア軍がドネツク州やルハンシク州で砲撃を続けているのに対し、ウクライナ軍も反撃しロシア軍の戦車や軍用車両、それに火砲を破壊したということです。
イギリス国防省は「ロシア軍が精密な誘導ができない爆弾を多用しているため標的を定めて攻撃を行う能力が低下し、民間人が犠牲になるリスクが格段に高まっている」と警鐘を鳴らしています。
日本政府 親族などいない避難民に生活費支援
政府はウクライナからの避難民を積極的に受け入れる方針で、日本に親族や知人がいない人たちに対する支援の内容を決定しました。
それによりますと、生活費として国が確保した一時滞在先のホテルにいる間、食事の提供とは別に一日当たり▽12歳以上は1000円、▽11歳までは500円を支給するとしています。そして受け入れを申し出た自治体や企業などが提供する住居に移るため、一時滞在先を出たあとは一日当たり▽12歳以上は2400円で、2人目以降は1600円、▽11歳までは1200円を支給するとしています。
また一時滞在先を出る人たちが生活に必要なものの購入などに充てるための一時金として▽16歳以上は16万円▽15歳までは8万円を支給するとしています。
さらに医療や日本語教育、就労支援などの費用も国が実費を負担するなどとしており、政府は避難生活の長期化が予想されることから、今後も必要に応じて生活費などの支援を検討することにしています。
松野官房長官「ウクライナの在留邦人 約50人」
松野官房長官は午前の記者会見で「おととい時点で確認されているウクライナの在留邦人はおよそ50人だ。現時点までに邦人の生命、身体に被害が及んだとの情報には接していない」と述べました。そのうえで「ロシアによる侵略後は自身の身の安全を最優先とした行動をとることを呼びかけながら、出国先の入国要件などの情報提供を含むさまざまな形で情報提供を行い退避を支援している。政府としては在ポーランド日本大使館およびジェシュフ連絡事務所を拠点として、引き続きウクライナ在留邦人に対する情報提供や安全確保、出国支援に最大限取り組んでいく考えだ」と述べました。
ゼレンスキー大統領「東部でロシア軍がさらに大規模な軍事作戦」
ウクライナのゼレンスキー大統領は10日夜、国民向けに新たな動画を公開し「ウクライナ東部ではロシア軍がさらに大規模な軍事作戦に移行するだろう。さらなるミサイル攻撃や空爆が行われる可能性がある」と警戒感を示しました。そのうえで「われわれはより活発に武器を補給し、ロシア軍のすべての攻撃に備える」と述べ徹底抗戦する姿勢を改めて強調しました。
またドイツのショルツ首相と10日、会談したことを明らかにし「ドイツの立場がウクライナ寄りに変化してきていることをうれしく思う。非常に理にかなったことだ」と述べ、ロシアへの制裁がさらに強化されることに期待を示しました。
首都キーウの西 ブゾワで数十人の遺体 ロイター通信
ロイター通信によりますと、首都キーウから西に30キロ余り離れた村、ブゾワで数十人の遺体が見つかったということです。地元の行政府につとめる女性はロイター通信の取材に対して「50人以上が殺害された。至近距離から発砲されたほか、17歳の少年の焼死体が車から発見されたケースもあった」と惨状を話していました。
ロシア語を話す住民への差別に反対するデモ ドイツ
ドイツのフランクフルトで10日、ロシア語を話す住民などが軍事侵攻以降嫌がらせに苦しんでいると訴え、差別をやめるよう求めるデモを行ったとAFP通信が伝えました。参加した男性は「ロシア語を話す子どもたちが学校でたたかれたりしている。それは受け入れられない」と話していました。
ウクライナの経済成長率 前年比-45%の見通し
世界銀行は10日、ロシアによる軍事侵攻を受けるウクライナのことしの経済成長率が前の年と比べてマイナス45.1%と記録的な落ち込みになる見通しだと発表しました。またロシアの成長率が各国の厳しい経済制裁によってマイナス11.2%に落ち込むとしたほか、周辺のベラルーシ、キルギス、モルドバなどもマイナス成長に陥ると予測しました。
ウクライナで少なくとも1793人の市民が死亡
国連人権高等弁務官事務所はロシアによる軍事侵攻が始まったことし2月24日から今月9日までにウクライナで少なくとも1793人の市民が死亡したと発表しました。このうち142人は子どもだということです。またけがをした人は2439人に上るということです。戦況地図はこちら
“ロシア軍が兵士を増強する動き” イギリス国防省
イギリス国防省は10日、損失が増えているとしてロシア軍が兵士を増強する動きがあるとする分析を明らかにしました。具体的には2012年以降に除隊した人を部隊の増強にあてようとしていることや、ウクライナの西部国境に接し、1990年にモルドバから一方的に分離独立を宣言しロシア軍が駐留している沿ドニエストル地方からも兵士を集めようとしているということです。
ウクライナ東部ハルキウ州で10人が死亡 州知事
ウクライナ東部のハルキウ州の知事は、この週末に州内でロシア軍の攻撃により子ども1人を含む10人が死亡したほか、11人がけがをしたことを10日夜のSNSの投稿で明らかにしました。
これに先立つ10日午前、州知事は前日からの24時間にロシア軍による攻撃が66回確認されたと投稿していました。
駅攻撃 犠牲者が増え死者は57人に ドネツク州知事
ウクライナ東部のドネツク州の州知事は10日、州内のクラマトルスクで8日に起きた鉄道の駅へのミサイル攻撃による犠牲者の数がさらに増え、これまでに子ども5人を含む57人が死亡したことを自身のSNSで明らかにしました。
ロシア側は「ウクライナ軍による攻撃だ」と主張していますが、現地では多くの市民が避難するために駅に集まっていた時間帯をロシア軍がねらったのではないかと批判する声が上がっています。
ウクライナ東部ドニプロの空港に攻撃 6人けが うち1人重体
ウクライナ東部のドニプロで10日、空港やその周辺のインフラがロシア軍の攻撃を受けて破壊され、さらに攻撃で発生した火災の消火作業が行われていたところに再びロケット弾が撃ち込まれたと地元の当局者がSNSへの投稿や記者会見で明らかにしました。この攻撃で少なくとも6人がけがをし、このうち1人は重体だということです。
チョルノービリ原発の技術者が要員交代
ロシア軍に一時占拠されたウクライナ北部のチョルノービリ原子力発電所、ロシア語でチェルノブイリ原発をめぐり、IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は10日、声明を発表し、軍事侵攻の影響で長期間施設にとどまって勤務を強いられていた技術者たちが別の要員と交代したと明らかにしました。グロッシ事務局長は「待ち望んでいた前向きなニュースだ」と歓迎したうえで「原発が元の状況に戻るのに多くの仕事が残っているのは明らかだ」と指摘し、チョルノービリ原発の状況を確認するためIAEAのチームを率いて現地を早期に訪問する意向を改めて示しました。
オーストリア首相 プーチン大統領と会談へ
オーストリアのネハンマー首相は10日、みずからのツイッターで11日、ロシアの首都モスクワを訪問しプーチン大統領と会談する予定だと明らかにしました。これについてロシア大統領府のペスコフ報道官は10日、ロシアの国営通信社に対して「間違いない」と述べました。
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻のあと、EU=ヨーロッパ連合の加盟国の首脳がロシアを訪問してプーチン大統領と会談するのは初めてとなります。
キーウ州で1222人の死亡確認 ウクライナ検事総長
ウクライナのベネディクトワ検事総長は10日、イギリスのテレビ局、スカイニュースのインタビューでキーウ州で10日朝までに1222人の死亡が確認されたと明らかにしました。
またウクライナ国内で起きたロシアによる戦争犯罪は5600件に上り、ロシア軍の幹部や政治家などおよそ500人の容疑者を特定したとしています。
ドボルニコフ司令官 “シリアのブッチャー=虐殺者” 英メディア
ドボルニコフ司令官がウクライナでの軍事侵攻の指揮を執ることになったと報道されたあと、欧米のメディアは、戦闘がさらに陰惨なものになるのではないか、などと懸念を伝えています。
ドボルニコフ司令官は、2015年からロシアがシリアの内戦に軍事介入した際にも指揮をとり、プーチン大統領から英雄勲章を授与されました。
しかし、アメリカの有力紙「ワシントン・ポスト」は、シリアでドボルニコフ司令官の指揮下にあったロシア軍が市民に対し、広範囲で無差別な空爆を行ったと指摘しています。
その過去を踏まえ、イギリスのメディア「インディペンデント」は、ドボルニコフ司令官が「シリアのブッチャー=虐殺者」として知られていると伝えています。
そして、イギリスの新聞「ガーディアン」は、病院や学校、それに食糧の配給を待つ人々の列を繰り返し標的にした空爆により、シリアのアサド政権が劣勢に陥っていた形勢を逆転したと指摘したうえで、ウクライナでも同じような戦術をとるのではないかと、懸念を表明しています。
“ロシア軍司令官 残虐行為のおそれ” 米大統領補佐官
ウクライナへの軍事侵攻でロシア軍の指揮を執ることになったと報じられているドボルニコフ司令官について、アメリカのホワイトハウスで安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官は10日、CNNテレビに出演し「シリアで市民に対して残虐行為に及んだ過去がある」と述べ、ウクライナでも同様の行為をするおそれがあると警告しました。
そのうえで「ドボルニコフ司令官が指揮するロシア軍に対し、抵抗するウクライナの人々を支援するため、アメリカはできるかぎりのことをする」と強調しました。
バイデン大統領とインドのモディ首相がオンライン会談へ
アメリカのホワイトハウスは10日、バイデン大統領とインドのモディ首相がオンラインの会談を11日に行うと発表しました。ホワイトハウスは声明で「バイデン大統領はウクライナでのロシアによる残酷な戦争と、世界の食糧供給を不安定にしている状況を解消するために緊密な協議を続ける」と強調しました。
アメリカとしてはロシアを非難も支持もしない立場を示すインドに対して、厳しい姿勢をとるよう働きかけるものとみられます。
ウクライナからの避難民450万人余り UNHCR
UNHCR=国連難民高等弁務官事務所のまとめによりますと、ロシア軍の侵攻を受けてウクライナから国外に避難した人の数は9日の時点で450万人余りとなっています。主な避難先はポーランドがおよそ259万人、ルーマニアがおよそ69万人、ハンガリーがおよそ42万人、モルドバがおよそ41万人などとなっています。またロシアに避難した人はおよそ40万人となっています。
ロシア軍が撤退した村 住民は変わり果てた様子に怒り
ウクライナの首都キーウ近郊のロシア軍が撤退した村、ベレジフカでは多くの住宅が砲弾などで破壊され、避難先から戻った住民は変わり果てた村の様子を前にロシアへの怒りをあらわにしていました。破壊された家の被害を確認していた男性は「命があれば家や車は何とかなります。われわれはロシアに勝っているし必ず勝利する。ロシアはわれわれの国と魂を奪うことはできない」と怒りをあらわにしていました。
ウクライナ東部ハルキウ州の北東部で2人死亡 州知事
ウクライナ東部のハルキウ州の知事は10日午前、州内の被害状況を自身のフェイスブックに投稿し、前日からの24時間にロシア軍による攻撃が66回確認され9人がけがをしたと明らかにしました。このうち北東部にあるデルガチでは2人が死亡し複数のけが人が出たとしていて、州知事は「ロシア軍は前線で勝利できずにいるため市民を攻撃している」と非難しています。