[フランクフルト 14日 ロイター] – 欧州中央銀行(ECB)は14日、量的緩和策の段階的縮小方針を確認した。政策金利は据え置いた。

債券買い入れを今四半期中に縮小し、第3・四半期に終了するとのガイダンスを維持。金利は量的緩和終了後も「しばらく」は上昇せず、また緩やかなものになるとした。ただ、ロシアによるウクライナ侵攻に関連する不確実性を強調し、具体的な日程については手がかりを示さなかった。

ECBは声明で「前回の会合以降に入手したデータが、資産購入プログラム(APP)の資産買い入れは第3・四半期に終了するとの見通しを補強すると判断した」とした。第3・四半期の買い入れ量は今後決定する。

その上で「主要金利の調整は、資産買い入れ終了後しばらくしてから実施し、緩やかなものになる」とした。

ECBは、ウクライナ情勢を受け見通しを巡る不確実性が高まる中でも、インフレ高進が根付く可能性があることを懸念し、資産買い入れ終了方針を維持した。ただ、今回の理事会でも買い入れ終了後の対応については一切コミットメントを示さず、柔軟な政策運営を行い、迅速に対応すると強調するにとどめた。

ラガルドECB総裁は理事会後の記者会見で「ウクライナでの戦争の結果、成長見通しの下方リスクは大幅に高まった」と指摘。「金融政策運営に当たり、選択性、漸進性、柔軟性を維持する」と述べた。

その上で、資産買い入れ終了は第3・四半期のいつの時点でも可能で、利上げ開始の明確な時間枠はないと指摘。景気刺激策終了から数週間、もしくは数カ月後になる可能性があるとし、「金利については、その時になってから考える」と述べた。

また、ユーロ圏経済はウクライナ紛争で大きな影響を受けていると強調。すでに信頼が損なわれたほか、新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けた世界の供給網が一段の制約を受けているとし、「経済がどのように展開するかは、(ウクライナ)紛争の推移のほか、現在の制裁措置、および将来的な追加制裁の状況に左右される」と語った。

同時に、長期インフレ期待がECBの目標である2%を上回る初期の兆候が出ているとし、物価上昇について厳しく警告。「インフレ率は大幅に上昇している。主にエネルギーコストの急上昇により、今後数カ月のインフレ率はなお高水準で推移するだろう」とし、「注意深く監視する必要がある」と述べた。

関係筋は、ECBが7月に利上げに踏み切る可能性は消えていないと指摘。ただ、長期インフレ見通しを含むリスクの評価について、理事会内で見解の相違があるとの見方を示した。

ピクテのストラテジスト、フレデリック・デュクロゼは「ECBが7月に利上げを決定する可能性は低いと考えているが、ラガルド総裁はその選択肢があることを示したかったと思われる」と指摘。

INGのエコノミスト、カーステン・ブルゼスキ氏は「ECBは7月に資産の純買い入れを停止し、9月に利上げを開始する」とし、ECBの政策正常化は「カタツムリの歩み」のような緩慢なペースで進められるとの見方を示した。