ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交などウクライナ情勢をめぐる16日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

首都キーウ郊外で爆発 市長がSNSで明らかに

ウクライナの首都キーウのクリチコ市長は、16日、現地時間の朝にキーウ郊外で爆発があり、救助活動が行われていることをSNSのテレグラムで明らかにしました。
そのうえで市民に対して安全な場所にとどまるよう呼びかけています。

「ロシア軍に殺された民間人 900人超」キーウ州警察当局発表

ウクライナのキーウ州の警察当局は15日の記者会見で、ロシア軍の撤退以降、州内で900人以上の民間人の遺体が見つかったと明らかにしました。
会見では「ロシア軍に殺された民間人は900人を超えている。犠牲者数が最も多いブチャでは350人以上の遺体が見つかった。ブチャで活動した部隊が最も残忍だったことをうかがわせる」と強く非難しました。
また、ほとんどの犠牲者が銃撃によって亡くなっているということで、当局は路上で撃たれたという見方を示しています。

「住宅地にロシア軍の砲撃 乳児含む7人死亡」ハルキウ州知事

ウクライナ東部のハルキウ州の知事は、州内にあるウクライナ第2の都市ハルキウで15日、住宅地がロシア軍の砲撃を受け、生後7か月の乳児を含む7人が死亡し、34人がけがをしたことを明らかにしました。
現地の映像では住宅や車が破壊されたり、砲弾の残骸と見られる物体のそばで地面に大きな穴が開いたりしているのが確認できます。
また、車が砲撃されるのを目撃したという住民の男性へのインタビュー中には爆発音が複数回聞こえ、男性はおびえた様子でその場を立ち去っていました。
州知事は、今月14日までに州内で子ども24人を含む民間人503人が死亡したと発表していて、被害が拡大しています。

ゼレンスキー大統領 東部や南部「非常に困難な状況」

ウクライナのゼレンスキー大統領は、15日に公開したビデオメッセージで、ロシア軍が攻勢を強めている東部や南部について「非常に困難な状況だ」としたうえで「ロシア軍は残酷な行為で東部のドンバス地域やハルキウ州などを征服しようとしている。こうした残酷な行為はロシアでは尊ばれているのかもしれないが、ウクライナではさげすまれ、必ず罰せられているものだ」と非難しました。
また「南部ヘルソン州や南東部ザポリージャ州の占領されている地域では、ロシア軍が市民を脅かし続けている。彼らはウクライナ軍や政府機関と関わったことのある人たちを探し出せば、地域を掌握しやすくなると考えているが、ロシア軍を受け入れていないのは一部ではなく、すべてのウクライナ人だ。ロシアはウクライナ、そして全世界を永遠に失ったのだ」と述べました。
そのうえで「私たちが要求している武器をより多く、より早く手に入れられれば、立場はいっそう強固になり、平和が早く訪れる。民主主義の国々が、ロシアからの石油の輸入禁止や金融部門の完全な封鎖が平和に向けて必要なものだと早く認識すれば、戦争はそれだけ早く終わる」と述べ、欧米など各国のいっそうの支援が必要だという認識を示しました。

ゼレンスキー大統領 閣僚らとの会議の様子公開

ウクライナのゼレンスキー大統領は15日、首都キーウで閣僚などと開いた会議の様子を公開し、人道支援をめぐる課題などについて議論したことを明らかにしました。
会議には20人あまりの閣僚らが出席し、冒頭、ゼレンスキー大統領が「みなさんと久しぶりに通常の会議を開くことができうれしく思う」と述べました。
会議では、人道支援をめぐる課題のほか、重工業などの復興や経済の安定などについて議論したということです。また、ウクライナが申請しているEU=ヨーロッパ連合への加盟の手続きについても議題になったということです。

ロシア外務省 制裁報復で英首相の入国禁止措置

ロシア外務省は16日、ウクライナ情勢を受けたイギリスの制裁措置への報復として、イギリスのジョンソン首相らのロシアへの入国禁止措置を行うと発表しました。
ジョンソン首相のほか、トラス外相やウォレス国防相など合わせて13人が対象となっています。そのうえで、ロシア外務省は今後、報復措置の対象を広げていくと警告しました。

「ロシアが米にウクライナ支援をやめるよう警告」米複数メディア

アメリカの複数のメディアは、ロシアがアメリカに外交文書を送り、ウクライナへの軍事支援は「予見できない結果をもたらす」として、支援をやめるよう警告したと報じました。
このうち有力紙「ワシントン・ポスト」は14日、電子版で、外交文書のコピーを確認したとしたうえで、今月12日付けの文書の表題には、ロシア語で「キーウ政権に対する大量の武器や装備の供給に関するロシアの懸念」と書かれていたと伝えています。
そしてこの文書の中で、ロシアは、アメリカなどNATO=北大西洋条約機構の加盟国について「紛争地域への武器の輸送を定めた『厳格な原則』に違反し、ウクライナの過激な民族主義者などに高精度な武器が渡る脅威に気づいていない」と非難しているということです。
そのうえで「アメリカとその同盟国に対し、ウクライナの無責任な軍事化をやめるよう求める。地域や国際社会の安全にとって予見できない結果をもたらす」と警告しているということです。
一方、CNNテレビは15日「この外交文書は、アメリカやNATOに対するロシアの姿勢がより攻撃的になる前触れかもしれない」という関係者の話を伝えています。

ゼレンスキー大統領 ウクライナ軍「2500人から3000人を失った」

ゼレンスキー大統領は15日、CNNテレビとのインタビューでロシアの軍事侵攻によるウクライナ軍の死者について「2500人から3000人を失ったと思う」と述べました。そのうえで「けが人はおよそ1万人いて、そのうちのどれだけの兵士が生き残るかはわからない」としています。
一方、市民の犠牲者の数についてはロシア軍が攻勢を強めている南部や東部で死亡した人の数がわかっていないとして「全体の把握が難しい」と述べるにとどめました。
ウクライナ軍の死者についてロシア国防省は先月25日の時点で1万4000人以上にのぼると主張しています。

ゼレンスキー大統領“米大統領にロシアをテロ支援国家指定要請”

アメリカの有力紙ワシントン・ポストは複数の関係者の話として、ウクライナのゼレンスキー大統領がアメリカのバイデン大統領と最近行った電話会談でロシアをテロ支援国家に指定するよう要請したと報じました。これに対しバイデン大統領は具体的な対応については言及しなかったということです。
テロ支援国家指定の検討を巡っては、ブリンケン国務長官が、先月17日、記者団に対し「すべてのことを検討している」と述べています。アメリカの「テロ支援国家」は国際的なテロ活動を繰り返し支援しているとする国を国務長官が認定するもので、指定されれば輸出や金融面などでさまざまな制裁措置の対象となります。
現時点でアメリカ政府がテロ支援国家に指定しているのはイラン、北朝鮮、シリア、それにキューバの4か国です。

クリミアでは沈没した黒海艦隊旗艦をしのぶ式典

ロシア軍の黒海艦隊の象徴である旗艦、「モスクワ」が沈没したことについて、ロシアが併合したウクライナ南部クリミアにある軍港セバストポリで15日、「モスクワ」をしのぶ式典が行われました。
参加した男性は、「モスクワはみんなのシンボルで私たちの力、希望そして90年代の艦隊の復活のシンボルだった」と話していました。

約1か月にわたり包囲が続いた北部チェルニヒウの様子は

チェルニヒウではロシア軍の地上部隊が市街地に入るのを食い止めましたが、およそ1か月にわたって包囲され砲撃や空からの爆撃が加えられました。
チェルニヒウ市中心部に近い高層住宅が建ち並ぶ地区も空爆され、1棟は中央部分がえぐり取られるように崩れ落ちました。周辺の住宅や病院などにも被害が出て、この地区だけでおよそ50人が死亡しました。
15日、内外のメディアを現場に案内したビャチェスラブ・チャウス州知事によりますと、まだ行方が分からない人の捜索が続いていて、2日前にも遺体が見つかったということです。

チェルニヒウ市ではサッカーの地元チームの本拠地となっているスタジアムも空爆され観客席が大きく壊れ、フィールドには深さ2メートル以上の大きな穴ができていました。隣には19世紀後半に建てられドイツとソビエトの激しい地上戦後も残った子ども図書館がありましたが、この建物も被害を受けました。

被害はチェルニヒウ市近郊の村にも及びノボセリウカ村では先月上旬、空爆などで爆弾を次々落とされ、道路脇にあるほとんどすべての住宅が完全に崩れ落ち、路上などには10か所以上に大きな穴ができていました。
州の当局者は周辺に軍事施設がないにもかかわらず重さが500キロから1トンの大きな爆弾が使われたとしています。

砲撃などで鉄道施設も大きな被害 復旧作業進む

ウクライナ国鉄はロシア軍による軍事侵攻で不通になっていた首都キーウと北部チェルニヒウを結ぶ路線で15日、試運転を行い、その様子を内外のメディアに公開しました。
この路線ではキーウから北に80キロほどのところで砲撃によって橋桁が破壊され、近くには焼け焦げたロシア軍の戦車が放置されていました。

ロシア軍のこの地域からの撤退を受けて復旧作業が進み、すでに新しい橋桁がかけられ、上りの線路が通れるようになりましたが、下りの線路でバラストと呼ばれる石やレールを敷く作業が行われていました。国鉄では16日から旅客列車の運行を再開したいとしています。
ウクライナ国鉄によりますと東部の駅へのミサイル攻撃で50人以上が死亡したのをはじめ各地で鉄道の施設が攻撃されているということです。
旅客サービスの責任者のオクレクサンダー・ペルツォフウスキーさんは「鉄道は、人々が避難するため、家に戻るため、それに人道支援を続けるために欠かせない」と述べて、東部などで戦闘が続く中でも運行の継続に力を尽くすとしています。

米国防総省高官「沈没の旗艦は2発の対艦ミサイル攻撃受けた」

アメリカ国防総省の高官は15日NHKの取材に対し、ロシア海軍の黒海艦隊の旗艦、「モスクワ」が沈没したことについて「われわれは『モスクワ』がウクライナ側のミサイル、『ネプチューン』2発の攻撃を受けたことを確認した」と明らかにしました。

激しい戦闘の爪痕が残る製鉄所の様子の映像 ロイター通信

ロイター通信はマリウポリにある製鉄所を上空からドローンで15日に撮影したとする映像を公開しました。映像は、製鉄所とその周辺を広い範囲で撮影していて、ロイター通信は、この製鉄所の周辺で激しい戦闘が続いてきたとしています。映像からは屋根や壁を失って骨組みが見える建物や地面にがれきが散乱している様子が確認できます。

ウクライナ国防省「マリウポリの空爆継続 状況厳しい」

ウクライナ国防省は15日、記者会見でロシア軍が爆撃機などを使ってマリウポリを空爆し続けていて、さらに地上部隊が港を掌握しようとしていると発表しました。
記者会見の中で国防省は「マリウポリの状況は厳しくロシア軍は追加の部隊を投入している。製鉄所や港の周辺などで戦闘が続いているが、ロシア軍は市を完全には掌握できていない」との見解を示しています。

英政府 「過去最高額」1兆6000億円超の資産凍結発表

イギリス政府は15日までに、プーチン政権に近い「オリガルヒ」と呼ばれる富豪2人に対して資産凍結などの制裁をあらたに科したと発表しました。
2人は、サッカークラブ「チェルシー」のオーナーとして知られ、すでにイギリス政府から制裁を科されているアブラモビッチ氏の知人で、凍結される額は最大100億ポンド、日本円にして1兆6000億円を超え、イギリスで過去最高額となる資産凍結だとしています。
イギリス政府は、ウクライナへの軍事侵攻を受けてこれまでに今回の2人を含むオリガルヒやその家族など106人に経済制裁を科したとしています。トラス外相は発表文で「プーチン大統領がウクライナで失敗するまで、制裁を続けるつもりだ」とコメントしています。

市民の犠牲者数発表も東部などで詳細わからず 国連機関

国連人権高等弁務官事務所は、ロシアによる軍事侵攻が始まったことし2月24日から今月14日までに、ウクライナで少なくとも1982人の市民が死亡したと発表しました。このうち162人は子どもだとしています。
地域別でみると、716人が東部のドネツク州とルハンシク州、1266人が、キーウ州や東部のハルキウ州、北部のチェルニヒウ州、南部のヘルソン州などで確認されているということです。また、けがをした市民は2651人にのぼるとしています。
ただ国連人権高等弁務官事務所は、今回の統計にはロシア軍による激しい攻撃が続いている東部のマリウポリなどでの犠牲者の数は、集計が遅れていたり、確認がまだ取れていなかったりするため、すべて含まれていないとしていて、実際の死傷者の数はこれを大きく上回るのではないかとの見方を示しています。

“キーウ近郊でロシア撤退以来 最大規模の爆発” ロイター通信

ロシアがウクライナの首都・キーウへの攻撃を強めると警告する中、ロイター通信は、15日、キーウ近郊でロシア軍が2週間前に撤退して以来、最大規模の爆発があったと伝えています。

現地からの映像では、巨大な建物の壁の一部がなくなったり、骨組みがあらわになったりするなど、大きな損傷を受けた様子が分かります。AFP通信は、この建物について、ミサイルを製造する工場だと伝えています。
また、別の建物のドアを映した固定カメラの映像では、2回外が明るくなったあと、カメラが揺れるほどの衝撃があり、ドアの一部が外れて壊れたことが確認できます。
住民の1人は、深夜に3回の爆発があったとしたうえで「3回目はとても大きな音がしました。壁が崩れ落ちたところもありました」と話していました。

ウクライナの隣国ルーマニアで 文化や芸術を支援する動き

ルーマニア北西部の都市クルージュナポカにある国立オペラ劇場では先月中旬からウクライナ南部オデーサのオペラ劇場に所属する歌手2人を受け入れています。
このうちの1人、ソプラノ歌手のアンナ・ボンダレンコさん(32)は軍事侵攻が始まって以降、しばらくの間は、オデーサにとどまっていましたが歌う機会を求めてルーマニアに避難し、劇場で、ソリストとして活動しています。
来週18日、ウクライナの民謡などを披露するコンサートに出演する予定で、15日も練習に取り組んでいました。ボンダレンコさんは「たとえ戦争があす終わってもすぐには帰れないことはわかっていますが、歌うことで心はウクライナに帰ることができます」と話していました。