【シリコンバレー時事】簡易投稿サイトを運営する米ツイッターに対し、米実業家イーロン・マスク氏が買収を仕掛けた。厳しい投稿管理への不満が動機で、買収が成功すれば誤情報など「有害」とされる投稿への対策強化の流れが反転する可能性がある。同社は防衛策を講じたが、攻防戦の行方は、今や社会インフラとなった交流サイト(SNS)上での「言論の自由」をめぐる議論にも影響を及ぼしそうだ。
「疑わしきは意見を述べさせ、(投稿は)残すべきだ」。「『言論の自由』至上主義者」を自称するマスク氏は、買収提案が明らかになった14日、トークイベントで主張した。米国では、虚偽発言も表現の自由の範囲内であり、反論で対処すべきだとの考え方がある。マスク氏は、昨年1月の連邦議会襲撃をあおったとしてトランプ前大統領のアカウントをツイッターが凍結した際にも批判していた。
一方でSNS企業は、暴力の扇動や利用者の安全を脅かす投稿は、サービス品質を損なうとみてアカウント凍結などの措置を取ってきた。投稿管理は、新型コロナウイルス禍での誤情報拡散を米政府から糾弾され、さらに厳格になっていると野党共和党の支持者ら保守層を中心に反発が出ている。
マスク氏が約9%の株式を保有するツイッターの筆頭株主となったことが判明したのは4日。同社は取締役として迎え入れることで株式保有に制限をかけようと試みたが、マスク氏は就任当日に辞退を申し出た。14日には、残りの全株式を買い取って非上場化する案を提示した。実現には約400億ドル(5兆円)が必要とみられる。
一部株主は提示額が低過ぎるとして拒否する姿勢だ。ツイッターは15日、特定の株主の持ち分比率が15%以上になった場合、他の株主が割安で株式を買い増せる権利を付与する買収防衛策「ポイズンピル(毒薬条項)」を導入した。米投資ファンドが友好的な買収者である「ホワイトナイト(白馬の騎士)」として名乗りを上げる可能性があるとの報道もある。
マスク氏は提案が拒否された場合の「代替案」の存在にも言及している。協力者を募る可能性も指摘されており、今後も駆け引きは続く見通しだ。