【ワシントン時事】ロシアのウクライナ侵攻で、世界的な食料不足への懸念が強まっている。両国は主要な穀物輸出国で、戦闘激化に伴い供給が滞るとの見方から、小麦相場は過去最高値に急騰。低所得国では社会不安を招きかねない状況だ。来週ワシントンで開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議などでも、食料問題が主要議題となる。
低所得国へ食料供給を ウクライナ危機で不足―IMFや世銀トップ
「人々が食べ物を買えなければ、多くの社会的混乱が引き起こされる」。アフリカ開発銀行のアデシナ総裁(元ナイジェリア農相)は中東メディアとのインタビューで、食料高がアフリカ諸国に及ぼす影響に懸念を示した。
ロシアとウクライナで世界の小麦輸出の約3割を担っていた。両国の主要な小麦輸出港は戦闘が続く黒海沿岸に集中していることもあり、国際指標のシカゴ小麦相場は14年ぶりに過去最高値を更新。戦争でウクライナの農繁期の作業に支障が出れば、供給不安はさらに続きそうだ。
食料品の急激な値上がりで最も打撃を受けるのは、低所得層だ。世界銀行のマルパス総裁は12日の講演で「食料価格が1%上昇するごとに、1000万人が極度な貧困に陥る」と訴えた。
食料安全保障の強化を目指す動きも世界で強まりそうだ。国際通貨基金(IMF)や世銀などは13日公表した共同声明で、低所得国に緊急の食料供給や金融支援だけでなく、農業生産拡大に向けた措置で協調するよう国際社会に呼び掛けた。
サブサハラ(サハラ砂漠以南のアフリカ)諸国は小麦供給の約85%を輸入に頼り、うち3分の1をロシア、ウクライナ産が占める。アデシナ氏は「今こそ食料生産でアフリカを支援しなければ、容易に危機に陥る」と警鐘を鳴らした。