政府が月内に取りまとめる緊急経済対策の財源の在り方をめぐり、意見が真っ向からぶつかっていた自民、公明両党が21日、折り合った。自民党が与党の亀裂回避を優先し、2022年度補正予算案の今国会成立を求める公明党の主張を一部受け入れ、軟着陸を図った。ただ、再び予算委員会で岸田政権が野党の追及にさらされるリスクをはらむ。譲歩を迫られた政府・自民党内には不満が残りそうだ。

予備費乱用の恐れも 異例の補正予算編成―緊急経済対策

 自民党の茂木敏充幹事長は、公明党の石井啓一幹事長との会談で合意した後、記者団に「6月以降も視野に入れた補正が必要という結論になった」と述べ、難航していた調整に着地点を見いだしたことに安堵(あんど)の表情を見せた。

 政府は物価高騰を受けた緊急経済対策の22日策定を目指していた。自公両党は19日に幹部間で合意する手はずだったが、焦点である(1)経済対策の財源(2)補正の時期―で平行線が続き、決着がずれ込んでいた。

 政府・自民党は参院選に向けて失点を防ぐ「守り」の政権運営が基本戦略。22年度予算の予備費を使った緊急対策を速やかに講じた上で夏の参院選を乗り切り、秋の臨時国会で本格的な経済対策を盛り込んだ補正を成立させる段取りを描いた。

 選挙を目前に首相が出席する衆参両院予算委員会を開けば、野党が対決姿勢を強めるのは必至。自民関係者は「これまで参院選前に補正を組んで良かった試しがない」と指摘していた。

 一方、公明党が「補正成立」を声高に訴えたのは参院選向けのアピールが必要との思いからで、自民党との戦略のずれは明らかだった。山口那津男代表は3月29日の記者会見で唐突に今国会での補正成立を求めて以降、譲らない姿勢を崩さなかった。

 公明党ベテランは、ぎくしゃくした参院選の相互推薦、ガソリン税を一時的に引き下げる「トリガー条項」の交渉と同様に、自公両党間の「水面下の交渉が本当にない」と嘆く。

 結局、今回合意に至ったのは「公明党の顔を立てたから」(自民党幹部)。連立の結束を重視し、参院選に影響が出ないようにするためだ。公明党は「まずまずだ」(幹部)と歓迎ムードが広がる。

 もっとも、自公合意の中身をよく見ると、緊急対策については自民党が主張した22年度予算の予備費を充て、1兆5000億円の穴を補正予算で埋めるとする「折衷案」の形。1カ月前に成立したばかりの当初予算の予備費を直ちに積み増すことに「見通しが甘い」との批判が出そうだ。予備費支出は国会審議を経ずに政府が決められるため、野党は予算執行が「白紙委任」となることに照準を合わせる。

 立憲民主党の泉健太代表は記者団に「規模があまりに小さい」と批判。「予備費の使途が拡大していくことについても課題がある」と疑問を呈した。共産党の志位和夫委員長は記者会見で「予備費を積み増す補正予算は前代未聞。税金は自民、公明両党のポケットマネーではない」と断じた。