ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交などウクライナ情勢をめぐる23日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)
避難した人は516万人余に
UNHCR=国連難民高等弁務官事務所のまとめによりますと、ロシア軍の侵攻を受けてウクライナから国外に避難した人の数は、22日の時点で516万人余りとなっています。
主な避難先は、ポーランドがおよそ288万人、ルーマニアがおよそ77万人、ハンガリーがおよそ49万人、モルドバがおよそ43万人などとなっています。
また、21日の時点で、ロシアに避難した人は、およそ58万人となっています。
文化財の被害は242
ウクライナの文化情報政策省は23日、ロシア軍の侵攻によって国内にある242の文化財が戦争犯罪によって被害を受けたと明らかにしました。
それによりますと、被害を受けた文化財は主にウクライナ東部や南部の広い範囲で確認され、東部ハルキウ州で84件東部ドネツク州で45件、キーウ州で38件などとなっています。
歴史ある教会などの宗教施設や図書館、それに劇場などの文化施設が被害を受けているということです。
オレクサンドル・トカチェンコ文化情報政策相は、ロシア軍による文化財の破壊行為を戦争犯罪の証拠として集めていくとしたうえで「侵略者はウクライナの精神までを壊すことはできない」と述べています。
ウクライナ大統領府「ロシア軍 マリウポリで空爆再開」
ウクライナ大統領府の顧問のアレストビッチ氏は23日、ウクライナ側の部隊や市民が立てこもる東部マリウポリにあるアゾフスターリ製鉄所について、SNSに動画を投稿しました。
この中でアレストビッチ氏は「ロシア軍はアゾフスターリ製鉄所のある地域で、マリウポリの守備隊の抵抗を抑えようとしている。ロシア軍は、工場のある地域と守備隊の防衛線に対して空爆を再開した。さらに強襲作戦を行おうとしている」と述べました。
バルト3国 ロシアからの天然ガス購入を停止
バルト3国のエストニア、ラトビア、リトアニアはロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けて、ロシアからの天然ガスの購入を停止したことを明らかにしました。
これはラトビアのカリンシュ首相が22日、首都リガでエストニア、リトアニア両国の首相と会談したあと、共同記者会見を開いて明らかにしたものです。
カリンシュ首相はロシアによる軍事侵攻を強く非難したうえで「ラトビアもエストニアもリトアニアも、現在、ロシアからガスを購入していない。将来も購入する必要がないことを保証するために、協力している」と述べ、すでにロシアからの天然ガスの購入を停止し、今後も購入しない考えを示しました。
これに先立ちリトアニアは、今月2日「EU=ヨーロッパ連合の加盟国の中で、初めてロシアからの天然ガスを完全に停止した」と発表し、ほかのEU加盟国に対して、ロシアからのガスを止めるよう呼びかけていました。
また会見で、3か国の首相は今後、国防費を増やしNATO=北大西洋条約機構の目標を上回るGDP=国内総生産の2.5%に引き上げる考えを示したうえでNATOに対して、バルト3国への軍事的な関与を深めるよう求めました。
ロシアと地理的に近いバルト3国は今回の軍事侵攻に危機感を高めており、ガスの購入を停止することで、エネルギー分野でのロシアの影響力を排除し、プーチン政権に対する経済的な圧力を強めたいねらいがあるものとみられます。
ロシア軍 東部中心に部隊投入 東部や南部での攻撃を継続
ロシア軍は、東部マリウポリの掌握を宣言したあと、東部を中心に部隊を投入し、これに対しウクライナ側は徹底抗戦する構えを見せています。
ロシア軍はマリウポリから東部のほかの地域へ部隊を移動させるねらいとみられますが、イギリス国防省は23日「ロシア側がマリウポリを占領したと主張しているにもかかわらず、激しい戦闘が続いて、占領の試みが妨げられ、東部ドンバス地域でロシア側が想定していた進軍が、さらに遅れている」と分析しています。
また、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は22日「ロシア軍は製鉄所に残る兵士や市民を飢えさせようとしている。市民を避難させようとはしていない」と指摘しています。
一方、ロシア国防省は23日、各地をミサイルなどで攻撃し、東部ドネツク州でミサイルなどの貯蔵施設を破壊したほか、南部ミコライウ州でウクライナ軍の無人機15機を破壊したと発表し、東部や南部での攻撃を継続しています。
ロシアのプーチン大統領は、旧ソビエトが第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利した5月9日の「戦勝記念日」に向けて国内向けに勝利を強調したい思惑があるとされ、当面は東部2州からロシアが一方的に併合した南部クリミアまでの地域を支配下に置くことをねらい、侵攻を継続するものとみられます。
“製鉄所のシェルターの子ども”の映像公開「太陽が見たい」
マリウポリで戦闘を続けるウクライナの「アゾフ大隊」は、拠点としている製鉄所のシェルターの様子とする映像を23日、公開しました。
正確な撮影日は不明ですが、映像では兵士が「食料を持って来た」と話しかける様子がうつされていて、衣服や生活物資が置かれた部屋では、多くの女性や子どもたちが暮らし、幼い子どもを連れた女性は、長引く避難生活に疲れた表情をしていました。
小学生くらいの女の子は「家に帰りたい。太陽が見たい」と話していました。
また小さな子どもを抱いた女性は「家に帰りたいです。食料がなくなってしまいます」と話していました。
きょうも避難民が成田空港に到着 家族と再会
成田空港では23日午後、ウクライナから避難した人たちの日本への渡航を支援するため政府が座席の一部を借り上げている、ポーランドからの直行便が到着しました。
飛行機には、政府の支援を受けた幼い子どもを含む17人のほかにも、ウクライナからの避難者が搭乗していて、到着ロビーで家族や支援者などの出迎えを受けました。
岸田首相 国際社会と連携しロシアへの制裁措置続ける考え
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まってから24日で2か月となる中、岸田総理大臣は、軍事侵攻を終わらせる正念場だとして、国際社会と連携してロシアに対する制裁措置を続ける考えを示しました。
一方で「物価の高騰による国民生活や経済への影響をできるだけおさえるべく努力したい」と述べ、国民に協力を呼びかけました。
国連事務総長 プーチン大統領やゼレンスキー大統領と会談へ
国連は、グテーレス事務総長が今月26日にロシアでプーチン大統領と会談し、その後、今月28日にはウクライナでゼレンスキー大統領と会談すると発表しました。
グテーレス事務総長は、ロシア側に軍事侵攻の前から自制を求めてきたほか、軍事侵攻以降も市民の犠牲を食い止めるための人道的な停戦を繰り返し呼びかけてきました。
ゼレンスキー大統領 ロシア軍に徹底抗戦の構え示す
ウクライナのゼレンスキー大統領は、22日に公開した動画の中で「ウクライナ軍は、東部と南部でロシアの侵略者による攻撃を阻止し続けている。東部ハルキウ州のイジューム方面や、ドンバス地域、マリウポリなどはこの戦争の行く末と私たちの国の未来が決まる場所だ」と述べ、ロシア側が掌握したと宣言した東部の要衝マリウポリを含め、各地でロシア軍に徹底抗戦する構えを示しました。
そのうえで「軍に必要な武器を供給するのはわが国にとって最も重要な任務だ。私たちの声を聞き入れ、求めたものを提供してくれた、すべてのパートナーに感謝する。これらの武器によって何千もの人たちの命を救えると確信している。占領者たちに対し、ウクライナから立ち退きを迫られる日が近づいていると示すことができる」と述べ、各国からの軍事支援の意義を強調しました。
また、ゼレンスキー大統領は「ロシア軍の目的は、ウクライナ南部の支配を確立し、モルドバ国境に到達することだという報道が伝えられた。私がこれまで何回も言ってきたように、ロシアにとってウクライナへの侵攻は始まりにすぎず、彼らはこのあとほかの国々も占領しようとしている」と述べ、ロシアによる軍事侵攻をわがことと捉えるよう、国際社会に改めて警鐘を鳴らしました。
「ロシア 併合へ“住民投票”準備」 ウクライナ国防省報道官
ウクライナ国防省の報道官は22日「ロシア軍は、東部ドネツク州とルハンシク州の完全制圧と、南部クリミアからの陸上回廊の維持を目的に攻勢をかけている」という分析を明らかにしました。
そのうえで「ロシアは、南部へルソン州や南東部ザポリージャ州をロシアに併合しようと、いわゆる『住民投票』を準備している」と述べ、違法な手続きで領土を拡大しようとするロシアの動きに警戒を強めています。
ロシアは8年前、ウクライナ南部のクリミアに特殊部隊を派遣したあと、住民投票を一方的に実施し、その結果を併合の根拠としました。
「ロシア軍は東部で攻撃続ける」ウクライナの軍事専門家が予測
ウクライナの軍事専門家・ミハイロ・サモシ氏は、NHKのインタビューで「ウクライナ側の反撃を受けても、ロシア側は、国民向けに勝利したかのように見せるために、ウクライナ東部の支配を目指し攻撃を続けるだろう」として、今後、戦闘がさらに激化するとの見方を示しました。
サモシ氏は、プーチン大統領は、旧ソビエトが第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利した5月9日の「戦勝記念日」に向けて、国内向けに戦果を示す必要に迫られているとして「ウクライナ東部の支配を目指し、東部に戦力を集中するだろう。ただ、そのためには多くの兵力が必要で『戦勝記念日』を通して愛国心を高め、国民に自発的に戦闘に参加するよう求めるだろう」と述べました。
一方で、サモシ氏は「ロシアは兵力や軍用車両の損失にもかかわらず、大規模な部隊で攻撃を続けるだろうが、ウクライナ側は、極めて現代的であり、小規模な部隊が、機動性を発揮しながら、最新鋭の精密兵器で反撃することになる」と述べ、今後、戦闘がさらに激化するとの見方を示しました。
ロシア軍 1週間で1万6000人~2万人の部隊投入か 米国防総省分析
アメリカ国防総省は、ロシア軍が攻勢を強めるウクライナ東部などでの戦力の増強に向けて、地上部隊の投入を続けていると分析しています。
国防総省の高官は今月14日、侵攻開始から50日目の時点で、ウクライナ国内では合わせて65のロシア軍の部隊が確認され、東部と南部の地域に集中的に配置されていると指摘しました。
その後もロシア軍は主に東部に部隊の投入を続け、今月21日、侵攻開始から57日目の時点で、部隊の数は1週間前から20増えて85になったと明らかにしました。
アメリカ国防総省は、ロシア軍の部隊は800人から1000人の兵士で構成されているとしていて、1週間で合わせておよそ1万6000人から2万人の部隊が投入された計算になります。
アメリカ国防総省のカービー報道官は22日、記者会見で「ロシア軍はこの24時間の間にも部隊を追加し続けており、われわれはウクライナ側が戦闘に役立つとしているシステムや兵器の供与に集中している」と述べて、ウクライナ側がロシア軍に対抗できるよう軍事支援を続ける考えを強調しました。
マリウポリ近郊に別の集団墓地か
人工衛星を運用するアメリカの企業「マクサー・テクノロジーズ」は、22日、東部の要衝マリウポリの近郊で新たな集団墓地が見つかったとして、衛星画像を公開しました。
新たに公開されたのは、3月22日と29日、それに4月15日にマリウポリの東およそ12キロの場所を撮影した合わせて5枚の画像で、敷地の一角が掘られ、徐々に拡大していく様子が確認できます。
マリウポリ市議会は22日、SNSに投稿し、新たに見つかったとする集団墓地は「少なくとも1000人の市民の遺体を収容できる」と指摘していて、ウクライナ側はロシア軍が各地で多数の遺体を埋葬し、戦争犯罪を隠蔽しようとしているとして、非難を強めています。
モルドバ政府「南部完全掌握目指す」ロシア軍高官発言に懸念
ロシア軍の中央軍管区の高官がウクライナ南部の完全掌握を目指すなどと発言したことを受けて、モルドバ政府は22日、モルドバに駐在するロシア大使を呼び出し、深い懸念を表明しました。
ロシア軍の中央軍管区の高官は22日、ウクライナ南部の完全掌握を目指しているとしたうえで「沿ドニエストル地方に新たにアクセスする方法を得ることになる」と述べました。
沿ドニエストル地方はウクライナの西部国境に接し、1990年にモルドバから一方的に分離独立を宣言し、ロシア軍が駐留しています。
モルドバ政府は22日に発表した声明で「発言は根拠がなく、国際的に認められた国境内でのモルドバの主権と領土保全を支持するロシアの立場と矛盾している」と発言を批判しました。
そのうえで「モルドバは憲法にそって中立国であり、この原則はロシアを含むすべての国際社会によって尊重されなければならない」と、ロシア大使に懸念を示したとしています。
ロシア国防省 旗艦「モスクワ」沈没で死者や行方不明者を初公表
ロシア国防省は22日、今月14日に沈没したロシア黒海艦隊の旗艦「モスクワ」について、乗組員に死者や行方不明者がいることを初めて公表しました。
国防省の発表によりますと、巡洋艦「モスクワ」は今月13日に起きた火災によって艦内の弾薬が爆発して大破し、乗組員が消火を試みたものの、失敗したとしています。
その結果、兵士1人が死亡し、27人の行方が分からなくなっているということです。
また、残りの乗組員396人は別の船で避難し、ロシアが一方的に併合した南部クリミアの軍港セバストポリに戻ったと説明していて「死者や行方不明者の家族には必要な支援を行っている」としています。
ロシア国防省はこれまで「乗組員は完全に避難した」として、死者が出ているかどうかを明らかにしていませんでしたが、ヨーロッパやロシアを拠点とする独立系メディアは、数十人の死者が出ていると報じていて、国防省の発表を疑問視する声が広がっていました。
一方、「モスクワ」の沈没について、ウクライナ側は対艦ミサイル「ネプチューン」で攻撃したとし、アメリカ国防総省もウクライナ軍による攻撃を確認したとしていますが、今回の発表でもロシア国防省はウクライナ軍から攻撃を受けたかどうかは言及していません。
IAEAの専門家チーム チョルノービリ原発 来週訪問へ
ロシア軍に一時占拠されたウクライナ北部のチョルノービリ原子力発電所、ロシア語でチェルノブイリ原発をめぐり、IAEA=国際原子力機関は22日、グロッシ事務局長率いる専門家チームが26日から現地を訪れて安全の確保への支援を行うと明らかにしました。
26日は、36年前にチョルノービリ原発で史上最悪の事故が起きた日で、専門家チームは、原発に関わる重要な機器を届けるとともに、原発の状況の調査などを行うということです。
また、侵攻後に途絶えてしまった原発からIAEAの本部にデータを送るシステムの復旧作業にもあたるとしています。
チョルノービリ原発は、ことし2月にロシアの軍事侵攻が始まった直後から先月末までロシア軍に占拠され、IAEAは繰り返し原発の安全への懸念を示していました。
グロッシ事務局長は声明で「この2か月間、最悪のシナリオは避けられている。今後もその状況を続けるためさらに努力を重ねなければならない」と支援の必要性を強調しました。
台湾閣僚とキーウ市長がオンラインで会談
台湾の呉ショウ(※)燮外交部長が22日、ウクライナの首都キーウのクリチコ市長とオンラインで会談しました。
台湾側の発表によりますと、会談で呉外交部長は「ロシア軍の侵攻はウクライナの人たちに極めて大きな損害をもたらしただけでなく、国際秩序への深刻な脅威となっている」と非難しました。
そして「台湾は海峡の対岸の権威主義政権の重大な脅威に直面しているため、ウクライナの現在の境遇はひと事ではない」と述べ、中国への警戒感をあらわにしました。
そのうえで、ウクライナ国内の6か所の医療施設や首都キーウに合わせて800万ドル、日本円でおよそ10億円を提供すると表明しました。
これは今月1日までの1か月間、外交部の呼びかけに応じた台湾の人たちの寄付金およそ3300万ドルの一部で、クリチコ市長は「ウクライナの人たちは台湾の思いやりをいつまでも忘れないだろう」と感謝の気持ちを表したということです。
ウクライナは台湾と外交関係がなく、キーウには台湾の出先機関もありませんが、クリチコ市長は「戦争が終わったら呉部長をキーウに招待し、復興後の街を案内するのを楽しみにしている」と述べたということです。
※ショウは「かねへん」に「りっとう」。
EU ロシア首脳が電話で会談
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐって22日、EU=ヨーロッパ連合のミシェル大統領とロシアのプーチン大統領が電話で会談しました。
EU高官によりますと、会談はおよそ1時間半にわたって行われ、ミシェル大統領は正教会の復活祭に合わせて停戦を求めるとともに、マリウポリなどから市民が避難できるよう「人道回廊」の必要性も強調したということです。
また、ウクライナのゼレンスキー大統領から要請があったとして、プーチン大統領に対し、ゼレンスキー大統領と直接、対話するよう促したとしています。
ロシア大統領府によりますと、プーチン大統領は、首脳間の直接対話は停戦交渉の進展しだいだというこれまでの考えを改めて強調しました。
そして、ウクライナ側の姿勢には一貫性がなく、双方が受け入れられる解決策を模索する用意がないと批判したということです。
ウクライナ 2435人の市民が死亡 国連人権高等弁務官事務所
国連人権高等弁務官事務所は、ロシアによる軍事侵攻が始まったことし2月24日から今月21日までに、ウクライナで少なくとも2435人の市民が死亡したと発表しました。このうち184人は子どもだとしています。
地域別でみると、
▽キーウ州や東部のハルキウ州、北部のチェルニヒウ州、南部のヘルソン州などで1423人、
▽東部のドネツク州とルハンシク州で1012人の死亡が確認されているということです。
また、けがをした市民は2946人にのぼるとしています。
しかし、東部のマリウポリなどでの死傷者の数について、国連人権高等弁務官事務所は、集計が遅れていたり、確認がまだ取れていなかったりして、今回の統計には含まれていないとしていて、実際の死傷者の数はこれを大きく上回るとの見方を示しています。
ロシアの専門家「一日で自給自足に」
欧米などがロシアに科している厳しい経済制裁の影響について、イギリス在住でロシア経済が専門のアンドレイ・モフチャン氏はNHKのインタビューで「輸入に頼る分野で価格が上昇しているが、まだ限定的だ」と述べました。ただ「2、3か月後か、秋ごろには影響を感じられるようになる」と述べ、ロシアへの輸出規制によって今後、電化製品や自動車などの耐久消費財をはじめとした多くの製品の供給が途絶え、輸送コストの上昇も相まって価格の高騰を招くおそれがあると指摘しました。
また「さまざまな輸入部品や原料がなければ何も製造できない」と述べ、半導体や機械設備など、ロシアが輸入に頼っている製品が調達できないことで、ロシアの製造業に大きな影響が出るという見通しを示しました。こうした現状を踏まえモフチャン氏は「問題は、国際的な協力の枠組みの中で正常に発展させてきた国の経済を、たった一日で自給自足に変えてしまったことだ」と表現し、ロシア軍による侵攻開始を境にプーチン政権は、これまでの経済政策を大きく変更することを余儀なくされていると指摘しました。
一方、モフチャン氏は「ロシア経済にとって最も恐ろしいのは、ヨーロッパが『この供給国とは関係を持ってはいけない』と永遠に考えることだ」と述べ、ヨーロッパが、エネルギー分野でロシアへの依存から脱却を図る動きを進めることに強い危機感を示しました。
そして「いまロシアが軍を撤退させて『以前と同じようにしよう』と言ったとしても、もう元には戻せない」と述べ、プーチン政権と欧米との関係が回復できないレベルにまで悪化したことで、ロシアが経済の回復を目指す機会は、失われているという厳しい見方を示しました。
ロシア議会上院議長「くぎまで輸入品」が波紋
欧米などから経済制裁を科されるロシアで、プーチン大統領の側近で議会上院のマトビエンコ議長が「わが国では、これだけの金属を作りながら、くぎすら生産していない」と発言したことが波紋を広げています。
発言は今月13日の議会上院で、各国の輸出規制などを受けた対応を審議する中で出たもので、マトビエンコ議長は驚きの表情とともに「くぎまで輸入品だ」としたうえで「中小企業には、くぎを生産し、ロシア全土に供給するという課題を与える」と述べました。
そして「工作機械や電子機器など、重要な分野でも歯車が1つ足りないだけで生産を停止したところがある。われわれは今、『筋肉をつけて』より速く前へ進まなければならない」と危機感を表しました。
これに対してロシアの産業貿易省は「ロシアの企業は、くぎを十分に生産している」と反論しましたが、マトビエンコ議長はSNSで「華々しい発表をするよりも問題の分析に素早く取り組むべきだ」と批判しました。
中小企業の保護にあたる政府機関の代表が「課題を与える前に、国内で生産しても採算がとれるよう、条件を整備すべきだ」と発言するなど、くぎの生産をめぐって激しい議論になり、プーチン政権内で厳しい制裁に対するいらだちもうかがえます。
欧米側の制裁は失敗に終わったと、あくまで強気の姿勢を崩さないプーチン大統領は今月12日、ロシア極東で建設中の宇宙基地を訪れて新型ロケットの発射台などを視察し、ロシアは今も宇宙開発で世界をリードしているとアピールしました。
その翌日に飛び出した側近の発言を受けて、政権に批判的な風刺画家のヨルキン氏は、プーチン大統領が「ロケット!」と叫ぶ目の前で、マトビエンコ議長が「くぎ」とつぶやく風刺画を発表し、ロシアが置かれた現状をやゆしています。
経済制裁の中でロシア国民は…
欧米各国などがロシアに対して厳しい経済制裁を科す中、ロシア国内では、市民の間から生活への影響は限定的だという見方が示された一方、物価の上昇を懸念する声も聞かれました。
このうち、ロシア極東の中心都市ウラジオストクにある食料品などを扱う市場では、市民が商品を買い占めるなどの動きはないということです。
食料品店の店員は「商品の値段は一時とても上がりましたが、今は元に戻りました」と話し、パンの販売店の担当者も「値上げはしましたが、平均して4ルーブルから6ルーブル程度です。軍事作戦が始まった当初は少し不安がありましたが、いまは大丈夫です」と話していました。
買い物客の女性は「今は値上がりは感じません。今後も変わらないことを祈ります」と話していました。
一方、首都モスクワの中心部で市民に聞いたところ、20歳の女性は、「インフレの影響で、これまでよりずっと生活が苦しくなりました」と不満をもらしていました。
また、生活への影響について別の女性は、「マクドナルドがなくなり、うれしいです。子どもがフライドポテトではなく、私の手料理を食べるようになりました」と話すなど、外資系企業が相次いで撤退している影響はないと強調していました。
ただ、ロシア経済の専門家からは、ロシア政府がことしの経済成長率をマイナス10%程度、物価上昇率はおよそ20%に上るという見通しを示しているとして「かつてない危機だ」という見方が示されるなど、今後、市民の生活に影響が広がることも懸念されています。
トルコ大統領「交渉は進展している。希望は失っていない」
ロシアとウクライナの仲介を続けるトルコのエルドアン大統領は22日、記者団の取材に対し、停戦交渉の見通しについて「われわれの求めるレベルではないが進展している。希望は失っていない」と述べました。
そのうえで、一両日中にプーチン大統領とゼレンスキー大統領のそれぞれと電話会談する意向を示しました。
また、エルドアン大統領は、先月29日にイスタンブールで開かれた停戦交渉を引き合いに、双方の合意があれば、両国の大統領を招いた首脳会談の場を提供する考えを明らかにしました。
ウクライナ国防省「ロシアは帝国主義」
ロシア軍の中央軍管区の高官が22日、ウクライナ東部のドンバス地域と南部の完全掌握を目指すと述べたことに対して、ウクライナの国防省は反論のメッセージを22日、ツイッターに投稿しました。
この中で「略奪者たちは、作戦の第2段階の目的がウクライナの東部と南部を占領することだと、もはや隠しもせず認めた。これこそ、まさに帝国主義だ」として、支配地域のさらなる拡大をめざすロシアを非難しました。