【ロンドン時事】ウクライナ情勢に関するキッシンジャー元米国務長官の発言が、波紋を呼んでいる。「ウクライナは領土を割譲してでもロシアとの和平を追求すべきだ」という趣旨に受け止められ、ウクライナ側は猛反発している。
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キッシンジャー氏は23日、スイス東部ダボスで開かれている世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)にオンラインで参加。ウクライナ情勢について「今後2カ月以内に和平交渉を進めるべきだ」との見解を示すとともに、「理想的には、分割する線を戦争前の状態に戻すべきだ」と述べた。また「ロシアが中国との恒久的な同盟関係に追い込まれないようにすることが重要だ」と強調した。
この「戦争前の状態」という言葉が、ロシアが2014年に併合したウクライナ南部クリミア半島や、親ロ派勢力が支配する東部ドンバス地方の割譲を意味するとの受け止めが広がった。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、25日のビデオ演説で、キッシンジャー氏の発言に「『偉大な地政学者』は普通の人々の姿を見ようとしない」と反発。「彼らが和平という幻想との交換を提案する領土には、普通のウクライナ人が実際に住んでいる」と訴えた。
同国のクレバ外相もダボスでの記者会見で「この戦略は、14年から主要国が使ってきた。『譲歩しろ。そうすれば戦争を防ぐことができる』と。それは失敗した」と批判した。
キッシンジャー氏は27日で99歳。1970年代のニクソン、フォード両政権で国務長官を務め、冷戦下での米中接近を主導した。