ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交などウクライナ情勢をめぐる6月2日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)
前線のウクライナ兵 サッカーW杯プレーオフ観戦で歓喜
サッカーのワールドカップ、カタール大会への出場をかけたヨーロッパ予選のプレーオフで、1日、ウクライナの代表チームがスコットランドに勝利し、本大会出場まであと1勝となりました。
ウクライナ東部のハルキウ州では、ロシア軍との戦闘の前線にいるウクライナ兵たちが、スマートフォンでヨーロッパ予選のプレーオフを観戦し、ウクライナの代表選手たちを応援しました。
兵士たちは銃を身につけたまま試合を見守り、ウクライナ代表がゴールを決めると、大声を上げたりハイタッチしたりして、喜びをあらわにしていました。
兵士の1人は「ウクライナという国があり、独自の文化、言語、伝統があることを、世界の人たちはわかるだろう。ウクライナ精神とは何なのかも わかるだろう」と話していました。
プーチン大統領 10人以上の子持つ女性に一時金支給の制度復活へ
ロシアのプーチン大統領は、10人以上の子どもを持つ女性に「母親英雄」の称号を与える、ソビエト時代の制度を復活させる意向を示しました。
プーチン大統領は1日、オンライン形式の会議で「子どものいる家族を支援することは、ロシアにとって絶対的な優先事項だ」と述べました。
そして、10人以上の子どもを持つ女性を「母親英雄」として表彰し、100万ルーブル、日本円で200万円余りを支給することを提案しました。
ロシアのタス通信によりますと「母親英雄」は、第2次世界大戦中の1944年、旧ソビエトで人口を増やすために作られた制度だということです。
プーチン政権としては、子どもの多い家族に一時金を支給することで、大きな課題となっている人口減少を食い止めようとするねらいがあるとみられます。
南部ヘルソン州 インターネットなど通信が完全に遮断
ウクライナの通信当局は、5月31日、南部のヘルソン州で、ウクライナ側のインターネットサービスや携帯電話の通信が完全に遮断されたと、発表しました。
通信当局は、事業者から得た情報として「占領者側によって電源やケーブルの遮断が行われた」という見方を示しています。NHKでも5月31日、ヘルソンの市長にオンラインでの取材を行う予定でしたが、直前に連絡が取れなくなり、取材が実現しませんでした。
また、ヘルソン州では固定電話による国内外への通話もできなくなっているということです。ウクライナの通信当局は、ロシアが現地の住民に対しロシアの治安当局の管理下にある通信ネットワークを使用させ、支配の既成事実化を進めようとしているのではないかと指摘しています。
セベロドネツクのおよそ8割 ロシア軍掌握か
ロシア軍の攻勢についてルハンシク州のガイダイ知事は、1日、SNSの投稿の中で、セベロドネツクのおよそ8割がロシア軍に掌握されたという見方を示しました。
そのうえでガイダイ知事は「市街地での戦闘は続いており、一部では反撃に成功し、6人のロシア側の兵士を捕らえた」などとも投稿し、ウクライナ側も激しい抵抗を続けているとしています。最新の戦況地図はこちら
フィンランドとスウェーデンのNATO加盟に向け協議
NATOのストルテンベルグ事務総長とアメリカのブリンケン国務長官は、1日、ワシントンでウクライナ情勢などをめぐって意見を交わしたあと、そろって記者会見しました。
この中で、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟について、加盟国のトルコが、テロ組織として指定しているクルド人武装組織を両国が支援しているなどとして、難色を示す中、ストルテンベルグ事務総長は、近く、3か国の高官をベルギーのブリュッセルに招いて協議し、事態の打開を目指す考えを明らかにしました。そのうえで「われわれは前進できると確信している」と述べ、両国の加盟の実現に自信を示しました。
ドル建てロシア国債 「一部利子支払われず」との主張認める判断
世界の主要な金融機関の代表などでつくる「クレジットデリバティブ決定委員会」は、1日、4月4日に期限を迎えたドル建てのロシア国債をめぐって、「一部の利子が支払われていない」とする投資家の主張を認める判断をしました。
この国債の利払いや償還をめぐってはロシア政府がいったんルーブルでの支払いを宣言するなど、曲折があって支払いが遅れ、投資家は、支払いが遅れたことに伴う利子を受け取れると主張していました。
今回の判断によって、市場で、ロシア国債にデフォルト=債務不履行が起きたとみなされ、国際金融市場からロシアを締め出す動きを決定づける可能性があります。
へルソン州知事「州北部の20以上の地区が解放された」
ロシア軍が全域を掌握したと主張し、支配の既成事実化を進めるウクライナ南部のヘルソン州について、ウクライナの国営通信は、1日、州知事の話としてこれまでの反撃により州北部の20以上の地区が解放されたと伝えました。
これに先立ち、ウクライナの国営通信は5月30日にも、内務省の高官の話としてヘルソン州やザポリージャ州方面で、ウクライナ軍がロシア軍を8キロから10キロほど押し返したと伝えています。
ヘルソン州をめぐっては、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」も先月29日の分析で「ウクライナ軍がヘルソン州とミコライウ州との州境の近くで限定的に反撃に成功した」として、一部でウクライナ側が反撃しているという見方を示しています。
首都近郊の町 破壊された住宅再建の動き
ロシア軍によるウクライナ侵攻で多くの市民が殺害されているのが見つかったブチャなど首都近郊の町では、破壊された住宅を再建し元の日常を取り戻そうと住民たちが動き始めています。
首都キーウ近郊のブチャでは3月下旬にロシア軍が撤退したあと市長は400人以上の遺体が見つかったと明らかにしました。中心部の広場に面したビルでは1階の薬局がロシア軍の攻撃で焼け焦げたまま放置されていますが、レストランは2週間ほど前から営業を再開するなど住民の暮らしも少しずつ元に戻り始めています。
ブチャに近いブリスタビツァでは1日、キーウの建築士が被害を受けた住宅を訪れ、どのように修復できるのか、あるいは建て直すのか状況を確認していました。
建築士の訪問を受けたオレクサンドル・コロミーコさん(62)は2月26日にロシア軍の攻撃で自宅が焼け崩れ、家族は無事でしたが、その後は知り合いの家などで仮住まいを続けています。コロミーコさんは行政から住宅再建に向けた支援を受けるため、建築士に被害を受けたときの状況や今後の暮らしのめどなどについて説明していました。コロミーコさんは「私たちは家を追われてから各地を転々とし、今は近くの友人の家に一家4人で身を寄せています。この場所は私のすべてで早く戻ってきたい」と話していました。
町で住宅の再建に向けた支援を担当するナターリア・ビノゴロツカさんは「多くの住宅は被害がひどくすぐに修復できないのは明らかだ。資材が足りないなど課題はあるが、一刻も早く住む場所を確保してもらえるよう努めたい」と話していました。
ウクライナ国防省「敵は中心部に到達」
ウクライナ国防省のモツヤニク報道官は1日の会見で、東部ルハンシク州でのウクライナ側の最後の拠点とされるセベロドネツクの戦況について「状況は容易ではない。敵の部隊はすでにセベロドネツクに侵入している。市街戦が行われており、現在敵は中心部に到達し足場を得ようとしている」と述べました。そのうえでセベロドネツクではウクライナ当局が住民に対して街から出るよう呼びかけていて避難が続いているということです。
またロシア軍のねらいについては「主な目的はルハンシク州とドネツク州の行政境界線に到達し、一時的に占領するクリミア半島との陸の回廊を維持し、黒海の北西部で海上の交通路を封鎖することだ」と述べました。
米国防総省 “4両の高機動ロケット砲システム供与”
アメリカ国防総省は1日、ウクライナに対する最大7億ドル、日本円にしておよそ900億円の追加の軍事支援の内訳を発表しました。このうち精密な攻撃が可能だとされる兵器「高機動ロケット砲システム」について国防総省の高官は記者会見で、供与されるのは4両だとしたうえでウクライナ側に速やかに届けられるようすでにヨーロッパに搬入されていることを明らかにしました。
一方、この高官はウクライナ軍がこの兵器を使うためにはおよそ3週間の訓練が必要なことも明らかにし、戦地で使用されるまでにはまだ時間がかかるという認識を示しました。
ウクライナ軍事専門家 米の追加の軍事支援を評価
おととしまでウクライナの副国防相を務めた防衛戦略センターのアリーナ・フロロワ副所長は、ウクライナ軍のこれまでの戦い方について「NATO=北大西洋条約機構の持つ技術と戦術を用いて兵士の犠牲を減らしている。信じられないことを成し遂げている。私たちにとっては当たり前だが、市民の抵抗も大きく、欧米の国々は驚いている。今のところうまくいっている」と述べました。
そして、アメリカが精密な攻撃が可能だとされる「高機動ロケット砲システム」と呼ばれる兵器など追加の軍事支援を決めたことについて「今は、ロシア軍を攻撃するためには砲撃にさらされる距離まで近づかなければならない。今回供与される兵器はロシアのものよりずっと精密だ。一定の距離から標的に届く能力を得られる」と評価しました。
一方で「西側はまるでサラミを切り分けるように、少しずつ兵器を送ってくる。正しい決断をしてほしい」と述べ、欧米のいっそうの軍事支援に期待を示しました。
ウクライナ市民 少なくとも4149人死亡 うち267人は子ども 国連
国連人権高等弁務官事務所はロシアによる軍事侵攻が始まったことし2月24日から5月31日までに、ウクライナで少なくとも4149人の市民が死亡したと発表しました。このうち267人は子どもだとしています。
地域別では東部のドネツク州とルハンシク州で2371人、首都のあるキーウ州や東部ハルキウ州などそのほかの地域で1778人の死亡が確認されているということです。またけがをした市民は4945人に上るとしています。
ただ国連人権高等弁務官事務所は、激しい戦闘が続いた東部マリウポリなどでの死傷者についてはまだ確認が取れていないなどとして、実際の死傷者の数はこれを大きく上回るという見方を示しています。