円安の進行や物価上昇圧力に対応するため、日本銀行が年内に政策修正に踏み切るとみるエコノミストの割合が減っている。日銀が政策やコミュニケーションの調整に動く円安水準は1ドル=140円との見方が多い。
エコノミスト45人を対象に3-8日に実施した調査によると、日銀が年内に何らかの措置を強いられる可能性は「非常に高い」「高い」との回答が計26%と、前回4月の金融政策決定会合前の調査の45%から減少した。16、17日に開かれる会合については、政策の微調整を見込む1人を除く全員が現状維持を予想している。
調査リポート:日銀6月会合でほぼ全員が現状維持を予測
オックスフォード・エコノミクスの長井滋人在日代表は、「指し値オペの毎日実施まで踏み切った今、円安や長期金利上昇圧力のために現在のイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の枠組みの調整を行うことは考えにくい」とみている。
ただ、指し値オペを毎営業日実施する方針は、黒田総裁が任期満了を迎える来年4月までには取り下げられるとエコノミストの半数が見込んでいる。
外国為替市場ではドル・円相場が2002年2月以来の134円台を付けるなど、足元で再び円安が進行している。SMBC日興証券の森田長太郎チーフ金利ストラテジストは、今回会合での議論は「円安の実体経済、物価への影響が大きなウエートを占めることにはなるだろう」とみる。
政策やコミュニケーションの調整を日銀に促すと予想されるドル・円相場の水準を尋ねたところ、中央値は140円となった。政府が円買いの市場介入に踏み切る可能性に関しては、約9割が否定的にみている。
再加速する円安、財務相の発言上は「介入への距離」縮まらず-ガイド
黒田総裁は8日の衆院財務金融委員会で、「日本の家計が値上げを受け入れている」との6日の講演における発言について、「全く適切でなかったということで撤回する」と語った。「家計が値上げをやむを得ず受け入れていることは十分に認識している」とも述べた。
世論の批判の高まりを受けたものだが、東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは「発言が炎上し、謝罪に追い込まれた後だけに、現行政策の継続を主張する際の総裁の説明に変化が表れるかが注目される」としている。