ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交などウクライナ情勢をめぐる10日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ロシア市民 欧米の制裁「心配していない」6割超 独立系機関調査

民間の世論調査機関「レバダセンター」は、先月26日から31日にかけて、ロシア国内の18歳以上のあわせて1600人余りに対面形式で調査を行いました。
この中で「欧米の政治的・経済的な制裁を心配しているか」と質問したところ、「まったく心配していない」と答えた人が29%、「それほど心配していない」と答えた人が32%で、「制裁を心配していない」とする人の割合はあわせて61%に上りました。
一方、「心配だ」と答えた人は21%「非常に心配だ」と答えた人は17%で、「制裁が心配」とする人の割合は合わせて38%でした。
「レバダセンター」は、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めた2月24日からおよそ1か月後の3月下旬にも同様の調査を行っていましたが、この時は「心配していない」と答えた人が53%、「心配」と答えた人は46%でした。
それから2か月の間に「制裁を心配していない」とする人の割合が8ポイント増えたことについて「レバダセンター」は「制裁の最初のショックが過ぎたため」と分析しています。
また今回の調査で「制裁によって自分自身や家族に問題が起きたか」と尋ねたところ、「まったく問題はない」と答えた人と「深刻な問題はない」と答えた人の割合は、あわせて83%。「非常に深刻な問題が起きた」と答えた人と「十分に深刻な問題が起きた」と答えた人の割合は、合わせて16%でした。
さらに、どのような問題が起きたかという質問に対しては、「物価の上昇」と答えた人が最も多く、39%。次いで「商品の選択肢が減った。好きなブランドがなくなった」が19%。「クレジットカードが使えなくなった。インターネット上で決済できなくなった」が8%でした。
「レバダセンター」は2016年、プーチン政権によって、いわゆる「外国のスパイ」を意味する「外国の代理人」に指定され、圧力を受けながらも独自の世論調査や分析を続けています。

プーチン大統領 大帝とみずからを重ね合わせ侵攻正当化か

ロシアのプーチン大統領は9日、首都モスクワで若手の企業経営者などが参加する会議に出席しました。この中でことし生誕350年を迎えるロシアのピョートル大帝について「大帝は21年にわたり北方戦争でスウェーデンと戦った。しかしスウェーデンから何かを奪ったわけではなく取り返しただけだ」と述べました。そのうえで18世紀初頭の北方戦争の舞台で、現在はロシア第2の都市となったサンクトペテルブルクについて「そこでは何世紀にもわたってほかの民族とともにスラブ民族が暮らし、ロシア国家が支配していた。ピョートル大帝はもともとロシアの支配下にあった領土を奪還し、国を強くしたのだ」と述べました。ロシアでピョートル大帝は国の近代化を進め、大国の地位に押し上げた偉大な指導者とされ、プーチン大統領はこれまでも大帝の偉業をたたえてきました。
プーチン大統領としては戦闘の長期化に伴って反戦感情を抱く国民が増えると見られる中で、ピョートル大帝とみずからを重ね合わせることで、今回の軍事侵攻を歴史的な観点からも正当化するねらいとみられます。
一方、プーチン大統領は「すべての国家、すべての民族は主権を確保しなくてはならない。主権なき国家とはすなわち植民地だからだ」と述べ、ロシア国民に対して結束を呼びかけ、制裁を強化する欧米などに対抗していく姿勢を強調しました。

マリウポリ コレラ大流行の危険性ある 英国防省

イギリス国防省は10日、最新の分析を公表し「セベロドネツクの周辺では戦闘が続いているが、ロシアが目指すより広い地域の包囲に向けては進展がほとんど見られない」としています。
一方、ロシアが掌握したと主張している地域では飲料水や通信などの公共サービスの提供が滞っているということです。特に東部ドネツク州の要衝マリウポリでは「先月以降、コレラの発生が複数報告されていて大流行の危険性がある」としたうえで「医療は崩壊寸前で、コレラが大流行すれば状況はさらに悪化するだろう」と指摘しています。

米国務省“ロシアの軍事侵攻でウクライナの穀物生産力3割減”

アメリカ国務省で制裁を担当するオブライエン氏は9日、オンラインによる記者会見で「ロシア軍は穀物の貯蔵施設や加工施設を攻撃し、ウクライナの穀物生産力の30%余りを奪うなどした」と述べ、ロシアによる軍事侵攻でウクライナの穀物生産力は3割ほど減少したとの見方を示しました。そのうえで「ウクライナはこれまで1か月に600万トンの穀物を輸出してきたが、ことし3月の輸出量はおよそ20万トン、4月はおよそ60万トンだったと見られている」と述べ、ウクライナからの輸出が大幅に落ち込んでいると指摘しました。
また国務省で食料安全保障問題を担当するファウラー特使は「少なくとも2000万トンの穀物が貯蔵施設に置かれたまま持ち出すことができないでいる。食糧価格の高騰や供給の問題が発生し、まずアフリカに影響を及ぼすことになる」と述べ、強い懸念を示しました。

ウクライナ・アメリカ「ロシアが穀物を盗み取って販売」

ロシア軍に港を封鎖されウクライナの穀物の輸出ができなくなっているとして食糧危機への懸念が高まる中、ウクライナやアメリカは「ロシアがウクライナの穀物を盗み取って販売している」と批判しています。
アメリカのブリンケン国務長官は6日「ロシアが自国の利益のために販売する目的でウクライナの輸出用の穀物を盗み取っているという信用できる報道がある」と述べました。またウクライナの政府関係者がメディアに対して明らかにしたところによりますと、盗み取られたとする穀物は2014年にロシアが一方的に併合したクリミアの港からトルコやシリアに輸出され、このうちシリアに輸出された小麦の量は10万トンに上るということです。
こうした指摘をめぐっては8日、トルコの首都アンカラで開かれたロシアとトルコの外相会談後の共同記者会見で、ウクライナの記者がロシアのラブロフ外相を問い詰める一幕もありました。この中でウクライナの記者が「ウクライナから盗んだもので穀物以外には何を売ることができたのか」と質問したのに対し、ラブロフ外相は「穀物は目的地まで自由に輸送できるし、ロシアはなんの邪魔もしていない」と述べ、ウクライナ側の主張を否定しています。

ロシア軍に攻撃された穀物貯蔵ターミナルの衛星画像

人工衛星を運用するアメリカの企業「プラネット」が撮影したウクライナの南部ミコライウの衛星画像では、穀物貯蔵ターミナルがロシア軍によって攻撃される前後の様子がとらえられています。
ロシア軍の攻撃を受ける前の先月31日と今月7日に撮影された画像を比べると、7日の画像では港にある穀物貯蔵ターミナルが黒く焦げているような様子が確認できます。ミコライウ州の知事は8日「ロシアは世界を怖がらせるために食料と農業を標的に攻撃した」と批判しました。

ロシアへの追加制裁 貨物自動車やダンプカーなど輸出禁止

政府はロシアに対する追加の制裁措置としてトラックをはじめとする貨物自動車や建設機械などの輸出を今月17日から禁止することを決めました。
新たにロシア向け輸出の禁止措置の対象となるのはトラックやダンプカーといった貨物自動車のほか、ブルドーザーをはじめとする建設機械など合わせて67の品目です。政府は関連する政令の改正を10日の閣議で決定し、今月17日から輸出を禁止することにしています。日本からロシアへの輸出総額は去年はおよそ8600億円で、このうち今回の制裁で輸出禁止となる品目が占める割合は全体の5%に上るということです。
日本はこれまでも一般向けの半導体や高級車などについて輸出を禁止する措置をとっていて、萩生田経済産業大臣は閣議のあとの記者会見で「ウクライナをめぐる情勢を注視しつつ、G7をはじめとする国際社会と連携して厳しい制裁措置を講じていきたい」と述べました。

ゼレンスキー大統領「今は持ちこたえている」

ロシア国防省は9日、東部ルハンシク州の各地をミサイルで攻撃しウクライナ軍の指揮所や武器庫などを破壊したほか、ドネツク州ではスホイ25戦闘機を撃墜したと発表しました。
ウクライナのゼレンスキー大統領は9日、新たに動画を公開し「前線の状況に大きな変化はないが、セベロドネツクなどでは今は持ちこたえている」と述べ、徹底抗戦する姿勢を強調しました。ウクライナ側は反撃のためには一刻も早い追加の兵器供与が欠かせないと欧米各国に訴えています。

セベロドネツク 激しい市街戦に

ロシア国防省は9日、東部ルハンシク州の各地をミサイルで攻撃しウクライナ軍の指揮所や武器庫などを破壊したほか、ドネツク州ではスホイ25戦闘機を撃墜したと発表しました。
またウクライナ軍の参謀本部によりますと、激戦地となっているルハンシク州のセベロドネツクには9日、ロシア軍の歩兵部隊が投入され、激しい市街戦になったということです。

親ロシア派の武装勢力「外国人の捕虜3人に死刑判決」

ドネツク州の一部を事実上支配する親ロシア派の武装勢力は9日「外国人の捕虜3人に死刑判決を言い渡した」と発表しました。
ロシアのインターファクス通信によりますと、このうち2人はイギリス国籍の男性でことし4月中旬にドネツク州のマリウポリで捕虜となり、もう1人はモロッコ国籍の男性で3月中旬にドネツク州の別の街で捕虜になったということです。
親ロシア派の武装勢力は、3人はいずれも「金銭と引き換えに戦闘に加わる、よう兵だった」と一方的に発表していますが、ウクライナ外務省の報道官は地元メディアの取材に対して「ウクライナ軍の一員として戦うすべての外国人は、ウクライナ軍の兵士だ」と述べ、国際法に基づき捕虜としての権利が認められるべきだとしています。
イギリスのトラス外相は9日、ツイッターに投稿し「判決を全面的に非難する。彼らは戦争捕虜だ。これは正当性のない偽りの判決だ」として強く非難しました。

ゼレンスキー大統領 “砲撃で国土と河川が汚染されるおそれ”

ウクライナのゼレンスキー大統領は9日、パリで開かれているOECD=経済協力開発機構の閣僚理事会にオンラインで参加し、ロシア軍が炭鉱や化学工場が集中する東部地方を激しく砲撃していることでウクライナの国土と河川が汚染されるおそれがあると非難しました。
ゼレンスキー大統領は演説で「東部のドンバス地域は世界有数の工業地帯で多くの炭鉱や化学工場などが集中している。ロシアの攻撃はウクライナの国土を汚染し、地下水や河川を汚染する」と述べ、工場の破壊などによって黒海やアゾフ海に深刻な水質汚染を引き起こす懸念があると指摘しました。
また黒海に面した港をロシア軍に封鎖され穀物が輸出できなくなっていると述べ、世界の何億人もの人々が食料不足と飢餓の危機にひんしている責任はすべてロシアが背負うべきだと主張しました。

ウクライナ国防相 欧米各国供与の兵器などについて投稿

ウクライナのレズニコフ国防相は9日、自身のフェイスブックで、これまでにアメリカやフランス、それにポーランドから敵の陣地を砲撃するための自走式のりゅう弾砲を受け取ったほか、兵員を運ぶ装甲車など軍用車両およそ250両、それに対戦車ミサイル「ジャベリン」など数千基の携行型の兵器が供与されたと投稿しました。
また数百機の無人機、ドローンを受け取ったとしたうえで今後はより強力な攻撃型のドローンの供与に期待を示しました。
レズニコフ国防相は各国の軍事支援に感謝の意を示す一方で「兵器供与のスピードや量には満足していない」として、反転攻勢を実現するための追加の兵器供与を急ぐよう欧米各国に訴えました。

インフラ被害総額1039億ドル(8日時点)キーウの大学まとめ

ロシアの軍事侵攻によるウクライナ国内のインフラへの被害総額は8日の時点で1039億ドル、日本円にしておよそ14兆円に上るとする推計をウクライナの首都キーウにある大学がまとめました。
9日に発表された報告書によりますと、被害額の内訳は
▽住宅がおよそ393億ドル
▽道路がおよそ300億ドル
▽企業や工場がおよそ114億ドル
▽民間の空港施設がおよそ68億ドル
▽鉄道の駅や車両がおよそ26億ドルなどとなっています。
一方で、医療機関や学校などへの攻撃も相次いでいるとしたうえで、その被害額は
▽医療機関がおよそ11億ドル
▽教育機関がおよそ16億ドル
▽幼稚園がおよそ5億ドルに上るとしています。

日本が国連安保理の非常任理事国に当選 加盟国中最多の12回目

国連安全保障理事会の来年から2年間の非常任理事国を決める選挙が国連総会で行われ、日本が加盟国の中で最も多い12回目の当選を果たしました。
国連の安全保障理事会はアメリカや中国など5つの常任理事国と、任期が2年で地域別に割り当てられた10の非常任理事国で構成され、このうち非常任理事国は毎年5か国ずつ改選されます。
国連総会では9日、来年1月から2年間の非常任理事国を決める選挙が行われ、それぞれの地域から立候補した日本、スイス、マルタ、エクアドル、モザンビークがいずれも当選に必要な3分の2以上の票を得て選出されました。日本が非常任理事国になるのは2016年から17年までの2年間以来、12回目で、国連加盟国の中で最も多くなります。
安保理ではことし2月、ロシアに対してウクライナからの軍の即時撤退などを求めた決議案がロシア自身の拒否権によって否決されるなど、安保理が機能不全に陥っているという批判が高まっています。
非常任理事国として最も多くの経験を持つ日本が世界各地の紛争などへの対応に加え、安保理の権威や信頼の回復に向けどのような役割を果たしていけるのか注目されます。