ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交などウクライナ情勢をめぐる11日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

イギリスが戦況分析「ロシアは高精度のミサイル不足」

イギリス国防省は11日に公表した戦況分析で「セベロドネツク周辺のロシア軍は10日現在、市の南部には前進していない。激しい市街戦で、双方に多数の死傷者が出ているもようだ」と指摘しました。

またロシア軍が使うミサイルについて「4月以降、ロシアの爆撃機は1960年代の対艦ミサイルを数十発、地上の標的に向けて発射したようだ。通常弾頭を使って地上を攻撃すると、精度が非常に低くなり、重大な巻き添えの被害や民間人の死傷者が出るおそれがある」としています。

そのうえで「ロシアがこのような効果的ではない兵器を当てにするのは、より精度の高い攻撃ができる現代的なミサイルが不足しているためだろう」と分析しています。

穀物輸出できず 食糧危機懸念高まる

ウクライナ南部の港湾都市、オデーサのトゥルハノフ市長は10日、NHKのインタビューで、港がロシア軍に封鎖され、穀物が輸出できない状況だとしたうえで「ロシアの艦船が黒海に展開していることは、オデーサが危険地帯であり、攻撃が行われる可能性があるということだ」と述べ、ロシア軍の攻撃に備えることが最優先だと強調しました。

国連のWFP=世界食糧計画のビーズリー事務局長は8日、SNSに投稿した動画の中で「ウクライナは世界の重要な穀倉地帯だが、市場から消えたことで国境を越えて影響が広がり、食料不足や価格の高騰などがアフリカや中東などで起きている」と述べ、具体的に小麦や小麦粉の値段は、レバノンで47%、リビアで15%、上昇していると指摘しました。

そのうえで「今すぐ行動をしないと大きな代償を払うことになる」と述べ、黒海の港からの輸出の再開や国際社会による資金支援などが必要だと訴えました。

WFP事務局長「新たに4700万人が深刻な飢餓に陥る可能性」

国連のWFP=世界食糧計画のビーズリー事務局長は、8日にSNSに投稿した動画の中で「ウクライナは世界の重要な穀倉地帯であり、4億人以上に十分な食料を供給している。しかし市場から消えたことで国境を越えて影響が広がり、食料不足や価格の高騰などがアフリカや中東、地中海周辺の国で起きている」と述べ、具体的に小麦や小麦粉の値段は、レバノンで47%、リビアで15%、パレスチナで14%上昇していると指摘しました。
そのうえで「私たちの分析では、ウクライナでの戦争によって世界で新たに4700万人が深刻な飢餓に陥るだろう。ここ数週間の間でも、ペルーやパキスタン、インドネシア、スリランカで食料の価格上昇を引き金に社会不安が起きている。今すぐ行動をしないと大きな代償を払うことになる」と述べ、黒海の港からの輸出の再開や国際社会による資金支援などが必要だと訴えました。

ロシア黒海艦隊に巡航ミサイル搭載の潜水艦

ウクライナ軍の報道官は10日、SNSに投稿した動画で「ロシアの黒海艦隊に、巡航ミサイルを積んだ潜水艦1隻が新たに加わった。ウクライナは、40発もの巡航ミサイルが撃ち込まれる脅威にさらされている」と述べ、ロシア海軍の動きに警戒感を示しました。

ウクライナ軍によりますと、ロシア海軍は、黒海の北西部でウクライナの船舶の航行を妨害しているほか揚陸艇1隻を配置しているということで、引き続き、海上での優勢を確保するねらいがあるとみられます。

また、ウクライナ南部に侵攻したロシア軍の地上部隊の動きについて「一時的に占領した土地や道路、橋などに次々と地雷を仕掛けている」と非難しました。

米 “南部ヘルソン州で約600人が特別な地下室内で拘束の情報”

OSCE=ヨーロッパ安全保障協力機構を担当するアメリカのカーペンター大使は10日、オンラインによる記者会見で、ウクライナ南部のヘルソン州について「われわれが把握している情報では、およそ600人が特別な地下室に拘束されている。州政府の建物や学校だという詳細な場所の情報もある」と述べロシア軍が、掌握したとされる地域で多くの住民たちを拘束していると指摘しました。
そして「拘束されているのは、民主的に選ばれた議員やジャーナリスト、社会活動家、それにロシアの占領に反対する集会に何らかの形で参加したと見なされた人たちだ」と述べ、反対派の抑え込みがねらいだと強調しました。
さらに「ロシアの治安機関は威圧や脅迫、拘束、さらには、親族を拉致すると脅したり、賄賂を使ったりして、地方の政治家などを取り込もうとしている」と述べロシアが将来的にこの地域を併合することも視野に、かいらいの行政府をつくろうとしているとして警鐘を鳴らしました。

オデーサの海岸では「注意・地雷」の警告も

南部オデーサでは中心部のいたるところに設置されていたバリケードの多くが、ロシア軍が東部に戦力を集中して以降撤去され、公園で家族連れがくつろぐ姿も目立ちます。
ただ「黒海の真珠」と呼ばれる国内有数のリゾート地を訪れる観光客は激減し、多くのホテルや飲食店が営業を停止しています。
また市庁舎や劇場の周辺などには土のうが積まれているほか、港や、観光名所として知られる「ポチョムキンの階段」など海に面した地域の多くは住宅がある人以外は立ち入りが禁止され、検問所が設けられています。
ウクライナ軍の兵士が警戒にあたり、撮影も厳しく禁じられています。
例年、この時期は海水浴客でにぎわうビーチも立ち入りが禁止され、ウクライナ語とロシア語で「注意・地雷」と警告するなど、特に海岸線でウクライナ軍がロシア軍の侵攻に備えて警戒を強めていることがうかがえます。

オデーサの市長 穀物を輸出できない状況に支援訴え

ウクライナ南部の港湾都市オデーサのトゥルハノフ市長が10日、NHKのインタビューに応じ、港がロシア軍によって封鎖され、穀物が輸出できない状況について「穀物を輸入する国々にとって、ウクライナにとって、世界にとって悲劇的な状況だ」と訴えました。
そのうえで「ロシアの艦船が黒海に展開していることは、オデーサが危険地帯にあることを示しており、オデーサへの攻撃が行われる可能性がある。船の航行よりもまず、国の安全を確保することに関心を寄せている」と述べ、ロシア軍の攻撃に備えることが最優先だと強調しました。
さらに、こうした状況を打開するためには、NATO=北大西洋条約機構が艦船を派遣して防衛にあたるか、ロシア側からオデーサの安全について確約を得なければならないとしたうえで「それが早ければ早いほど、ウクライナの穀物輸出の再開も早くなるだろう」と述べ、国際社会に支援を訴えました。