【ソウル時事】韓国の尹錫悦政権が、北朝鮮との融和政策を進めた文在寅前政権の追及を本格化させた。情報機関の国家情報院(国情院)は6日、2020年に黄海で漂流中の韓国公務員が北朝鮮に射殺された事件などに絡み、文政権で国情院長を務めた2人を刑事告発し、検察が捜査に着手した。政府機関が自らのかつてのトップを告発するのは極めて異例だ。
告発されたのは、北朝鮮との秘密接触の窓口になり、18年の平昌冬季五輪での金与正朝鮮労働党第1副部長(当時)らの訪韓、その後の南北首脳会談の実現に貢献した徐薫氏と同氏の後任、朴智元氏。徐氏は19年に韓国への亡命を希望した北朝鮮漁民の調査を短期間で打ち切って北朝鮮に送り返した疑いがある。朴氏には、公務員射殺事件で、政権の意に沿わない情報をもみ消した疑いが持たれている。
与党関係者は「尹政権は、前政権が北朝鮮に屈従的だったと強く問題視している」と指摘。「国情院が独断で告発できるわけはなく、大統領府の意向を受けたものだ。確実な証拠をつかんでいるはずだ」と語る。大統領府関係者は「北朝鮮の立場を考慮して人権が侵害されたなら、重大な国家犯罪だ。検察の捜査を鋭意注視している」と述べた。
今回の動きは、尹政権が国情院を自由に操れるようにするために、文政権に忠実だった幹部を一掃する一環とも指摘される。既に国情院の事実上のナンバー2である企画調整室長に、尹大統領の古くからの腹心である元検事を任命。報道によると、国情院幹部27人が尹政権発足後に職務から外され、北朝鮮との不適切な接触や機密情報の流出がなかったかなどについて監察が行われているという。
一方、文政権を支えた野党「共に民主党」は「(捜査の)最終目標は文前大統領とみざるを得ない。そうなれば決して座視しない」と反発している。