東京電力福島第一原発事故をめぐり、東電の株主48人が旧経営陣5人に対し、「津波対策を怠り、会社に巨額の損害を与えた」として22兆円を東電に賠償するよう求めた株主代表訴訟の判決が13日、東京地裁であった。朝倉佳秀裁判長は、巨大津波を予見できたのに対策を「先送り」して事故を招いたと認定。取締役としての注意義務を怠ったとして、勝俣恒久元会長ら4人に連帯して13兆3210億円を支払うよう命じた。

 他に賠償を命じられたのは清水正孝元社長、武黒一郎元副社長、武藤栄元副社長で、国内の民事裁判で出た過去最高の賠償額とみられる。小森明生元常務の賠償責任は否定された。

 判決はまず、原発事故が起きれば「国土の広範な地域、国民全体に甚大な被害を及ぼし、我が国の崩壊にもつながりかねない」と指摘。原子力事業者には「最新の知見に基づき、万が一にも事故を防止すべき社会的・公益的義務がある」と明示した。

 焦点となった、国が2002年に公表した地震予測「長期評価」には「相応の科学的な信頼性があった」と認定した。これを元に東電子会社が08年に計算した最大15・7メートルの津波予測の信頼性も認めた。

 そのうえで、東電の原発部門「原子力・立地本部」の副本部長だった武藤氏が08年7月、計算結果の妥当性の検討を土木学会に委ねて対策を講じなかったことを「不作為」とみなし、「津波対策の先送りであり、著しく不合理で許されない」と指摘した。本部長だった武黒氏は、翌8月に武藤氏の不作為を「是認した」と判断した。

 勝俣、清水両氏については、09年2月の「御前会議」での議論で「14メートル程度の津波の可能性」を聞いており、「対策を講じない原子力・立地本部の判断に不合理な点がないか確認すべき義務があったのに、怠った」と指摘した。

 さらに、主要な建屋や機器の浸水対策(水密化)をすれば事故は回避でき、その工事は2年ほどで完了できたと指摘。小森氏を除く4人は、11年3月の事故の2年以上前から任務を怠っており、事故発生との因果関係があると認定した。

 東電が被った損害とされた約13兆3千億円の内訳は①廃炉が約1兆6千億円②被災者への賠償が約7兆1千億円③除染・中間貯蔵対策が約4兆6千億円。

 勝俣、清水両氏は代理人を通じて「判決内容を精査できていないのでコメントは差し控える」とした。(田中恭太)