岸田文雄首相は14日夕に会見し、電力需給が再び逼迫する恐れがあるこの冬は、原子力発電所を最大9基稼働させる方針を示した。火力発電の供給能力も、追加で10基を目指して確保するよう指示したことも明らかにした。また、参院選中に銃撃されて死亡した安倍晋三元首相の葬儀を、今年の秋に国葬の形式で行うと発表した。
<サハリン2、権益・安定供給確保に官民一体で>
岸田首相は、原発9基を稼働することで全国の消費量の1割当たる電力を確保すると説明。火力発電を追加稼働することで、「ピーク時に余裕を持って安定供給できる水準を目指す」と語った。「この冬のみならず、将来にわたって電力の安定供給が確保できるよう取り組むとした。
原発再稼働は「国が前面に立ち、立地自治体など関係者の理解を得られるように粘り強く取り組む」と述べた。
ロシアが事業主体を自国企業に変更する方針を示している石油・天然ガス開発事業「サハリン2」については「余談を許さない」としつつ、「ロシアの脅しに屈せず毅然と対応する」と強調。サハリン2は「日本の電力・ガスの安定供給に重要なプロジェクト」であり、「権益と安定供給を確保するため、官民一体で取り組む」と述べた。
液化天然ガス(LNG)の供給が万が一滞った場合に備え「事業者間の融通促進など、さらなる対応を考える」とした。一方、都市ガスの需給は逼迫しておらず、「節ガスをお願いする状況ではない」とも指摘した。
エネルギーと食料品の価格高騰対策については「早急に実行に移す。迅速に支援を届ける」と述べ、予備費支出を早期に実行する方針も示した。
再び感染者が急増している新型コロナウイルスについては「(水際)対策を強化するということは具体的に考えていないが、今後の状況は注視していきたい」と述べた。60歳以上などに限定しているワクチンの4回目接種は、対象を全ての医療従事者と高齢者施設の従事者など約800万人に拡大するとし「速やかに接種を進める」方針を示した。
<安倍元首相、今秋国葬へ>
岸田首相は8日に死亡した安倍元首相の葬儀を国葬の形で葬儀を行うことを明らかにし、「元総理を追悼するとともに、わが国は暴力に屈せず民主主義を断固として守り抜くという決意を示す」と述べた。
首相は安倍氏について、在任期間が憲政史上最長の8年8カ月にわたり、東日本大震災からの復興や日本経済の再生、日米関係を基軸とした外交の展開で実績を残したと指摘。「外国の首脳を含む国際社会から極めて高い評価を受けている」、「突然の蛮行で逝去されたことに対して、国の内外から幅広く哀悼や追悼の意が寄せられている」と国葬を行う理由を説明した。
岸田首相は安倍氏が狙撃された際の警備体制にも触れ、「率直に言って問題があった」と語った。
(竹本能文 編集:田中志保、久保信博)