サマーズ元米財務長官は、約40年ぶりの高インフレを鈍化させるのに必要な利上げ幅について、金融当局は依然として「希望的観測」を抱いているとの見解を示した。
サマーズ氏はブルームバーグテレビジョンの番組で、連邦準備制度理事会(FRB)議長である「ジェイ・パウエル氏は分析的に考えて擁護不可能なことを言っているというのが、私の率直な考えだ」とし、「経済がこのように膨張している状況で2.5%という政策金利が中立だとするのは考えられないことだ」と述べた。
サマーズ氏のこの発言は、パウエル議長が27日、今回の利上げにより政策金利は既に「中立」水準に達したと評価したことに言及したもの。中立金利とは、景気を加速も減速もさせない理論上の水準。パウエル氏は金融政策について、中立を超えて「少なくとも適度に抑制的な水準にする必要があると、金融当局はおおむね感じている」とも述べた。
政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は現在2.25-2.5%。サマーズ氏は、中立金利はこれを上回る水準になると指摘。インフレの現状を考慮する必要があるためだと説明した。29日発表された6月の米個人消費支出(PCE)統計によると、金融当局が注目するインフレ指標であるPCE価格指数は、食品とエネルギーを除いたコアが前年同月比4.8%上昇となった。
米金融当局は市場の想定よりさらに利上げへ-ダドリー前NY連銀総裁
ハーバード大学教授でブルームバーグテレビジョンの寄稿者でもあるサマーズ氏は、パウエル氏が2018年遅く、インフレ率が2%を若干下回る水準だった時に、政策金利が中立に達したと述べたことに言及。「インフレ率が現在のような水準にある中で、どうやったら当時と同じことが言えるのだろうか。私には説明不可能だ」と語った。
「現時点で中立だと考えるのであれば、政策姿勢に関して根本的に誤った判断をしていることになる」とし、「(インフレに関して)『一過性』との言葉を用いて現在われわれが抱えている問題をもたらしたのと同じような希望的観測だ」と指摘した。
原題:Summers Says Powell’s Call on Neutral Fed Rate ‘Indefensible’(抜粋)