日野の排ガス・燃費不正、03年規制車から 国交省立ち入り検査へ<ロイター日本語版>2022年8月2日4:18 午後

[東京 2日 ロイター] – 日野自動車のエンジンの排出ガスと燃費性能に関する不正問題を調査してきた外部の弁護士らによる特別調査委員会(榊原一夫委員長)は2日、排出ガス関連で2003年規制以降の幅広い車種において劣化耐久試験で不正行為があったと発表した。

車両は規制前に販売が許可される認証を取得するため、委員会は規制が実施された03年10月よりも前から不正行為があったとみており、約20年にわたり不正が行われていたことになる。

日野は3月の不正公表時には、16年秋以降に試験を実施したトラック・バス8車種について排出ガスや燃費試験の不正があったと説明していたが、不正を行っていた時期や範囲が広がった。

調査委によると、燃費関連でも05年の規制以降、主に大型エンジンで不正行為が判明した。三菱自動車の燃費不正発覚に伴い、国土交通省から16年の認証取得時、排出ガス・燃費試験での不適切事案の有無を報告するよう求められた際、日野は虚偽の報告をしていた。

今回の特別調査委の調査対象は国内市場向けに限定し、各国法規が異なる海外市場向けは日野が調査を継続する。

日野は同日午後、報告書を国土交通省に提出・報告。不正の範囲拡大を受け、国交省は日野への立ち入り検査を再実施する。同省によると、公表済み分を含め、現行生産エンジン14機種のうち12機種に排出ガス長距離耐久試験の不正が判明。このうち4機種(うち建設機械等用3機種)は基準に適合しておらず、8機種(うち建設機械等用4機種)は基準に適合していた。

日野は基準不適合車の生産を自主的に停止したが、同省は基準適合車についても出荷停止を日野に要請した。基準不適合のエンジンを搭載した車両をリコール(回収・無償修理)することも指導した。リコール対象台数は約2万0900台。

榊原委員長は会見で、経営層が不正を認識していた「証拠は見つかっていない」とも述べた。不正行為の真因については、1)車を皆でつくっていない、2)世の中の変化に取り残されている、3)業務をマネジメントする仕組みが軽視されていた――の3点を挙げた。

1点目は、組織が縦割りで「部分最適の発想にとらわれ、全体最適を追求できていない」と説明。自由闊達に議論がなされず、開発能力などに関して「現場と経営陣の認識に断絶がある」とも指摘した。2点目は「過去の成功体験にとらわれ、変化することや自らを客観視することができていなかった」といい、「上意下達の気風が強く、風通しの悪い組織となっていた」とした。3点目は役員と現場との間に適切な権限分配がなされていなかったなどとした。

会見に同席した島本誠委員(ヤマハ発動機顧問)も、エンジンの技術力がないから不正に至ったというよりも、開発のプロセスやマネジメントの課題が大きく、一定程度のパワハラもあったとの認識を示した。

榊原委員長はまた、トヨタ自動車との関連で、直接的に影響した事案には接していないとしつつも、親会社であるという安心感や危機感の薄さなどが、不正の背景として間接的に影響したかもしれないとも語った。日野は販売不振で経営危機に陥り、トヨタが01年に出資比率を36.6%から50.1%に引き上げ子会社化。以降、トヨタは日野に社長を送り込んでおり、日野生え抜きの下義生氏も一時はトヨタ常務役員だった。

委員会による会見後、日野の小木曽聡社長が会見し、自身の経営責任について「調査報告書の内容を精査し、責任の所在を見極める」とし、過去の経営者とともに厳正にしっかり対応を検討していきたいと述べた。トヨタの豊田章男社長も今回の不正について「すべてのステークホルダー(利害関係者)の信頼を裏切るものであり大変遺憾」とコメントした。小木曽社長が会見の席上、メッセージを代読した。

日野は3月、不正の一部を公表し、エンジン4種類とそれを搭載した8車種のトラック・バスについて、国交省から型式指定を取り消される初の処分を受けた。実際は排ガスの規制値を超えていたにもかかわらず、規制をクリアしたような意図的な不正を行っていたほか、実際よりも燃費の値をよく見せようとデータを改ざんしていた。

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