[ニューヨーク 8日 ロイター] – 米上院が7日可決した4300億ドル規模の歳出・歳入法案について、市場関係者は企業利益を小幅に押し下げ、自社株買いラッシュを引き起こす可能性を指摘する。一方、電気自動車(EV)やバイオ燃料、太陽光エネルギーなど一部のセクターには追い風になるとみられる。
法案は自社株買いへの課税や大企業への15%最低税率導入が盛り込まれた。下院も12日に可決すると見込まれており、バイデン大統領の署名を経て成立する。税制変更は来年から適用される。
ゴールドマン・サックスはリサーチノートで、この2つの税制変更によりS&P総合500種構成企業の2023年の1株利益は約1.5%押し下げられると推計。ヘルスケアやIT(情報技術)など実効税率の低いセクターでは、より大きな減少要因になるとした。
一部の市場関係者は企業の自社株買いラッシュが起きると予想する。
グレートヒル・キャピタルのトーマス・ヘイズ会長は「企業はできれば税金を払いたくないし、払わずに済む機会があるのだから確実に活用するだろう」として、年末までに自社株買いが加速すると見込んだ。
インガルズ&スナイダーのシニアポートフォリオストラテジスト、ティム・グリスキー氏は、株式市場は6月半ばの安値から反発する局面にあり、自社株買いラッシュは追加の支援材料になり得ると述べた。
一方、トキービル・アセット・マネジメントのポートフォリオ・マネージャー、ジョン・ぺトライズ氏は、法人増税が「雇用意欲を減退させ、自動化関連の設備投資拡大につながる可能性がある」とした。
<自動車株上昇>
一方、一部のセクターは上院の法案可決を好感して8日に上昇。電気自動車(EV)大手テスラ 、リビアン・オートモーティブ 、フォード・モーター 、ゼネラル・モーターズ(GM) 、ロードスタウン・モーターズなど自動車株が3─6%台の上昇を記録した。
法案は中古EVに対する4000ドルの新たな税額控除や、EV生産の資金支援が含まれた。
ヘイズ氏はEV関連の補助金や普及促進策によってフォードやGM、テスラの受注が増えると予想。また、バイオテクノロジーや製薬会社の株価は、法案が「薬価交渉に言及し、当初予想されたよりも厄介ではなかった」ため不透明感が晴れて反発するはずだと述べた。
チェイス・インベストメント・カウンセルのプレジデント、ピーター・トゥズ氏は薬価引き下げは時間をかけて段階的に導入され、一部の薬にしか影響しないので、医療業界にとってわずかなマイナスでしかないと分析した。