10日、米ニューヨークで車に乗り込む前に手を振るトランプ前米大統領(AFP時事)
10日、米ニューヨークで車に乗り込む前に手を振るトランプ前米大統領(AFP時事)

 【ワシントン時事】2024年米大統領選に出馬意欲を示すトランプ前大統領に司直の手が伸びている。米連邦捜査局(FBI)は8日、トランプ前大統領の邸宅「マールアラーゴ」を家宅捜索。起訴され、有罪となった場合に立候補は可能なのか。米法律専門家の間でも意見は分かれる。

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 FBIや司法省は捜索に関する説明を行っておらず、捜索対象や罪状は不明だ。米メディアによると、大統領在任中の機密を含む公文書をトランプ氏が持ち出した疑惑に関する捜索とされ、捜査の結果、不起訴となる可能性もある。

 「ウォーターゲート事件」後に制定された大統領記録法は、大統領に在任中の記録を保存し、退任時に国立公文書館へ移管するよう義務付けている。公文書館は1月、トランプ氏が持ち出した15箱分の公文書を回収したが、当局は他にも資料を隠しているとみて強制捜査に踏み切ったもようだ。ワシントン・ポスト紙は、今回新たに12箱ほどの資料が押収されたと報じた。

 仮に公文書持ち出しに関する罪で有罪になれば、どうなるのか。米連邦法は、政府の文書を「故意かつ違法」に隠したり損壊したりした場合、「2000ドル以下の罰金、3年以下の禁錮刑またはその両方」が科され、「合衆国の公職に就く資格を失う」と規定している。

 ただ、この規定に基づき大統領選への出馬資格が剥奪されるかは議論がある。ニューヨーク・タイムズ紙は法学者の意見として、過去の最高裁判例から大統領の出馬資格を決めるのは憲法であり、議会や連邦法がそれを変えることはできないとする見方を紹介した。

 合衆国憲法は、大統領立候補について「米国生まれ」「35歳以上」「米国に14年以上居住」という三つの条件しか記していない。
 もっとも、トランプ氏は公文書持ち出し以外に、昨年1月の連邦議会襲撃事件への関与や、一族企業による脱税など別の疑惑も持たれている。今回の捜索が入り口となり、他の捜査が進展するとみる向きもある。