お盆休みに台風襲来と、今年の夏も異常気象に翻弄された人が多かっただろう。そんな身近な話題を吹き飛ばすような大ニュースが飛び込んできた。トランプ前大統領の邸宅「マールアラーゴ」にF B Iが強制捜査に入ったというのだ。米国では一体何が起こっているのだろうか。驚くと同時に米国はこれから大混乱に突入するような予感が先走った。罪状はスパイ活動防止法や政府記録の秘匿や損傷、破壊に関する法律など3点に対する違反容疑。捜査令状が公開されそこに記されていた容疑である。スパイ防止法違反が立証されれば、最長で20年の禁固刑が課される可能性がある。トランプ大統領は強制捜査の際にF B Iが証拠を「仕込んだ」などと反論しているようだが、論拠が薄弱な上にあまりにも稚拙な反撃だ。中間選挙まで3カ月を切っている。共和党が圧倒的に優勢と見られていた選挙情勢に雪崩のような大変化が起きる可能性もある。さすがのトランプ氏もこれで万事休すか・・・。

メディアの報道を斜めに見ているだけだが、トランプ前大統領に対する支持率は依然として他を圧倒しているように見える。中間選挙に向けた候補者の動静をみても、予備選挙を勝ち抜いた共和党候補の大半がトランプ氏の支持や推薦を得ている。民主党のバイデン大統領の人気が一向に盛り上がらないことも手伝って、3カ月後に迫った中間選挙は共和党の圧倒的な勝利を予想する向きが多い。そんな情勢をひっくり返そうとしたかのようにF B Iは「マールアラーゴ」に強制捜査に入った。確か米国では選挙の時にブラックアウト期間が設定されており、選挙までに3カ月を切ると捜査当局は政治家に対する強制捜査が禁止される。これが事実だとすれば今回のF B Iによる強制捜査はギリギリのタイミングを狙ったことになる。米国に限らず世界中どこでも、政治家に対する強制捜査は“政治的”な匂いがする。まして民主党寄りのF B Iだ。トランプ潰しの狙いが見え見えの捜査でもある。

F B I以上に反トランプ色を鮮明にしているのがメディアだ。米国の大半のメディアは2016年の大統領選挙の時から、トランプ大統領の存在そのものを否定的に扱ってきた。別にトランプ氏を擁護するつもりはない。ただ、次のことだけは指摘しておきたい。F B Iとメディアが組めば鬼に金棒だ。連日トランプ氏に不利な情報が次から次へと報道されている。かくして“トランプ有罪”の世論はまるで当たり前のように形成されていく。真実はわからない。トランプ氏は明らかに有罪かもしれない。ネットには親トランプ派の不確かな情報も溢れている。そんな中に「オバマ大統領は2000枚の秘密文書を持ち出していた」というのがあった。根拠のない不確かな情報に関心を寄せること自体が親トランプ派的なのかもしれない。知りたいのは歴代の米大統領で秘密文書を持ち出したのは、トランプ氏ただ一人だけか、ということだ。歴代大統領が日常的に秘密文書を持ち出していたとすれば、事態は果てしなく混迷する。