【ニューヨーク時事】ニューヨークの国連本部で開かれていた核拡散防止条約(NPT)再検討会議は最終日の26日、最終文書案にロシアが反対し、決裂して閉幕した。2015年の前回会議に続く土壇場の不採択。2月にウクライナ侵攻を開始したロシアが核兵器使用をちらつかせる中、核軍縮への道筋を一致して示すことはできなかった。
2回連続の決裂は、NPTが1970年に発効して以来初めて。半世紀以上にわたり核軍縮・不拡散をめぐる議論の中核となってきたNPT体制への信頼が大きく揺らぐ結果となった。
「たった一つの加盟国から異議があった」。予定より約4時間半遅れの26日夜(日本時間27日朝)に始まった最後の全体会合。各国代表団が待ちわびる中、スラウビネン議長はこう報告した。続いてロシア代表が文書案は「あからさまに政治的だ」と批判。「残念ながらこの文書案にはコンセンサスがない」と述べ、決裂が決まった。
会議は1日に開幕。ウクライナ侵攻をめぐるロシアと米欧の対立や、オーストラリアの原子力潜水艦導入に向けた米英豪の枠組み「AUKUS(オーカス)」への中国の反対、核兵器保有国と非保有国の溝など、争点は多岐にわたった。
各国は週末も使ってぎりぎりの交渉を続けた。保有国に核兵器の「先制不使用」政策採用を促す記述を文書の草案から削除する一方、非保有国が推進する核兵器禁止条約への言及を弱めながらも残すなど妥協点を模索した。
スラウビネン氏が25日深夜にまとめた最終文書案は、ロシア軍が占拠したウクライナのザポロジエ原発での軍事活動に「重大な懸念」を表明しつつ、ロシアを名指しする文言は削除し、ロシアに配慮を見せた。一方で、核保有国に対し、ウクライナの核放棄と引き換えに同国の安全を米英ロが保障すると約束した1994年の「ブダペスト覚書」を順守するよう求めていた。
最終文書案は「合意間近」(中満泉国連事務次長)だったが、外交筋によると、ロシアは26日になって同意できないとスラウビネン氏に伝達。同氏は採択のために開く最後の全体会合の開始を遅らせ、最後の瞬間まで合意形成を目指したが、ロシアは譲らなかった。
再検討会議は当初、20年春に開催される予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で繰り返し延期された。次回は26年にニューヨークで開かれることが決まった。