[ロンドン 21日 ロイター] – ロシアのプーチン大統領は21日、軍の部分動員令に署名したと明らかにした。動員令は第2次世界大戦以来で即日適用される。西側が「核の脅し」を続けるなら、ロシアは兵力の全てを用いて対応すると警告した。
国民に向けたテレビ演説で「わが国の領土保全が脅かされるなら、われわれの市民を守るためにあらゆる手段を用いる。これは脅しではない」と述べた。
複数の北大西洋条約機構(NATO)加盟国の高官がロシアに対し核兵器を使用する可能性を示したと主張、西側による「核の脅し」を批判した。
またロシアの占領下にあるザポリージャ原子力発電所に対するウクライナ軍の砲撃を許すことで、西側諸国は「核の破滅」の危険を冒していると非難した。
また、自身はロシアの領土を防衛していると発言。西側諸国はロシアの破滅を望んでいるとも述べた。
「西側の攻撃的な反ロシア政策は、あらゆる一線を超えている」とし「核兵器でわれわれを脅迫しようとしている人々は、風向きが変わり得ることを知るべきだ」と語った。
プーチン氏の演説はロシア軍がウクライナ北東部で決定的な敗北を喫した後に行われた。北大西洋条約機構(NATO)とロシアが直接軍事衝突するリスクを高めることで、欧米がウクライナへの支援から手を引くことを期待したものだ。
<新ロシア派支配地域の併合>
動員令は徴兵ではなく、軍務経験者全員が対象となる。ショイグ国防相は30万人が召集されるとの見通しを示した。学生は含まれず、ウクライナへ送られる前に訓練を受けると説明した。動員は前線の背後あるロシア支配下の領土を「強化」するのに貢献すると述べた。
ウクライナ東・南部の親ロシア派支配地域やロシア軍の占領地域は20日、ロシアへの編入の是非を問う住民投票を23─27日に実施すると表明した。
プーチン氏は「ドネツク、ルハンスク、ザポリージャ、ケルソンの住民の大多数による将来に関する決定を支持する」と明言した。
「(ロシアに)近い人々を処刑人に引き渡す道徳的な権利はわれわれにはない。自らの運命を決めたいという心からの願いに応えるしかない」と述べた。ウクライナの領土の約15%に相当する同地域の正式なロシア併合に道を開くことになる。
ウクライナ東部ドンバス地域の「解放」を目指しているとし、ロシアの支配下にある地域の大半の住民はウクライナによる支配を望んでいないと主張した。
ウクライナの領土を正式に併合することで、プーチン氏は核兵器を使用するための口実を得る可能性がある。
ロシアの核ドクトリンは、大量破壊兵器が使用された場合か、ロシアが通常兵器による存亡の危機に直面した場合に核兵器を使用することができるとしている。
プーチン氏は「世界の支配を目論む者たち、祖国を解体し奴隷にしようとする者たちを阻止することは、われわれの歴史的伝統であり民族の宿命だ」強調。「今それを行う」と述べて国民の支持を訴えた。
<ロシア軍の死者>
ショイグ氏はまた侵攻開始以来、ロシア軍の死者が5937人になったと明らかにした。ロシア軍が戦闘で大きな損失を受けたとの見方を否定し、負傷兵の90%が前線に戻ったと述べた。
ロシアが公式に死者数を公表するのは3月25日以来。その時点では1351人としていた。
米国防総省は7月、ロシア軍の死者は約1万5000人に上るとの見方を示している。8月には7万─8万人の死傷者が出ているとの推計を示した。