[東京/モスクワ 23日 ロイター] – トヨタ自動車は23日、ロシアのサンクトペテルブルク工場での生産事業を終了すると発表した。日本の自動車メーカーでロシアからの生産撤退方針を明らかにしたのは初めて。生産終了に伴い、現地での新車販売も打ち切る。
ロシアによるウクライナ侵攻後、部品調達が難しくなり、トヨタは3月4日に同工場の稼働を停止していた。侵攻の長期化で生産再開が見通せないため、現状のままでは従業員にも十分な支援ができなくなると判断した。
従業員には退職金の上乗せ支給や再就職支援を実施する。従業員数は同工場とモスクワ販売拠点の500人を含む計2350人。工場停止以降も従業員には給料を支払い続けてきた。トヨタとともにロシアに進出していた日系部品メーカーや、現地の取引先に対しても支援する方針。現地で新車販売は行わないが、車の保有者にはロシア国内で部品が入手できるアフターサービス事業を続ける。
長田准執行役員は同日、オンラインで取材に応じ、現地法人は譲渡や売却をせずに清算すると説明した。このタイミングで生産終了を決めた背景については「キャッシュがなくなってからでは従業員に退職の支援ができなくなる」とし、「現地通貨のルーブルがまだある今のタイミングで手厚く報いたい」と述べた。ロシアの予備役動員に伴う影響は「全くない」と否定した。
トヨタは2007年からロシアでの生産を開始。サンクトペテルブルク工場ではロシア国内向けにスポーツ多目的車(SUV)「RAV4」とセダン「カムリ」を手掛け、年間生産能力は10万台。21年には約8万台を生産した。長田氏は、RAV4やカムリの購入者は高所得者が多く、「収益貢献としては台数以上に高い事業だった」と述べた。
ロシア産業貿易省も同日、トヨタが同国内の工場閉鎖を決定したと発表した。ディーラー網は維持するとしている。また、同省および地方当局が工場のある場所の開発に向けた検討を進めていると説明した。
日本の自動車メーカーではマツダや三菱自動車が現地での生産を休止。日産自動車は9月末までとしていたサンクトペテルブルク工場の稼働停止を12月末まで延長することを決めているが、撤退の判断については明らかにしていない。