Rich Miller
- 仮想通貨やテクノロジー株、住宅価格が軒並み下落
- 資産デフレは経済のソフトランディング実現に寄与する可能性
米金融当局は高水準のインフレを引き下げることに、これまでのところあまり成功していない。だが、その金融引き締め策は、新型コロナ禍で膨張した資産バブルの縮小に大きな効果を発揮している。
暗号資産(仮想通貨)市場は一時、時価総額が3兆ドル(約410兆円)に上っていたが、今では3分の2以上縮小した。投資家が好むテクノロジー株は50%余り下落し、高騰していた住宅価格はこの10年で初めて下げている。
最も重要かつ意外なのは、これら全てが金融システムに大打撃を与えることなく起きていることだ。
ハーバード大学教授のジェレミー・スタイン氏は「驚くべきことだ」とし、「1年前に『0.75ポイントの利上げが何度も行われることになる』と言ったら、『頭がおかしいんじゃないか。金融システムを壊してしまう』という話になっていただろう」と述べた。同氏は2012年から14年に、米連邦準備制度理事会(FRB)理事として金融安定に関する問題に取り組んだ経歴を持つ。
米金融当局者は、資産バブルに対処するために金融政策を用いることを長い間避けてきた。そうした狙いで行うには、政策金利引き上げは経済全般に作用し過ぎるとの主張だ。しかし、現在の資産デフレは、パウエルFRB議長らが求める経済のソフトランディング(軟着陸)実現に寄与する可能性がある。
より広範囲に金融危機が起きる可能性は排除できない。それでも現在の情勢は、米国の不動産バブルが崩壊し深刻な景気悪化を引き起こした07年から09年にかけての状況とは好対照だ。テクノロジー株が大きく売り込まれ、比較的浅いリセッション(景気後退)に陥った01年当時とも異なる。
原題:Fed Gets a Win Deflating Asset Bubbles Without Financial Crash(抜粋)