[ストックホルム 10日 ロイター] – 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は10日、政治的影響からのFRBの独立性がインフレとの戦う能力の中核と強調した上で、気候変動など、議会が定めた権限を超える問題に関与すべきではないという見解を示した。

パウエル議長はスウェーデン中銀主催の中央銀行の独立性に関するイベントで「高インフレ時に物価安定を回復するには、景気を減速させるために金利を引き上げるという短期的には不人気な措置も必要となる。われわれの決定に対する直接的な政治的抑制がないため、短期的な政治的要因を考慮せず、こうした必要な措置を取ることが可能となる」と述べた。

FRBは「自らの責務に専念すべき」で、「付与された目標や権限と密接に関連しない社会的利益を追求するために軌道から外れるべきではない」とも指摘。「いかに価値のある目標であっても、明確な法的権限のないまま新たな目標を引き受ければ、われわれの独立性を損なうことになる」と強調した。

その上で「明確な議会立法がなければ、FRBの金融政策もしくは監督ツールを用いて、グリーンな経済を促進し、気候に関する他の目標を達成することは不適切だろう」と指摘。FRBには金融機関が気候変動から直面するリスクを「適切に管理する」ことを確実にするという「限られた」監督権限があるとしつつも、「われわれは気候変動に関する政策担当者ではなく、そうなるつもりもない」と言明した。

気候変動に直接対処する政策の決定は選挙で選ばれた政府部門が行うべきという考えも示した。

さらに、FRBはインフレと需要に対応するという中核的な責務に絡む権限を維持するために「ふさわしい」行動を取る必要があるとし、「具体的な責務でなければ、先走るべきではない」と強調した。

気候変動に関するFRBの役割は限定的というパウエル議長の見解は目新しいものではないが、グリーン経済への取り組みを政策決定に組み込んでいる欧州の主要中銀などとは対照的で、米国における政治的分裂を浮き彫りにしている。