岸田文雄首相=国会内で2023年1月27日午後1時22分、竹内幹撮影
岸田文雄首相=国会内で2023年1月27日午後1時22分、竹内幹撮影

 年明けに「異次元の少子化対策」を掲げた岸田文雄首相から、早くも「異次元」との言葉が聞かれなくなった。23日の施政方針演説で用いた言葉は「次元の異なる少子化対策」。意味は同じだが「よりマイルド」(元官僚)な表現だ。その背景には、対策の優先順位を巡る悩みがあるようだ。

「異次元」→「次元の異なる」

 「社会全体で子育てを応援するような、次元の異なる少子化対策を実現したい」。首相は23日召集の通常国会で与野党議員から「異次元」の意味を問われるたびに、こうした答弁を繰り返している。

 「異次元の少子化対策」は、首相が4日の年頭記者会見で初めて打ち出したフレーズだ。今年「挑戦する」課題として「全力で取り組む」と表明。①児童手当を中心とした経済的支援の強化②全ての子育て家庭を対象としたサービス拡充③働き方改革の推進――を対策の3本柱にするとした。

 首相は2022年から「将来的な子ども予算の倍増」を掲げてきたが、日銀の「異次元金融緩和」を連想させる表現への反響は大きかった。ワイドショーを含む各種メディアで取り上げられ、少子化対策への関心は一気に高まった。

 政府は22年末、増税を含む防衛費増額方針や原発推進といった政策転換を決め、賛否両論を巻き起こした。誰もが重要性を理解する少子化対策への意気込みを示すことで、世論の関心を防衛や原発からそらす狙いもあったとみられる。

微妙な修正、その背景は

 ところが、首相は5日の経済界や連合との会合で同様の表現を…