[ロンドン 2日 ロイター] – イングランド銀行(英中央銀行)は2日、政策金利を0.5%ポイント引き上げ4.0%とした。10会合連続の利上げで2008年以来の高水準となった。世界的にインフレは高止まりしているものの、英国を含め多くの先進国でピークに達した可能性があると指摘した。

0.5%の利上げは7対2で決定。市場も0.5%利上げを予想していた。

中銀は、2021年12月からの一連の利上げが経済に一段と影響を及ぼしていると見られると指摘。これによりインフレ率は年末までに4%程度に下がるとし、2023年のインフレ率予想を従来の5%前後から引き下げた。

声明では「より持続的圧力の証拠が出れば、金融政策の一段の引き締めが必要になる」と指摘。前回の「一段のインフレ圧力の兆候に対し必要に応じて強力に対応する」、「一段の利上げが必要になる可能性がある」から修正し、積極的な利上げサイクルが終了に向かっている可能性を示唆した。

ベイリー総裁は「昨年11月の金融政策報告以降、インフレが曲がり角を迎えた初期の兆候が見られている」と述べた。ただ「勝利を宣言するには早すぎる。インフレ圧力はまだ残っている」とし、中銀金融政策委員会(MPC)は、インフレが後退していると「絶対的に確信」する必要があると述べた。

中銀は英経済について、なおリセッション(景気後退)に向かっているが、エネルギー価格の下落や市場金利予想の低下で昨年11月の想定より「かなり浅く」なる可能性があると指摘。

23年の国内総生産(GDP)は0.5%減と、昨年11月(1.5%減)から上方修正した。リセッションの期間の予想は8四半期から5四半期に短縮し、リセッション中のGDP下押しは3%程度から1%弱に修正した。

インフレ率は市場金利などに基づき23年第4・四半期までに3.92%に低下すると予想。昨年11月の予想は5.2%だった。その後24年第2・四半期には2%目標を下回るとの見通しを示した。ただ上振れリスクも同時に指摘した。

中銀は、労働力不足や企業投資の低迷、生産性の伸び鈍化を踏まえると、インフレを加速させずに達成できる経済成長率は短期的に年間0.7%程度にとどまると予想。新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的大流行)前は、潜在成長率は1.7%程度と見なされていた。

今回の下方修正を踏まえると、中銀は英経済は25年以降までパンデミック前の規模を下回ると見なしていることになる。

中銀の発表を受け、市場が予想するターミナルレート(利上げの最終的な到達点)は4.25%と、従来の4.5%から低下。

ICAEWのエコノミクスディレクター、スレン・シル氏は「インフレの大幅な低下が予想されていることを踏まえると、今回の0.50%の利上げがこの幅での最後の引き締めになる」との見方を示した。同時に「英経済が景気後退(リセッション)に陥れば、予想より早く政策の転換を迫られる可能性もある」と述べた。

コロンビア・スレッドニードル・インベストメンツの債券ポートフォリオマネジャー、アレクサンダー・バッテン氏は、直近のデータでは労働市場の大幅な軟化が示唆されているが、今回の引き締めサイクルで最後となり得る「3月の0.25%利上げを阻むほど早く弱体化しないかもしれない」とした。

EY・ITEMクラブのエコノミスト、マーティン・ベック氏は、経済の見通しが弱いことから、英中銀の金利はおそらくピークに達しており、年内に利下げが実施される可能性があるとした。

一方、英中銀のブロードベント副総裁は記者団に対し、英国のインフレが曲がり角を迎えように見えるが、それは政策金利がピークに達したという主旨の発言ではないと強調した。