【ニューデリー時事】インドの巨大新興財閥アダニ・グループが不正疑惑に揺れている。投資会社が指摘した1月下旬以降、傘下企業の株価が暴落。グループの時価総額は約半分になり、中核会社が公募増資を撤回する事態に発展した。
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中核会社アダニ・エンタープライゼズの株価は3日、一時35%下落した。地元紙エコノミック・タイムズによると、傘下10社の時価総額のうち、これまでに約10兆ルピー(約16兆円)が消失した。
発端は、米投資会社ヒンデンブルグ・リサーチが1月24日に公表した報告書。グループが数十年にわたって傘下企業の株価を不正につり上げたり、タックスヘイブン(租税回避地)に設けたペーパーカンパニーを悪用して会計操作を行ったりしてきたと主張した。ヒンデンブルグは、企業の不正会計などを調査し、空売りを仕掛ける手法で知られる。
アダニは「虚偽以外の何物でもない」と全面否定したが影響は収まらず、エンタープライゼズは今月1日、予定していた2000億ルピー(約3180億円)の公募増資の撤回に追い込まれた。グループを率いるゴータム・アダニ会長は「潜在的損失から投資家を守るため」と説明。
「将来の計画に何ら影響を与えない。バランスシートも健全だ」などと沈静化を図った。
アダニを巡る混乱がインドの金融システム全体に波及することを懸念する声も上がっている。インド準備銀行(中央銀行)は3日、「銀行部門は弾力的で、安定性を維持している」との声明を発表。懸念払拭(ふっしょく)に追われた。
議会では野党が疑惑の調査を求め、審議が紛糾した。一代でグループを築いたアダニ会長はモディ首相との親密な関係が取り沙汰され、「政商」との批判も付きまとう。アダニに向けられる視線は厳しさを増している。