[13日 ロイター] – 国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は、2024年パリ五輪にロシアとベラルーシの選手が参加する道を開いたことを巡り、正当性を主張した。

IOCは先月、両国の選手について国旗や国歌を持たない中立の立場で参加できる可能性を示したことで、反発を受けた。

ウクライナの選手団はバッハ氏に宛てた書簡で、「(IOCは)歴史の間違った側にいる」と訴えていた。

バッハ氏は12日、IOCは歴史の間違った側にいるのかと記者団に尋ねられ、「いや、歴史は誰が平和のためにもっと努力しているかを示すだろう」と回答。「われわれは対立を深めるのではなく、団結させるというスポーツの使命にふさわしい解決策を見いだそうとしている」と語った。

▽パリ五輪、ロシア参加認めるIOCを欧州各国が批判 「自分たちは正しい」とバッハ会長<BBC日本語版>2023年2月14日

画像説明,国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長。2013年から現職にある

来年フランス・パリで開催予定のオリンピックが、ロシアのウクライナ侵攻の影響で大きく揺れている。ウクライナは先月、ロシアとベラルーシの選手が出場するならボイコットすると表明。国際オリンピック委員会(IOC)は考え直すよう求めているが、ウクライナを支持する国が増えている。そうしたなか、IOCのトーマス・バッハ会長は12日、自分たちは間違っていないと主張した。

IOCは1月、ロシアとベラルーシ選手のパリ五輪への出場について、国を代表しない中立の立場を条件に認めることを示唆。「どんな選手もパスポートを理由に出場が妨げられてはならない」とした。現在も、両国選手の参加への「道を探っている」としている。

一方、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシアとベラルーシ選手の参加を認めるのは「テロ行為の容認」に等しいと反発。パリ五輪のボイコットを示唆している。

そうしたなか、バッハIOC会長は今月9日、ウクライナのオリンピック委員会に書簡を送り、パリ五輪ボイコットの主張を取り下げるよう要求。ヴァディム・フトツァイト青年・スポーツ相に、同国の脅しは「極めて遺憾だ」と伝えた。

バッハ氏また、ロシアとベラルーシ選手の出場についてIOCは「まだ具体的に」協議していないと説明。ウクライナがボイコットをちらつかせるのは「早計だ」と付け加えた。

<関連記事>

この動きに対し、陸上競技団体「ウクライナのためのアスリート」と「グローバル・アスリート」は共同声明で、IOCが「ロシアの残忍な戦争とウクライナ侵攻を支持している」と批判。

ラトヴィア、リトアニア、エストニア、ポーランドの各国も今月、ロシアとベラルーシ選手の参加に反対を表明。さらに、デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンの各オリンピック委員会が続いた。

「間違っていない」とバッハ会長

IOCへの批判が高まるなか、バッハ会長は12日、アルペンスキーの世界選手権の会場で記者団に対し選手の参加に関して各国政府に決定権を与えれば、「今のかたちの国際スポーツ大会とオリンピックは終わる」と述べた。

IOCが間違っている可能性はないかと尋ねられると、バッハ氏は「ない。私たちはスポーツの使命にふさわしい解決策を見つけようとしている。対立を深めるのではなく、団結させるものだ」、「より平和に貢献しているのは誰なのか、歴史が証明する」とした。

また、ウクライナ選手たちに対し、「IOCは完全に連帯し、すべての発言を極めて真剣に考慮するので、安心してほしい」と訴えた。

バッハ氏はさらに、ウクライナ選手の反応や苦しみを理解を示した上で、「それでも選手の参加に関しては、私たちは平和の使命を達成しなければならない。人々を団結させる使命だ」と述べた。

一方、ロシアのオレグ・マティツィン・スポーツ相も11日、同国選手の出場を禁止する動きは受け入れられないと、ロシアのタス通信に述べた。

「私たちがいま目にしているのは、国際スポーツと国際オリンピック運動の団結を破壊し、スポーツを政治問題の解決の圧力手段にしようとする、あからさまな欲望だ」

ウクライナ選手たちの反対

ウクライナの多くのスポーツ選手が、ロシアとベラルーシ選手のパリ五輪参加に反対している。

ボクシングの元オリンピック選手で現世界ヘビー級王者のオレクサンドル・ウシク氏や、テニスの東京五輪銅メダリストのエリナ・スヴィトリナ氏なども、反対の声を上げている。

スピードクライミングで五輪メダル有力候補のダニール・ボルディレフ氏は、パートナーの陸上選手アリナ・ログヴィネンコ氏の自宅がロケット弾で破壊されたとしている。ログヴィネンコ氏は、2012年ロンドン五輪の4×400メートルリレーで銅メダルを獲得した。

ボルディレフ氏は11日、BBCラジオの番組で、「私たちは政治家ではなく、スポーツをしているだけなのに、家や友人を失っている」と話し、次のように続けた。

「オリンピックは重要だが、ウクライナで起きていることの方がもっと重要だ」

「世界のどこであろうと戦争は望まない。でも戦争は起きており、そのさなかに、どの大会であってもロシア選手の姿は見たくない」

パリ市長も一転して反対に

ポーランドのスポーツ・観光相は、最大40カ国がパリ五輪をボイコットする可能性があり、大会が「無意味」になる恐れがあるとしている。

パリのアンヌ・イダルゴ市長は、ロシア選手のパリ五輪参加について、以前の姿勢を転換。ウクライナでの戦争が続く間は、参加を望まないとしている。

(英語記事 IOC not on wrong side of history – president Bach