シリアのアサド大統領(左)とエジプトのシュクリ外相(右)=2月27日、ダマスカス(シリア大統領府が通信アプリ「テレグラム」に掲載)(AFP時事)
シリアのアサド大統領(左)とエジプトのシュクリ外相(右)=2月27日、ダマスカス(シリア大統領府が通信アプリ「テレグラム」に掲載)(AFP時事)

 【カイロ時事】トルコ南部で2月6日に発生した地震で大きな被害が出たシリアに、アラブ諸国が接近する動きが相次いでいる。シリアのアサド政権は、2011年に始まった内戦を受け外交面で孤立したが、アラブ諸国側は被災地支援を通じ、関係修復の糸口をつかもうとしている。

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 地震発生後、アラブ首長国連邦(UAE)やエジプトの首脳がアサド大統領との電話会談で支援を表明。UAEやサウジアラビアなど、内戦当初にシリア反体制派を支援した国も援助を実施した。シリア国営通信は連日のように、アラブの各国からの救援物資到着を報じている。

 外交面では、チュニジアが2月9日、シリアとの関係強化を決定。エジプトは12年ぶりに外相が27日、シリアを訪問してアサド氏に「連帯」の意思を伝え、「雪解け」を演出した。

 サウジのファイサル外相は18日、シリア孤立化の取り組みについて「機能していないという意見が、アラブ諸国で大きくなっている」と強調。「どこかの時点で」対話が必要だと説明した。

 アラブ連盟(21カ国・1機構)は11年、シリア内戦で政権側が反体制派を弾圧したとして、連盟参加資格を停止した。アサド政権はイランと関係が深く、イランと敵対する国々は反体制派に肩入れ。シリアとアラブ諸国との亀裂が深まった。

 イスラム過激派の台頭もあり一時は劣勢だったアサド政権だが、ロシアが15年に軍事介入すると形勢が逆転。政権側が軍事的勝利を固める中、アラブ諸国にシリアとの関係改善の流れが生まれだした。

 エジプト政治専門誌「バダエル」のサフィナズ・アフマド編集長は、周辺国にとっても脅威だった過激派を結果的に抑え込めたことで、「安全保障上の安定」を優先したアラブ諸国がアサド政権側に傾いたと指摘。周辺国に逃れたシリア難民の問題解決、シリアに対するイランの影響力抑制、政治・経済分野での地位向上などさまざまな思惑が絡む中、関係改善の道を探っていた国々にとって、地震が「アサド政権に接近する好機」となったと語った。