[東京 10日 ロイター] – 日銀は9―10日に開いた金融政策決定会合で金融政策の現状維持を全員一致で決めた。マイナス金利、10年物国債金利の誘導目標ゼロ%をいずれも維持し、10年物国債金利の変動幅もプラスマイナス0.5%で据え置いた。
黒田東彦総裁にとって、今回の決定会合が任期満了前最後の会合となる。市場では長期金利の変動幅再拡大など政策修正への思惑がくすぶっていたが、日銀は金融政策を維持した。
<先行き指針も維持>
短期金利は、引き続き日銀当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%の金利を適用。長期金利は、10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買い入れを行う。
日銀は10年物国債0.5%での指し値オペを「明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日実施する」と改めて表明した。金融市場調節方針と整合的なイールドカーブ形成を促すため、大規模な国債買い入れを続け、各年限で機動的に買い入れ額の増額や指し値オペを実施する。
長期国債以外の買い入れ方針も全員一致で現状維持を決めた。上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(REIT)はそれぞれ年間約12兆円、年間約1800億円に相当する残高増加ペースを上限に必要に応じて買い入れを行う。
CP(コマーシャルペーパー)等は約2兆円の残高を維持する。社債は新型コロナ感染症拡大前と同程度のペースで買い入れを行い、買い入れ残高を感染拡大前の水準である3兆円へと徐々に戻していくが、買い入れ残高の調整は「社債の発行環境に十分配慮して進める」とした。
金融政策の先行き指針も維持した。当面は新型コロナ感染症の影響を注視し、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば躊躇(ちゅうちょ)なく追加緩和を講じるとした。政策金利は、現在の長短金利の水準またはそれを下回る水準で推移すると想定していると改めて声明に盛り込んだ。
日銀は2%の物価安定目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで長短金利操作付き量的・質的金融緩和を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで拡大方針を継続するとした。
<生産・輸出の判断弱める>
国内景気の現状については、新型コロナ感染症の抑制と経済活動の両立が進むもとで「持ち直している」とし、前回の判断を維持した。ただ、生産・輸出については、供給制約の影響緩和に支えられて「横ばい圏内の動き」とし、前回の「基調として増加」から表現を弱めた。
物価の見通しも維持した。コアCPIの前年比は、政府の経済対策や輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰していくことから、来年度半ばにかけてプラス幅を縮小していくと予想。その後は、需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率が高まるもとで再びプラス幅を緩やかに拡大していくとの見方を示した。
先行きは、資源高や海外経済の減速による下押し圧力を受けるものの、感染症や供給制約の影響が和らぐもとで回復していくとの見方を維持。ただ、海外の経済・物価やウクライナ情勢、資源価格、感染症の動向など「日本経済を巡る不確実性は極めて高い」と指摘。金融・為替市場の動向が経済・物価に与える影響を十分注視する必要があるとした。
(和田崇彦、杉山健太郎編集:石田仁志)