【ワシントン時事】サウジアラビアとイランが中国の仲介で外交関係修復に乗り出したことは、中東における米国の影響力低下を示した形で、バイデン米政権にとっては大きな痛手だ。中東地域を舞台に米中の神経戦は激しさを増しており、バイデン政権は政策の修正を迫られる可能性もある。
対立陣営に奇妙な唱和 中東各国、歓迎と評価―サウジ・イラン関係修復
「米国が中東から手を引いているという考えに断固反対する」。米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は10日、オンラインでの記者会見で、米国が中東地域への関与を低下させているのではないかという質問に対し強く否定した。
バイデン大統領は昨年7月、サウジを訪問し、人権問題を巡り関係が冷え込んでいた実力者ムハンマド皇太子と会談。バイデン氏は訪問時「中国やロシア、イランが埋めてしまう空白を残したまま、立ち去ることはしない」と強調し、中東への関与を続ける姿勢を鮮明にしていた。
米国は2001年9月の米同時テロに端を発したアフガニスタン、イラクとの戦争から手を引き、中東への米軍の関与を縮小。特に21年8月のアフガンからの米軍撤収は中東における存在感の低下を印象付けた。
だが、ロシアのウクライナ侵攻に伴うガソリン価格高騰に慌てたバイデン政権はサウジに増産を働き掛けた。中東への関与強化を打ち出したものの、サウジは減産を主導。米国が関係見直しに言及すると、互いの不信感は一層深まった。
トランプ前政権が離脱したイラン核合意の再建交渉が進展を見せない中、ウクライナ侵攻への対応や対中競争に追われるバイデン政権にとって中東の優先順位は低下した。カービー氏はサウジとイランの協議について「サウジから報告を受けていた」と説明しつつも、「米国は直接関与していなかった」と述べ、米国が蚊帳の外だったことを認めた。
バイデン政権は、米国に優位な「戦略的環境」を形成し、中国に対抗していく戦略を打ち出している。だが、サウジとイランの関係修復を中国が仲介したことは米国の思惑とは逆行する動きだ。