[ワシントン/東京 28日 ロイター] – 日米両政府は28日、電気自動車(EV)用電池に使う重要鉱物について貿易協定を結ぶ方針を明らかにした。電池のサプライチェーン(供給網)を互いに強化し、特定国への依存度を下げる。日本の自動車メーカーは、米国の新たなEV税控除の適用を受けられるようになる。

米政権高官によると、協定はEV電池に使う重要鉱物について、両国が相互の輸出を制限することを禁じる内容。リチウム、ニッケル、コバルト、グラファイト(黒鉛)、マンガンが含まれる。日米がこの分野で外国の「非市場的な政策や慣行」に対抗し、自国の重要鉱物サプライチェーンに対する外国からの投資を点検することを定めた。

西村康稔経産相は同日の会見で、「生産に不可欠な重要な鉱物を確保することが喫緊の課題」とし、持続可能で公平なサプライチェーンの確保に向けた協力の強化を通じて、日米や同志国との連携による強靭なサプライチェーン構築を目指すと述べた。

一方、米通商代表部(USTR)のタイ代表は「日本は米国の最重視する貿易相手国の1つで、同協定で両国関係を深化できる」との声明を出した。

日米はこのあとワシントンで協定に署名する。日本はインフレ抑制法上、米国との自由貿易協定(FTA)締結国になる見通し。コバルトを塗布した正極材など、日本で採取・加工した材料が含まれる電池を使ったEVは、米のEV税制優遇措置の要件を満たすことになる。

バイデン政権は昨年成立したインフレ抑制法にEV1台当たり最大7500ドルの税控除を盛り込んだが、鉱物に的を絞った貿易協定を通じて適用対象を広げたいと考えている。

税控除は、EVや電池が北米で最終的に組み立てられ、重要鉱物の40%以上について米国内かFTA締結国で採取・加工されることなどを条件に適用される。

米財務省は週内に調達先の要件を明確化する見込み。USTRは重要鉱物の協定に関し交渉権限を有していることから、議会の承認は求めない考えだという。

両国は2年ごとに重要鉱物の協定を見直す。