[29日 ロイター] – 米実業家イーロン・マスク氏や人工知能(AI)専門家、業界幹部らは公開書簡で、AIシステムの開発を6カ月間停止するよう呼びかけた。社会にリスクをもたらす可能性があるとして、まずは安全性に関する共通規範を確立する必要があると訴えた。
オープンAIが開発したAI対話ソフト「チャットGPT」の最新版言語モデル「GPT─4」に言及し、これを上回るシステムを開発停止の対象にすべきとした。
公開書簡は非営利団体「フューチャー・オブ・ライフ・インスティチュート(FLI)」が発表。マスク氏や米アルファベット傘下ディープマインドの研究者、英スタビリティーAIのエマド・モスタク最高経営責任者(CEO)、AIの大家であるヨシュア・ベンジオ氏やスチュワート・ラッセル氏など1000人以上が署名している。
独立した有識者が先端AI開発の安全性に関する共通規範を策定、実行、検証するまでAIの開発を停止するよう呼びかけた。
「強力なAIシステムは、好ましい効果があり、そのリスクが管理可能であると確信できる場合にのみ開発されるべき」とした。
書簡は人間と競争するAIシステムが経済的・政治的な混乱という形で社会と文明にもたらし得るリスクを詳述し、開発者に対し、ガバナンス(統治)担当の当局や規制当局と協力するよう促した。
FLIの広報担当によると、オープンAIのサム・アルトマンCEOは書簡に署名していない。
マスク氏はオープンAIの共同創業者の1人で、同氏率いる電気自動車(EV)大手テスラは自動操縦システムにAIを使用している。
コーネル大学のデジタル・情報法教授、ジェームズ・グリメルマン氏は「テスラが自動運転車の欠陥AIに対する説明責任を巡り、どれほど激しく戦ってきたかを考えると、マスク氏が署名するのは非常に偽善的だ」と指摘。
「(開発の)一時停止は良いアイデアだが、書簡はあいまいで、規制の問題を真剣に受け止めていない」としている。
オープンAIのサム・アルトマンCEOやアルファベットのスンダー・ピチャイCEO、マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは書簡に署名していない。
オープンAIとアルファベットは現時点で、書簡に関するコメント要請に応じていない。マイクロソフトはコメントを控えた。