- 利上げもう少し必要とメスター総裁、UBSは何年も前から買収準備
- クレディS上級幹部ボーナスなし、米国人の欧州化、利上げ近く終了
5日の米国では景気の先行きを改めて不安視させる指標が相次ぎました。3月のISM非製造業総合景況指数は前月から低下し、市場予想から大きく下振れました。米民間雇用者数は市場予想を下回る伸びにとどまり、賃金の上昇率も鈍っています。米国債市場で10年債利回りは昨年9月中旬以来の水準に下げ、株式市場ではS&P500種株価指数が続落しました。リセッション(景気後退)とインフレのはざまで難しい政策のかじ取りを迫られている米金融当局からは、慎重な情報発信が続きそうです。以下は一日を始めるにあたって押さえておきたい5本のニュース。
もう少し必要
クリーブランド連銀のメスタ-総裁は、インフレ率を目標に戻すには政策金利は「今の水準からもう少し高いところへ引き上げる必要があるだろう」と述べ、「そしてしばらくはその水準で維持し、インフレが2%に向かって持続的な低下軌道に乗るのを確認したい」とブルームバーグテレビジョンとのインタビューで語った。「われわれはもちろんインフレに重点を置き、いずれは確実に2%に落ち着かせたいと考えている」と述べた同総裁。年末までに重要物価指数が3.75%に下がるとみる一方、目標水準に低下するのは25年以降になるとの見通しを示した。
トップシークレット
UBSグループは銀行業界で最大規模となる買収の合意をわずか数日でまとめた。しかし、そのための下準備は何年も前から行っていた。コルム・ケレハー会長は昨年4月に就任した際、前任のアクセル・ウェーバー氏が少なくとも2020年から行っていた国内同業クレディ・スイス・グループ買収の実現可能性調査を引き継いだ。事情に詳しい関係者によると、クレディ・スイスの顧客が数百億ドル規模の資産を同行から引き揚げる中、ケレハー氏は今年に入り古巣のモルガン・スタンレーからアドバイザーを集め緊急計画を練り始めた。このプロジェクトはトップシークレットで、モルガン・スタンレーでも知っている者はほとんどいなかったと関係者が述べた。
ボーナスなし
クレディ・スイスの上級幹部はまだ支払われていないボーナスが取り消し、もしくは最大50%カットされる。スイス政府が5日発表した。政府は先月、このボーナスを「一時的に凍結」したが、今回は行内の役職で上位3層を対象に正式に決定した。22年末までに付与された変動報酬の未払い分について、最高幹部層は全額を取り消し、そのすぐ下の層は50%、さらにその下の層は25%をそれぞれ削減される。今回の決定で影響を受けるクレディ・スイス従業員は1000人程度。合わせて5000万-6000万スイス・フラン(約72億3000万-86億7700万円)相当のボーナスが失われる。
米国人の欧州化
米国人は新型コロナ禍前ほど長く働かなくなっている。米労働統計局のキャサリン・エイブラハム元局長がメリーランド大学のリア・レンデル氏とまとめた論文によれば、平均的な就労時間はこの3年で1人当たり週半時間以上減少した。米国人は欧州の労働者のようにレジャーなどに費やす時間が増え、多くにとっては喜ばしい現象だ。しかしインフレと闘う連邦準備制度理事会(FRB)は必ずしもこれを歓迎しない。論文によれば、就労時間の減少は240万人分の雇用に相当し、FRB当局者にとっては、米国人の余暇は雇用市場の過熱圧力が強まる一因となっている。
利上げ近く終了
欧州中央銀行(ECB)の利上げが近く終わるとの見方を示す政策委員会メンバーが増えている。前回の政策会合ではメンバー間に緊張の高まりが見られたが、その後新たにコンセンサスが形成されつつあることを示唆している。利上げ局面の終了が近いとの考えを最初に示したのはビルロワドガロー・フランス銀行(中央銀行)総裁。同氏は3月末に「ECBは利上げサイクルの大半を完了したが、行き着くところまで恐らくまだ少しあるかもしれない」と発言した。これに続きギリシャやリトアニア、クロアチアの各中銀総裁が同様の見解を述べた。
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