▽情報BOX:米機密文書流出事件、現時点での情報整理<ロイター日本語版>2023年4月11日2:50 午後
[ワシントン 10日 ロイター] – 米国の国家安全保障に関係する省庁や司法省は、一連の機密文書流出が自国の安全保障や、同盟国およびウクライナなどとの関係に及ぼす影響について分析を進めている。4月10日、 米国の国家安全保障に関係する省庁や司法省は、一連の機密文書流出が自国の安全保障や、同盟国およびウクライナなどとの関係に及ぼす影響について分析を進めている。写真手前は米国防総省。2020年10月撮影(2023年 ロイター/Carlos Barria)
米国において近年で最も深刻とみられる今回の機密文書流出事件で現在判明していることと、なお不明な点を整理した。
◎文書は本物か
複数の米政府当局者の見立てでは、ほとんどの文書は本物だ。ただ一部は改変され、昨年2月以降のウクライナ側の犠牲者に関する米政府による見積もりが過大に、逆にロシア軍兵力の見積もりは過小になっているとみられる。
具体的にどの文書に偽情報がちりばめられたか、また、それがロシアによる情報工作の一部なのか、ロシア側がウクライナの戦争計画を読み違えることを狙った米国の作戦なのかは分からない。
◎どのような種類の文書か
「機密」もしくは「最高機密」に指定され、この中には2月と3月のウクライナにおける戦況を説明するスライドも含まれている。米国防総省は10日、流出した文書は同省高官に毎日提出している報告書類やその他の情報報告書類に似ているが、一部が不正確だとの見方を示した。
「NONFORN」と分類された文書があり、これは外国の情報機関には提供されない。例外的に「FVEY」と分類された文書は、英語圏5カ国の機密共有枠組み「ファイブ・アイズ」に米国とともに加盟している英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの情報機関は入手可能で、セキュリティー上問題ないと認められた数千人が閲覧する形になる。
ただ流出した全ての文書が「FVEY」でないことから、流出させたのは米国人の可能性がある、と米政府当局者はみている。
一部の書類は、「FISA」にも分類されていた。これは、インターネット通信の監視について定めた「外国情報監視法(FISA)」によって収集された情報を指す。
◎流出の経緯
米政府はまだ、どのような経緯で文書が流出しネットに掲載されたのかを把握できていない。
ソーシャルメディアのサイトに投稿されたのは、折り目が付いた文書の写真だった。このことは、これらの文書が保存されていた場所から持ち出されて撮影される前に、隠しやすいように折りたたまれた可能性を示唆している。
これらの文書は、ゲーム愛好者が利用するメッセージングアプリ「ディスコード」や、匿名オンライン掲示板「4チャン」、通信アプリ「テレグラム」、ツイッターといったソーシャルメディアに投稿されていた。
にわかに注目の的となったのはここ数日のことだが、調査報道サイトのベリングキャットによると、少なくとも文書の一部は3月か、早ければ1月からソーシャルメディア上に存在していたもようだ。
ベリングキャットが追跡調査をしたところでは、この流出文書に関して最も早い時期に話題にしたのは現在使われていないディスコードのあるサーバー上の投稿で、3人の元ユーザーが大量の文書がシェアされていると言及していた。
◎文書の内容
米国の政策担当者にとって利害関係があるさまざまな問題が含まれている。
各国・地域ごとの概要は次の通り。
─ウクライナ:ウクライナ軍の航空攻撃や防空面の脆弱性、軍の一部戦闘単位の規模に関する詳細。
─ワグネル:ロシア民間軍事会社ワグネルの諸外国への浸透状況。例えばトルコとの「接触」やハイチ政府高官とのつながり、マリにおけるプレゼンスの増大など。
─中東:イランの核開発活動や、アラブ首長国連邦(UAE)のロシアとの一部兵器保守管理を巡る協議についての最新情報。
─中国:ウクライナがロシア領を攻撃した場合に予想される中国の反応、英国のインド太平洋地域での諸計画の詳細。
─北朝鮮:ミサイル発射実験の詳細と、2月の軍事パレードについて大陸間弾道ミサイルの脅威を米国側に過大に見せつけた可能性があるとの評価。
─南米:ブラジル政府高官が4月にウクライナ和平仲介を議論するため予定しているモスクワ訪問に関する情報。
─アフリカ:フランスがアフリカ西部と中部で治安確保に苦戦するだろうとした分析結果。
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