[東京 14日 ロイター] – 日産自動車は連合(アライアンス)を組む仏自動車大手ルノーと新たに築く限定的な協業で条件など詰めの作業を進める一方、電気自動車(EV)やソフトウエアなどの主要分野で日産独自の成長計画を策定していることが分かった。事情に詳しい関係者7人が明らかにした。 

議論に関わっている関係者2人によると、日産は、ルノーが関与しないクラウドベースのさまざまなサービスに日産車を接続するコネクテッド技術について、自動車業界以外のソフトウエア分野のパートナーを見つけようとしている。両社はインドや中南米でEVなどの協業を検討しているが、日産は米国・アジアでのEVやハイブリッド車(HV)の成長戦略を独自に推進する計画を策定中だ。

例えば、米マイクロソフトのような技術・ソフトウエア大手と日産が契約すれば「より賢く、よりつながる」車をつくることができ、日産のソフトウエア開発における相対的な弱点に対処できるだろう、と関係者の1人は話している。

マイクロソフト社にコメントを求めたが、返答はすぐには得られなかった。

協議中のため匿名を条件に語った別の関係者2人によれば、日産はルノーと部材の共同調達は引き続き有効と考えているが、ルノーが進めているEVの新会社に技術者を派遣する計画はないという。

日産が直面する多くの大きな課題を、ルノーとの23年に上る歴史ある提携だけで解決することは限界にきており、日産で議論されている戦略は日産社内のこうした考えを反映している、と同関係者2人は話す。かつてルノーと日産の両社を率い、日産幹部の反対を押し切って統合を進めようとしたカルロス・ゴーン氏のビジョンと逆行するものだ。

日産の新たな独自戦略は長期的な事業計画に盛り込まれ、業績向上、電動化、自動運転、その他の「コネクテッドカー(インターネットにつながる車)」などの機能を可能にするソフトウエアに重点を置いており、年内に発表される可能性があると関係者1人は話す。

また、別の関係者1人は「ルノーが日産から得るものはあっても、その逆はなかなか難しい」との認識を示し、今後は「ルノーという『制約』がなくなり、日産が自由に動けるようになる」と述べた。

ロイターの取材に対し、日産とルノーは共同で声明を出し、両社の競争力を高めるための「最終契約締結に向けた作業を進めている」とコメント。すでに発表されているインドと中南米での提携プロジェクトについては今後詳細に説明する予定で、「新体制により、より迅速で柔軟な意思決定が可能になる」と述べた。

<協議は継続中>

ルノー、日産、三菱自動車の3社連合の会議体「AOB(アライアンス・オペレーティング・ボード)」の定例会合が今週、横浜市の日産本社で行われた。3社はアライアンス再構築に向けた協議を続けている。

日産とルノーは数カ月にわたる交渉の末、1月30日に声明を出し、両社が対等な資本関係となることを発表。2月6日にはルノーによる日産への出資比率を43%から15%に引き下げ、両社が互いに15%の株式を保有することで正式合意した。また、ルノーが設立するEV新会社に日産が最大15%を出資すること、インド・中南米・欧州で新たな協業プロジェクトを推進することも公表した。

日産の最高幹部の中には、両社の出資比率を0%にして資本提携を解消することが最善と提案した者もいたという。達成不可能であることはわかっていたが、日産が独自に動く必要があるという点を強調するためだと、ある関係者は話している。

日産はルノーのEV新会社に対し、技術関連特許は提供するが、運営への関与は制限する、と関係者の1人は話す。EV新会社が欧州市場向けの技術を開発し、日産が興味を持った場合、日産は技術の購入を検討するという。

日産とルノーはロイターに対する声明で、日産がEV新会社に出資する目的は、欧州事業を強化して「新規事業を加速させる」ため、と述べた。

ルノーとの協議において、日産は自社技術の保護を推し進め、提携の継続によるマイナス面を極力抑えてきた、と協議に関わったある関係者は述べた。日産が保護しようとした技術には、全固体電池の製造に関する研究、独自のHV技術「e―POWER」があったという。

また別の関係者2人によると、日産は、ルノーが中国自動車大手の吉利汽車、サウジアラムコと設立したガソリンエンジンとHVシステムを供給する合弁会社に日産独自のHV技術を提供する計画はないという。

白水徳彦、白木真紀 取材協力:Gilles Guillaume, Daniel Leussink