[東京 24日 ロイター] – 日銀の植田和男総裁は24日、衆院・決算行政監視委員会第1分科会で、基調的な物価見通しが改善しイールドカーブ・コントロール(YCC)の正常化が可能になるためには、物価見通しが2%前後となるだけでなく、見通し実現の確度が必要との認識を示した。
階猛委員(立憲民主党・無所属)の質問に答えた。
日銀は今週27日からの金融政策決定会合で「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)を議論する。植田総裁は、輸入物価高の価格転嫁は「そろそろピークを迎える」と述べ、現在は物価上昇率の基調が2%を下回っているため金融緩和を継続する方針を改めて示した。
その上で、YCC正常化の条件として「半年先や1年先・1年半先の日銀の物価見通しが2%前後になり、見通しの確度が高まっていると認識できるとき」だと述べ、見通し実現の「確からしさ」が必要との認識を示した。
黒田東彦前総裁は在任中、物価2%目標と整合的な名目賃金上昇率として、物価2%に労働生産性の伸び1%を加味した3%程度としていた。しかし、植田総裁は労働生産性の上昇率は「前もってこの程度と申し上げるのはなかなか難しい」とし、望ましい名目賃上げ率の具体的言及を避けた。
<長期金利のコントロール、修正でも「ギリギリまで発表できず」>
植田総裁は、長期金利のコントロールについて「中途半端な情報発信をすると市場に大きなかく乱が発生する」と述べ、もし金融調節方針を修正する場合でも「ギリギリまでなかなか発表できない」との見方を示した。その上で、金融緩和からの出口戦略の具体的な道筋や日銀財務への影響について「差し支えないところに関しては、(情報発信)できるかどうか検討してみたい」と述べた。
一方、足元の不動産価格について「今のところ明確な割高感は観測されてはいない」との認識を示した。
不動産経済研究所によると、3月の首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の新築マンション1戸あたりの平均発売価格は1億4360万円となり、大口案件の影響があるものの、単月で初めて1億円を突破した。
(和田崇彦編集:青山敦子、田中志保)