[16日 ロイター] – 遊び心や冗談から生まれ、非常に投機的で変動が大きい暗号資産(仮想通貨)「ミームコイン」が再び注目を集めている。最も新しい「pepe(ペペ)」は登場後、すぐに高騰し、かつてのドージコインを巡る市場の熱狂を思い起こさせたからだ。
ペペは、人気を集めるカエルのキャラクター「ペペザフロッグ」をモチーフにしたトークン。4月16日にデビューすると、それから17日間で何と7000%近くも価格が跳ね上がり、5月5日までに時価総額が18億ドルに膨らんだことが、コインゲッコーのデータで確認できる。
これを契機にミームコイン全般への投資熱も復活し、デューン・アナリティクスのデータによると、5月第1週の合計売買高は26億ドルに達した。
コインデスク・インディシーズの指数調査責任者、トッド・グロス氏は「ミームコインは時折需要が爆発する。過去を振り返ると、それは市場がやや不安定ないし方向感に欠ける局面で発生してきた」と語る。
実際、足元のミームコインに対する活発な買いは、最大の仮想通貨・ビットコインの今年に入ってからの値上がりが止まった時期と重なる。ビットコインは4月半ば以降で6%下落している。
ペペは5月5日のピークから60%下落したが、それでもなお時価総額は7億4000万ドルを維持。これはミームコインとして、ドージコインとシバイヌに続く3番目の大きさだ。
ドージコインとシバイヌは、いずれも柴犬をモチーフとして登場したコインで、時価総額はそれぞれ100億ドル強と50億ドル。
ミームコインが初めてブームになったのは2021年で、オンライン掲示板レディットの取引フォーラム「ウォールストリートベッツ」における個人投資家間の情報交換がきっかけだった。
ミームコインは投機目的の取引以外に使われることはなく、ビットコインやイーサなど、推進派が決済手段や価値保存手段としての可能性を秘めていると期待する「主流」の仮想通貨とは明らかに異なる。
市場参加者からは、ミームコインで大損する可能性に警鐘も鳴らされている。マーケットベクター・インデックスのマーチン・ラインウェバー氏は「人間は投機が大好きだ。(しかし)私は依然としてミームコインを買うことには非常に慎重になっている。これは最も純粋なギャンブルだ」と指摘した。
<実用性なし>
ペペのウェブサイトには「正式なチームやロードマップを持たない」人のために創設され、「娯楽目的限定で実用性は全くない」と記されている。
仮想通貨データを扱うメサリの話では、ペペはブロックチェーンとして2番目の規模を持つイーサリアム上で急成長を続けたミームコインだ。メサリのアナリスト、チェース・デベンス氏は、バイナンスを含めた主要な中央集権型交換所(CEX)へ早期上場したことで、人気がさらに高まったと説明した。
バイナンスはウェブサイトで、ペペには「実用性」もしくは「価値を支えるメカニズム」は存在しないと明記するとともに、ペペのボラティリティーについて警告し、バイナンスとして取引で生じた損失には責任が持てないとくぎを刺している。
デベンス氏によると、ペペはCEX上場でデリバティブ取引の道も開かれた一方、レバレッジポジションの規模やボラティリティーのためにイーサリアムでの取引手数料は押し上げられているという。
いずれにしてもミームコインの命運は、他の仮想通貨と同じく個人投資家の動きに根ざし、ネット空間の雰囲気を原動力とする傾向が強い。
ドージコインとシバイヌも、しばしば荒っぽい値動きを経験してきた。
2013年に立ち上げられたドージコインは、1万2000%余り上昇して21年5月に最高値を記録した後、90%近くも値下がりした。シバイヌも21年10月の最高値から9割目減りしている。
コインゲッコーのデータに基づくと、新顔のペペの保有者は10万人余りだ。
仮想通貨流動性プロバイダー、B2C2のトレーディング責任者、エドモンド・ゴー氏は今回のミームコイン高騰について「興味をそそられる現象だ。待機したままの投資資金がなお存在することを物語っている」と述べた。
(Lisa Pauline Mattackal記者、Medha Singh記者)