[北京 15日 ロイター] – 中国の工場でストライキが頻発し、7年ぶりの水準に達している。世界的な需要低迷のあおりで、輸出企業が賃金引き下げや工場の閉鎖を余儀なくされているためだ。
欧米では景気悪化の懸念から企業が中国製品の注文を減らしており、中国の輸出および工業生産は5月に大きく落ち込んだ。
中国の労働研究者らによると、工場を閉鎖したり、給与や解雇した労働者への退職金の支払いに苦慮したりする工場が出てきている。この結果、労働紛争が急増し、消費者と企業の信頼感を損なっている。
折しも中国は新型コロナウイルスを徹底的に封じ込める「ゼロコロナ政策」を解除し、景気が回復し始めた重要な時期にある。
香港を拠点に中国全土の労働問題を扱う非政府組織「中国労工通報(CLB)」の研究員、アイダン・チャウ氏は「製造業受注の落ち込みと工場閉鎖は続くだろう。幹部らは、単純に労働者を減らすことでコストを削減したがっている」と語った。
CLBの記録では、1―5月に中国全土の工場で実施されたストは140回と、この時期としては2016年の313回以来の高水準となった。
CLBは主にソーシャルメディアで報告されたストに基づいて集計を行っており、一部は労働組合や工場に直接連絡を取って検証している。
ストが集中するのは工場地帯の広東省と長江デルタで、衣類、靴、プリント基板などの輸出企業が含まれる。
5月24日に中国版TikTok(ティックトック)の「抖音(ドウイン)」に投稿された動画は、数十人の女性労働者が工場施設から立ち去る場面を映し「ここの経営者は法執行当局に賄賂をつかませ、労働者の給与をごまかしている」とのキャプションを付けている。
同じ投稿者による別の動画では、工場長が労働者への補償を拒否する文書を読み上げ、労働者は独立機関による介入を求めている。
5月26日に公表された別の動画では、上海のケーブル工場の屋上に従業員数人が登り、「給料が未払いだ」と書かれた横断幕を掲げている。
ロイターはこうした動画や写真の場所を検証したが、抗議行動が行われた日時については確認できなかった。
<社会不安の種>
世界の製造品の3分の1を生産する中国の工場は、複雑なサプライチェーン(供給網)を形成。このため中国経済は内需よりも輸出への依存度がずっと大きく、巨額の貿易黒字を生み出している。
製造業の企業は地方からの出稼ぎ労働者を何億人も雇っている。労働活動家によると、多くは臨時や非正規の雇用だ。
このため工場がコスト削減をしたい時には、労働者は無給残業や急な賃下げ、補償なしの解雇といった目に遭いやすい。
工場ストは中国共産党にとって、政治的な問題に発展しかねないと言うアナリストもいる。
英エコノミスト誌調査部門のシニア中国エコノミスト、シュー・ティアンチェン氏は「企業は賃下げや解雇を通じ、生産能力の余剰という現実に適応しつつある」と指摘。人員解雇や賃下げは「経済成長を阻むだけでなく、不安定化の種になりかねない」と述べた。
(Laurie Chen記者)