【ワシントン時事】日米欧などが、ウクライナ侵攻を理由にロシア産石油の価格に上限を設ける経済制裁を導入してから約半年が経過した。米財務省によると、1~5月のロシアの石油収入は、前年同期比5割近く減少。ロシア産は、国際市場価格よりも約25%割安で取引されている。米政府は、ロシア財政への打撃は大きく「成功している」(アデエモ財務副長官)と評価している。
4月のロシア石油輸出量、侵攻後最高 アジア向けか、収入は減―IEA
先進7カ国(G7)と欧州連合(EU)、オーストラリアなどは昨年12月、ロシア産原油の取引価格の上限を1バレル=60ドルに設定。今年2月には、石油製品にも同様の措置をとった。ロシア産石油の流通を一定程度維持し、供給安定を図る一方で、取引価格を抑え、戦費調達に打撃を与える狙いだ。
国際エネルギー機関(IEA)などによると、ロシアは、ウクライナへの侵攻を始めた昨年2月以降も石油輸出量を維持。原油高を背景に、収入は一時、侵攻前を3割超上回る月221億ドルに達した。需要が拡大する中国とインド向けが多くを占める。しかし価格上限導入後は、北朝鮮向けも再開して輸出量を増やしたものの、収入は急減した。
ロイター通信などによると、ロシアのプーチン大統領は2月、石油価格が下落しても、石油会社から徴収する税額は一定水準より下がらないように課税方式を変更する法律に署名。収入確保に躍起になっている。しかし、アデエモ氏は、実質的な増税により「採掘や生産への投資が減り、長期的には生産能力が低下する」と分析し、ロシアへの打撃は大きくなるとみる。
一方で、制裁逃れが増えているとの見方もある。IEAの調べでは、今年に入り、仕向け先不明の輸出が拡大。米メディアは、ロシア周辺で、船籍不明の古いタンカーが増えていると報じた。米政府は、海運会社など民間企業や他国に協力を呼び掛け、制裁回避への警戒を強めている。