[東京 21日 ロイター] – トヨタ自動車は21日、2029年の打ち上げを目指す月面探査車の開発で三菱重工業と協力していると明らかにした。各社が取り組む月面探査車の技術や互いの知見を持ち寄り、日本の宇宙開発を推進する。トヨタはまた、月面探査車の新技術として「再生型燃料電池」やオフロードでの自動運転などを開発、29年よりも前に地球上での車両に活用したい考え。

トヨタは19年から宇宙航空開発機構(JAXA)と宇宙探査に関する共同研究を始め、有人の月面探査車「ルナクルーザー」を開発中。与圧室内で生活できるタイヤ付きの宇宙船で、宇宙飛行士2人が乗り込み、4畳半ほどの広さの車内で1カ月間生活しながら月面探査することを目指している。米航空宇宙局(NASA)が主導する月面探査計画「アルテミス」で同車両の提供が期待されている。

三菱重はこれまで国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」の建設、宇宙ステーションの補給機やロケットの開発を手掛け、宇宙環境での耐久・滞在技術などを持つ。JAXAとインドが24年度以降に進める月極域探査計画「LUPEX」で投入する無人の月面探査機も開発している。

トヨタの山下健・月面探査車開発プロジェクト長は同日、開発状況説明会で三菱重と昨年、開発協力することで合意したと説明。「三菱重はこれまで多くの宇宙プロジェクトを成功させてきた実績がある」と指摘、「さまざまな助言をもらう。LUPEXでの開発成果はルナクルーザーにも生かされる」と述べた。三菱重はこれまでの技術を生かしトヨタの開発を支援し、LUPEXの月面探査機が月面で得たデータをルナクルーザーにも活用することも検討する。

トヨタはまた、過酷な月面環境でも使える技術を開発する。再生型燃料電池は、日照時に太陽光と水で水素と酸素を製造し、夜間は水素と酸素を使った燃料電池で発電する仕組みで、月面にあるとされる水を使い「地産地消」でエネルギーを賄うことを目指す。地球では離島や被災地での活用を見込む。オフロードでの自動運転は災害状況確認や危険地域での物資輸送に生かせるとみている。

山下氏は、月面探査車開発で培った技術を「29年の月面着陸を待たず、しっかりと地上でしっかり還元していきたい」と語った。

三菱重の仲嶋淳・宇宙事業部プロジェクトマネージャーは「月面に拠点ができて人々が往来できれば、月の経済圏が生まれる」と期待。日本が優位性を見い出し、地上への波及も見込まれる分野など「得意なものを生かし、事業として発展させたい」と語った。