【ワシントン時事】ガーランド米司法長官は11日、バイデン大統領の次男ハンター氏(53)の捜査を政権から独立して行う特別検察官にワイス連邦検事を任命すると発表した。ワイス氏はこれまでもハンター氏の捜査に携わってきたが、より自由な立場になる。来年の大統領選で再選を目指すバイデン氏にとって、政治的打撃となりそうだ。
ワイス氏が任命を申し出た。ガーランド氏は「彼の要請と本件の特殊な事情に鑑み、特別検察官の任命は公益にかなうと判断した」と述べた。特別検察官は大統領や政府高官が不正に関わった疑いがある場合、政権の圧力を気にせずに捜査を指揮できる。
トランプ前大統領が2020年大統領選の結果を覆そうとした事件や、ホワイトハウスから機密文書を持ち出した事件では、スミス特別検察官がトランプ氏を起訴。バイデン氏も副大統領時代の機密文書を保持した疑いで、ハー特別検察官の捜査を受けている。
ワイス氏は6月、ハンター氏の税滞納容疑などに関し、有罪を認める代わりに実刑を求めない司法取引に合意。しかしワイス氏側が法廷で、外国からのロビー活動に絡み、将来のハンター氏訴追の可能性に触れたことがきっかけとなり、取引は土壇場で不成立となった。
ハンター氏はウクライナや中国などの企業との関係を巡り捜査対象となってきた。司法取引の成立で次男の問題の幕引きを期待したバイデン氏としては、誤算になった形だ。バイデン氏は11日、ホワイトハウスで記者団から質問を浴びたが、無言で立ち去った。
野党・共和党は、検察がトランプ氏を数々の罪で起訴した一方、現大統領の息子とは当初取引したことで「身内に甘い」と批判を強めていた。ハンター氏の不正な税務処理については、内国歳入庁(IRS)の内部告発者が先月、下院で「捜査のあらゆる場面で優遇されていた」などと証言。検察の捜査姿勢への疑念も持ち上がっていた。
共和党はワイス氏の人選をいぶかしんでいる。トランプ前大統領は声明で、「4年にわたる捜査にもかかわらず適切な罪状で(ハンター氏を)訴追できなかった」と指摘。マッカーシー下院議長は「甘い司法取引を行った人物を信用できるだろうか」とツイートした。