ロシアの反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏が2020年8月、軍用神経剤ノビチョク系とされる物質による毒殺未遂に遭ってから20日で3年を迎えた。ナワリヌイ氏はプーチン政権の弾圧で収監され、今月4日、新たに禁錮19年を宣告された。リベラル派の記者や活動家はウクライナ侵攻の中、安全とみられる国外に逃れたが、謎の中毒症状に陥る例が後を絶たない。
ナワリヌイ氏、事実上「終身刑」に 弾圧強化、運動立て直し課題―ロシア
「プーチンは殺人者だ」。ナワリヌイ氏の在外陣営は、節目の20日に全世界でこのスローガンを発信するよう呼び掛けた。参加者は各国語で動画を作り、SNSで拡散。弾圧により「ロシアでデモを行えない人々のため」(陣営)に抗議する試みで、西側諸国からプーチン政権への外圧を強める狙いがある。
毒殺未遂はナワリヌイ氏が最後というわけではない。「外国なら安全」と必ずしも言えないような不審な事件も繰り返し起きている。ロシアの独立系メディア「インサイダー」によると、戦争が続く昨年秋以降だけで、在外の女性3人(記者2人と活動家1人)が毒物を盛られたとみられる症状を経験した。
うち記者2人は、ナワリヌイ氏が20年8~9月に入院したドイツ・ベルリンのシャリテー大学病院を受診。中毒症状から時間が経過し毒物の特定に至らなかったが、独当局に被害を届け出た。
標的となるリベラル派は、国外で暗躍するロシア当局の関与を疑っている。18年には英南部ソールズベリーで、元ロシア情報機関員がノビチョクで暗殺されかかる事件が発生。さらに前の06年、プーチン政権を批判した元ロシア情報機関員が、ロンドンで放射性物質ポロニウムを盛られて死亡した。いずれの事件も英政府は、ロシアが関与したと断定している。